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ながめのやつ

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ちょっとだけ長めの読みもの
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掌編小説「そのバラは散らない」(1500字)

22時を過ぎ、未だ終わりの見えない作業。 冬はとうに終えたというのに、だしっぱなしのコタツ…

「船出」(3500字)

①とある小学校、校庭 子どもたちが数人遊んでいる。 少年が蹴ったサッカーボールが校庭の…

シナリオ「雨粒」(3200字)

①とある更生施設、雑居房(朝) 狭い畳の部屋、格子窓。二つの布団。 内一つ、静かに目を覚…

シナリオ「雪は黄昏」(2700字)

①レンタカー店、店内(夜) 若いカップルが楽しく会話している。 木戸有吾46が返却手続きを…

掌編小説「汗まみれのトド」(1200字)

「次はトド先輩、やりませんか?」 その声を聞き、柔道部三年、東堂(とうどう)が無言で新入…

掌編小説「座して燃ゆ 下」(1000字)

葉山しずかは部屋で日課の読書に勤しんでいた。 読書といっても、8歳になる息子、アキラに買…

掌編小説「座して燃ゆ 上」(1000字)

病院の一室。夏の盛りを前にして、蝉の声が院内にもよく届く。 ベッドには老人が力なく横たわっている。 「失礼します、千月(せんげつ)師匠、見舞いに来ました。具合はどうですか」 千月と呼ばれた老人は落語家であった。 菊乃家(きくのや)千月は、江戸の落語家には珍しい力強さを全面に押し出した芸風で名を知られた。 しかし今、病室で四肢を投げ出し横たわる彼に、かつての姿を重ねるとこは難しい。 誰よりも彼をよく知る、私でさえも。 「小千(こせん)か、見舞いにはもう来ないでいいっ

掌編小説「don't mind」(400字)

ラテン系アメリカ人の明るい母と、日本人の真面目な父。二人が出会ったのはアメリカらしいが、…

掌編小説「大輪狭咲」(2000字)

「じゃあ、さっそくだけど、今週末からよろしく!力仕事が中心になると思うからさ、動きやすい…

掌編小説「バーチャル・スクール」(500字)

僕には夢がある。 この春中学生になったばかりの僕だけど、将来は海外で活躍したいと思ってい…

掌編小説「若鳥よ」(700字)

「おい、仲野。手ェ止まっとるぞ、もう全部終わったんか」 上の空で教室に座っていただけの仲…

掌編小説「弱者の論理」(900字)

我々は弱者なのだから、これくらいは許されて然るべきなのだ。 この村には二つの種族が共存し…

掌編小説「非ジンドー兵器」(700字)

『ヤツらは狂っている』 『もうこの兵器を使うしかない』 俺達のメリ村と、ヤツらのジパ村は…

掌編小説「順路・水族館」(500字)

『おーい、こっちに来てみろ』 にいちゃんがぼくを呼ぶ。 『ほら、あんな生き物、見たことないだろ?』 「すげー、でっかい」 小さなぼくの何倍くらいあるんだろうか。見たこともない大きな生き物が、分厚いガラスの向こう、正面からぼくを見ている。 見渡してみると、その他にも色んな生き物がいる。 あそこにいるのは全身真っ赤だ。うーんシュミがわるい。 向こうにはピッタリくっついてるのもいるぞ、カップルなのかな。 「ねえ、にいちゃん」 『なんだ?』 「この生き物、みんな同