読書日記110「あめつちのうた」-朝倉宏景

甲子園のグランド整備などを担う実在する阪神園芸という会社を舞台にした物語だ。

野球に詳しくない私は、なにわ男子が阪神園芸さんに甲子園の水撒き体験をさせてもらっていたのを通して、阪神園芸を知った。それまでは甲子園の芝が天然芝であることすら知らなかった。

この本では、甲子園のグラウンド整備がどのように行われているのか丁寧に描かれている。気候の影響などを踏まえ、高度な技術を求められる仕事だった。整備状況によってはボールが思わぬ方向に跳ねるイレギュラーが発生し、勝敗の分け目になることもあるとのことだった。改めて自分がよく知らない仕事がまだ沢山あり、色々な人が一生懸命働いていることに気づくことができた。

グラウンド整備以外では、主人公の成長がメインで描かれている。主人公が家族の呪縛から脱する姿が描かれている。決定的な亀裂が生じていなくても、家族と距離が埋まれたり、息苦しく感じることはあると思う。その様子がリアルに描かれていた。自分と重ね合わせ少し苦しくなる部分もあった。

お仕事小説を選ぶときは馴染みのある仕事を選んでしまいがちだが、直感で選んだことで良い本に出会うことができた。

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