以前勤めていた会社では、社員旅行なるイベントがあった。ある展示会の売り上げ目標を達成すると、旅行に行けると言うものだ。

初めての社員旅行

入社して最初の社員旅行は、断る勇気が無かった為、渋々参加した。費用は全額会社持ちだった。…全額会社持ちでも、私は行きたく無い。

一泊二日で、ある程度の近県へバスで行く。正社員は、ショッピングモールに入っている店舗勤務の人以外は、大体参加していた。（小売業の会社だった）レクリエーションの時間が結構あり、みんなで何かをする＝団結を高める、みたいな内容だった。夜は旅館の大広間で宴会。…感想は、ただただ、苦痛だった。やっぱり全てがキツかった。

何がと言うと、

集団行動。仕事以外の時間も会社の人間に気を遣わないといけないので神経すり減る。

バスでの移動。3～4時間乗って居ないといけない。トイレ近い私にとって、好きな時にトイレに行けないのはキツい。

6～7人で同じ部屋。メンバーはある程度気を遣ってくれたみたいだ。けど、会社の人と同じ部屋なんて息が詰まる。始終リラックス出来ず、中々寝付けなかった。まず、親しくない人達と泊まりが無理。

夜の宴会。少食の私は、豪華な料理が食べきれない。品数が多くて美味しいが、申し訳ない気持ちになる。一部の人がカラオケを歌ったり、みんながビール片手に挨拶回りする雰囲気に「早く終わらないかな…」と耐えるしかなかった。

みんなで一緒にするレクリエーション。結構旅行日程に組み込まれていた。自由にさせてくれ。「一致団結」というのを強要されている様で嫌だった。

翌年のアンケート

そんな最初の社員旅行の次の年、社員旅行がありそうな時期が近づいてきた。

ある日、社員旅行についての全社アンケートが、社内イントラネットで流れて来た。ちなみに、アンケートは誰がどんな回答をしたかが、全社員に丸わかりになる。「社員旅行を開催した方が良いかどうか？開催したくない場合は、何か意見（代替案）はあるか？」と言うものだ。回答の選択肢は、賛成、反対、どちらでもないの3つだ。コメントも書き込める。

うーん、行きたくねぇな…でも社歴が浅いのに反対しづらいしな。でも、賛成にはしたくない。社員旅行好きだと思われたくない。結局ヘタレの私は、「どちらでもない」を選択。代替案として、「日帰りで出来るスポーツとかレクリエーション」と書いた。泊まりになるのがどうしても嫌だった。最大限譲歩して、日帰りで解放される方が幾分マシだ。

他の社員の回答は、上層部の人達に気を遣っているのか、和を大事にした結果なのか賛成が大多数を占めていた。「他の人と親睦を深めることが出来るから」のコメントが多かった。…ホントか？本心じゃない人も何割かいるだろうに。

…ある先輩のコメントに目が止まった。反対に回答だった。「私は反対です。ご褒美とは思えないし、宴会の雰囲気も苦手です。一致団結と言うのなら、展示会で売り上げ目標を達成した事でいいのでは？社員旅行に行けなかった人達には、旅行の代わりに何かあったのでしょうか。」…結構、言ってますね。角が立ってますね。

「先輩すげえぇぇ！！結構言ってるじゃん！！猛者じゃん！私が全部思っている事だよおぉ！！」…と心の中で叫んだ。そして、こんだけ言う人いたら、社員旅行行かなくてもいいのでは？もういいよね？と精神的に楽になった。同じ考えの仲間が増えたと勝手に思ってしまった。

その回答が出た途端、外国人社員などから、反対「社員旅行よりも、給料やボーナスに上乗せしてもらった方が嬉しい」と2件ほど回答が。…私も同意見だよ。どちらでもないと言った手前、意見変える勇気は無いけれど。

私はその後、社員旅行に行く事はなく数年で会社を辞めた。私が社員旅行に行かなくなって、所属部署の部長も理由をつけて行かなくなった（笑）勿論、反対のアンケートを書いた先輩もそれ以降社員旅行に行かなかった。

他の社員に「えっ、行かないの？何で？」と聞かれたが、「歯ぎしりが凄いんで」で通した。恐らく、社員旅行に行かない事を上層部はあまり良い感情を持っていないだろう。ずっと勤める未来が見えなかったから、別にどうでもよくなった。

社員旅行を楽しみにしている人もいるだろうし、社員旅行という行事自体を今は否定していない。ただ、断れない様な雰囲気（行かないと陰で文句言うとか）が嫌なだけだ。実際、あのアンケートが無ければどうなっていたか…。今は何かと理由をつけて断るが。