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Dark Side of Driving 〜ケアンズドライブの闇〜

【Preface】

時差1時間のケアンズからお送りしております、髪色が奇抜への一途を辿る柑橘です。最近オンラインで知り合った方と「ゆずぽんの助手席空いてます」で実際にお会いすると、本名とゆずぽんは何の関係もないんですね!と驚かれることが多いです。はい、"ぽん"はともかく、"ゆず"すら本名にはかすりもしていません。そして無類のポン酢好きというわけでもありません。

厨二病丸出しのタイトルで読者の不安を煽るな!とお叱りの声が飛んできそうですが、今回は私がいちドライバーとしてケアンズ周辺を走り回って感じた、ケアンズドライブの闇、というか、お客さんにも時折注意喚起がてらお話しすることを記事にしました。日本とケアンズの違いにも触れたりしてるので、お楽しみいただければと思います。

ドライブシリーズが図らずも着々とボリューミーになってきたので、そのうちまとめ記事を作りますが、差し当たりお勧めはこの記事です。


【Specification/スペック】

つい最近範馬刃牙を見たせいで筋骨隆々の化け物じみた老人が頭に浮かんでしまう柑橘です。筋トレに目覚めたせいか、筋肉系のアニメにも食指が伸びるようになってしまい、いよいよ方向性が掴めません。体調とかメンタルがちょっとダウンした時に見たくなります。どんだけ強さを求めてるんだよ。

そんな雑"学"とも呼べないただの雑談はさておき、この章では「ケアンズではどんな車が走ってるの?」という話をしていきます。
結論から言ってしまうと、サイズも古さも幅が日本よりはるかに広いです。日本でだったら多分車検通らないような車が平気で公道を走っています。車好きな人は通りを走る車を観察してるだけで楽しめてしまうかも。でも心配にもなってしまうかもしれませんね。うちのばーちゃん(20年落ち25万キロのterios)も、日本では車検通らない気がします。
クイーンズランド州では、毎年の車検が義務付けられていません。regoだのrwcだの、クイーンズランド州で車を購入するときの話はまた煩雑になる(し私もちゃんと調べないといまいちよくわかってない)ので、ここでは割愛します。

日本じゃあまり見かけない車シリーズで言うと、
・日本の狭い道じゃ走れそうにない超絶大型トラック
・一般車とトラックのキメラみたいなute

https://en.wikipedia.org/wiki/Ute_(vehicle)


このあたりは車種の話で、スペックの話になると

  • 後部座席の窓ガラスがなくて布が貼ってある

  • どんなカーチェイスを切り抜けてきたのかと聞きたくなるほど傷だらけ

  • 鍵と鍵穴のみタイプ(スマートキーがない)

  • エアコンが壊れている

  • 走行距離30万キロ超え

  • マニュアル車

とまあ、びっくりするような品質の車がバンバン私を抜かしていきます。私だって90km/hくらいは出してるのに。
うちのばーちゃん、もとい愛車の話はまあ別の機会にお話しするとして、日本だとそもそも窓ガラス割れたらすぐ修理に出すし、エンジンがボタン式じゃない、物理的な鍵と鍵穴の車の方が珍しいくらいだし、マニュアル車なんてトラックとか田舎の古ーい車でもないと見かけないくらいじゃないかと思います。
少なくとも私が日本でバイトしていた某大手レンタカー会社には一般乗用車にマニュアル車はありませんでした。現代っ子の私の免許がオートマ限定なのは、私の記事の愛読者(そんな奇特な人がいれば、の話ですが)なら当然ご存知ですよね。

この記事でゆずぽんと初めて遭遇して下さった方のために、この記事をご紹介しておきます。
私が自分のオートマ限定をどうやって強みに変えているかがわかりますよ。

そんなバラエティに富んだ車たちの中でも、日本のTOYOTAは世界のTOYOTAみたいです。やっぱり日本製は他国製に比べて壊れにくいんだとか。中古車の相場を見ていても、日本車は走行距離30万キロを超えても、割高で売られていますし、実際走ります。日本ではその日本車が10万キロで買い替えられてしまうことを考えると、なんだか勿体無いと言う単語を世界に浸透させた国とは思えないことをしていますね。

てな訳で、ケアンズでは、車は
走ればOK>>>整備士に正しく直してもらう
こんな図式で成り立っているようです。うちの家主もライトとか自分でつけちゃうし。だからホームセンターの規模も尋常じゃないです。わざわざDIYなんて単語使わなくても、DIYが当たり前。Get it doneは高いし時間かかるし、あてにならないからそれなら自分でやって動くならいいや、って感じなんですね。日本が便利になった結果、失われたものがケアンズにはまだまだ残っている感じがして、私は割とそれらが愛おしかったりします。

【Road Rage/煽り運転】

とはいえ、です。「古き良き」と形容されるものは言い換えればold-fashionedとも言えてしまうわけで。良し悪し表裏一体の裏を今日は書く日ですので、日本でも近年法整備が進んでいるこちらの話題についてお話ししていきたいと思います。

レンタカー屋で日本人利用客に説明をしていても、時たま出てくる質問です。

ケアンズの人たちの運転って荒いですか?

