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【Book Review】14歳で"おっちゃん"と出会ってから、15年考えつづけてやっと見つけた「働く意味」

私とホームレスのおじさんと他人事

上級生に誘われ中学1年のときに、ホームレス状態にある方に食事を提供するボランティアに参加した。山谷地域を中心に、隅田川河川敷でテント生活の方々を訪問し、ボランティアで作ったお弁当を渡した。その地域ではお酒が理由でホームレス状態になった人が多いと聞いていた。酔って大声を出している人を活動団体の人がなだめている様子もあった。1人で行動してはいけないと言われていて少し怖いという印象もあった。一方で、おじさんの中にはテントの中を見せてくれる人もいて、活動団体の人とおじさん達の間で一定の関係が定着しているのだと思ったのを覚えている。ボランティアの参加は長期休みを利用して4年ほどだった気がする。家の事情や受験で忙しくなり次第に行かなくなってしまった。当時の私はなぜお酒が原因で働けないのか・おじさん達がなぜ孤立しているのか考えなかった。目の前の出来事に対して私は問いを持ってなかった。

問いと出会った少女の15年

この本の作者である川口加奈さんは14歳のときにおじさん達と出会い、そして「やり直すチャンスが用意されてないのでは」と問いた。14歳で問いと向き合い、19歳でNPO法人Homedoorを立ち上げる。課題解決のため当事者と共に走り「民間でつくるセーフティーネット」のモデルケースとなるべく活動を続けている。この本は活動の15年とその未来について書かれている。

「路上から脱出したいと思ったときに脱出できる選択肢があります」と認識してもらっておくだけでいいと思った。

14歳で"おっちゃん"と出会ってから、15年考えつづけてやっと見つけた「働く意味」

複合的課題を抱えている中で生活を立て直すのは本当に大変なことだと思う。立て直した生活のあり方に正解がある訳でもなく、個人によって"やり直し”の中身も異なるだろう。正解が用意できないからこそ、おじさん達が自ら選択し自分で自分の答えを作っていく。"選択肢”と"選択できるチャンス"を用意し支え、継続的なサポートを実現している。初めてのお給料日におっちゃんが何にお金をつかったか。一方的でない関係性が現れていて活動の基盤にある思いがわかる場面だった。

"選択肢"と"居場所"は児童養護でも同じ仕組みが必要

中学生の私は依存症・孤独・自殺..様々な課題が断片的に見えていた。この本を読んでいたら構造として捉え"問い"を持てたかもしれない。中学生の私にこの本を渡したいがそれは無理なので、子供がわかる歳になったら紹介したい。その時にはHomedoorの活動がサポート体制として行政に制度として取り入れられていたら嬉しい。"選択肢"と"居場所"は児童養護でも同じキーワードが出てくる。中学生の私とは違い、今の私は児童養護における社会課題に"問い"を持てた。私を鼓舞してくれる一冊と出会えてよかったと思う。


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