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『怪物』/わたしたちはこの世を

『怪物』を観た。
最初から最後までずっと目が離せなかった。エンドロールまで見届けてしばらく、映画のことで頭がいっぱいだった。彼らのゆく先を考えてしまって。

映画の感想を文章にしたためたことは未だかつてない。映画に込められたメッセージを深く理解できている気もしないし、私のような人間の話すことはあまりにも軽いだろうが、エンディングに対して考えたことを、ちょっとだけ吐き出してみようと思う。


以下、ネタバレ
絶対映画を観てから読んでくださいね!





大丈夫ですか?でははじめますよ


ラスト、車両の下を抜けて、ふたりが走っていく。
線路には草花が青々と生い茂っていて、先ほどまでの嵐とは打って変わって辺りはあかるく、かがやいている。
誰の声も届かないところに、ふたりは居る。

私は、このシーンを目の当たりにしてすぐに、ふたりがどうなったのか、ということを何もかも悟ってしまったような気になった。そんな、うそだろ、ちょっと待ってくれと

私は、ふたりに生きていてほしい。し、生きていると信じている。たとえこの世界に絶望してしまったとしても、必ず光はあると思うから。まだ始まったばかりの人生を、あんなに早くに終わりにしてほしくない。

でも、私と彼らの見る世界は違うんだよね。
それはもちろん、「世間一般の一人」に産まれた私とは、という意味でもあるけれど。それ以上に、
10代も終わりかけの私が見る世界と、小学5年生の彼らが見る世界とは全然違う。
ふたりがもし、高校生だったならば、もっと広い世界を見られていたはずだ。たくさんの障壁はあるだろうけれど、ふたりだけで街を抜け出して、生きて遠くへ行くことはきっとできる。
でも彼らは小学生で、どうしたって大人たちの手を離れられない。大人の言うことが彼らのすべてで、わけのわからない規則をきちんと守って生活するしかない。
みんなと違うと気づいたふたりが未来に絶望して、生まれ変わりを、ビッグランチを望んでしまっても仕方がないかもしれない。
ふたりよりずっと背が高くて、高度な知識をいっぱい身に付けた私たちに、どうしてふたりのかなしみが、絶望がわかるというんだろう。

わたしたちの創るこの世は、彼らのような子どもたちをちゃんと引き留められるか。
彼らが安心して戻ってこられるような場所になっているだろうか。
わたしたちは、怪物になることなく、そういう世を創れるだろうか。



ふたりのあまりに純粋で、羽のように軽い身体は、ずっと数多の鎖に繋がれていた。豪雨と暴風はそれらを根こそぎ吹っ飛ばして、ふたりには朝が訪れる。

ふたりは劇中でいちばんいい笑顔をしていた。

無責任にも、私は願ってしまう。笑い合うふたりのいる場所が、あちらでなくてこちらであることを。


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https://president.jp/articles/amp/71624?page=1
より引用

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