#リアリティ番組とネットリテラシー

 男女共同生活に密着するリアリティー番組「テラスハウス」に出演していた22歳のプロレスラー、木村花が亡くなった。番組内での言動を巡り、SNS上で人格を貶めるような誹謗中傷を受けて自殺したとみられている。

リアリティー番組の性質

 筋書き無しで生の人間模様を見せるのがリアリティー番組である。リアリティー番組は、予測できない展開が視聴者を引き付け、世界でも人気のコンテンツである。

 放送時間30分番組の中で、平凡な日常を流し続けるわけにもいかない。生活上のトラブルや揺れる恋心など、動きのある場面のみを切り取らざるをえない。そうすることで、より感情や人柄が引き立つ。

 お笑い芸人のように喋りが達者でもなければ、俳優のように演技が秀でているわけではない。一般人が他番組に引けを取らない内容で勝負するには、芸能人でも滅多にオープンにしないプライベートな自分を晒け出して、視聴者から共感や反響を得る他ない。だから当然、台本はない(はず)。もちろん、放送できるようなきっかけ作りは与えられるかもしれないが。。。このことは、視聴者も理解すべきことだ。

 リアリティー番組に出演した人のうち、米国では20人以上、英国では2人が自殺している。今回、木村花は亡くなる前、悩みを訴えていた。番組の内容・構成に問題はなかったのか、プライバシーを晒す出演者に対し、心身ケアやネット上の誹謗中傷から守る策を講じる必要がある。

SNSの利用について(規制/通信の秘密・表現の自由)

 社会全体で考えなければならないのは、深刻さを増すネット上の誹謗中傷の問題にどう歯止めをかけ、個人の尊厳を守るかである。

 人権を侵害するような投稿には規制が必要だ。一方で「表現の自由」や「通信の秘密」を保障しなければならない。

 不当な批難と正当な批判は、似ているが違う。批判において、匿名性が保たれることで、異議を申し立てにくい立場の人が発言できるといった利点もある。しかし、批難は人権を侵害する行為で、あってはならない。表現の自由は、人を死なせるためにあるのではない。

投稿に工夫を凝らすべき

 私の通う大学では、元OG(学位取り消しになったため)による研究論文の不正が発覚以降、剽窃行為に対して対策強化に乗り出した。

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 これは、大学ポータルサイト上でレポート・論文を提出する前に表示される画面である。提出されたレポートは、類似度判定ソフトにかけられるように、先生側で設定できる。類似度の目安を超えれば、大学側からの処罰もあり得る。

 このように、軽はずみな誹謗中傷を防ぐために、投稿をするまでにひと手間加える工夫を凝らすべきである。利用者に「この投稿は、個人の尊厳を守り、人権を侵害しないものである。」といったような注意文にチェックさせたうえで、投稿されるシステムにすれば良い。あるいは、テクノロジーの発達により、差別的内容を含んだ投稿をAIで判定してもらうことも可能だろう。他人を傷つけるような行為を減らすことができるかもしれない。

 もっと言えば、「軽はずみな投稿する送り手」と「重く捉える受け手」で、心の温度差も違う。SNSを利用するならば、そういった認識もしておくべきだろう。人間にはまだ早いかもしれないが。

 個人の尊厳を奪う誹謗中傷は、実社会ではもちろん、ネット空間でも許されない。利用者は投稿する前に手を止めて考えてほしい。そして、SNSを正しく活用してもらいたい。

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