ドライバーたちの心の声を代弁してお伝えします。

「単に車間距離が日本より狭いだけやねん」

「煽るつもりは毛頭ない、ただ俺は早く行きたい」

「制限速度は最低速度、守れない奴は道を譲れ」

……そうなんです、普段穏やかで朗らかな人もハンドルを握ると豹変したように見えるという話を日本人からよく聞くんですが、単純にパーソナルスペースの違い、というかハグとか当たり前の文化だから距離が近いだけで、煽ってる自覚はないようなんです。
煽ってるように見えがちなAussieドライバーに対しても、これには止むを得ない訳もなくはなくて、と、一応ケアンズドライバーの一人として擁護をしてみます。

ケアンズ周辺は、ひとたび市街地から出てしまったら、信号もあまりないし、ハイウェイ(無料)の制限速度は80~100km/hだし、運転する時間の大半がスイスイ進むんですね。だから、逆にいうと渋滞とか停車への耐性が低いんです。北海道で生まれ育ったドライバーが都内で運転したら発狂するのと同じイメージです。もちろんその逆もあって、都会生まれ都会育ち、運転は都内のした道のみという友人は、ハイウェイでの高速走行には耐性がありません。the very beginnerな両手でハンドルがっちり握り締めるスタイルの運転になってしまっていました。助手席に乗ってる私は一休みどころかハラハラしてしまって逆に疲れました。

そんなわけで、私はいつも冗談半分で「ケアンズには煽り運転という概念はありません」と答えています。みんな車間距離近いのが当たり前なので。あと、日本ではなかなか見ない光景で言うと、追い抜きざまに窓から中指立てられたこともあります。レアだけどね。「あ、ほんとにやるんだ〜!」って感心してしまいました。うちのばあちゃん加速があんまり得意じゃないので、初速が遅いらしいです。あと、信号待ちの後の発進や、や環状交差点への進入がちょっとでももたつくとすーぐクラクション鳴らしてくるせっかちさんもそこそこいます。

最初こそ「うわぁトロくてごめんなさい」とか思ってましたが、Uberもやってるうちに慣れました。お客さんにも、「残念ながらそういう態度がデフォルトなんで、無視してもらって大丈夫です。どうしても気になっちゃうようなら路肩に避けて譲ってあげちゃってください」とアドバイスしています。

逆に横道からの車を入れてあげたりすると、親指を立てて感謝を示してくれたりもします。ちなみに、日本人がよくやるハザードを数回たいたり、小さくクラクションを鳴らすといった行為はほとんど見かけません。

【Fine/罰金】

煽り運転に関しての罰金というのはケアンズでは聞いたことがありません。ただし、ご存じの方もいるかもしれませんが、オーストラリアは罰金大国。スピード違反にはそれはそれは厳しいです。レンタカー屋でバイトをしていても、会社宛に通知のくる違反がスピード違反が大半です。

私も峠の追越車線を使って前のトラックを追い抜き、1車線になるまでに減速が間に合わなくて1回カメラに取られました。

3週間後くらいにね、急に陸運局から封書が届くんです。中を開くと、自分の車が後ろからばっちり撮影された写真と、何キロの制限道路で何キロオーバーしていたか、罰金はいくらで、いつまでに支払う必要があるか、淡々とカラーで記載されています。初めてもらった時はちょっとビビりました。延滞すると罰金がさらに重くなるので、その場で払いました。

気になるのはその金額ですよね。
60km/h制限の道を70km/hで走行していて$280でした。ケアンズの家賃相場が週当たり$200~$250なのを考えると、ワーホリ民には少々ダメージのある金額です。

地元民はスピードカメラの場所を把握しているので、そこ以外ではガンガン制限をオーバーして走っている人もいます。ただ、基本的に大半の人が制限速度ジャストで走っている印象です。みんな罰金なんて払いたくありませんからね。何も手に入んないんだから。

バイト先の同僚は、運転中にスマホをいじっていたことで4桁ドルの罰金を喰らったそうです。恐ろしい。

ケアンズでは、煽り運転が違法にならないのはみんな煽られても意にも解さないからかもしれません。煽られても「うわ〜ごめんなさい!」と申し訳なくなるよりも、「なんじゃワレやんのか」と言わんばかりに煽り返したり、無視する気の強い人が多数派なのかも。

一方、スピード違反は事故った時の危険度が桁違い。だから高い罰金で取り締まってたりするのでは、なんて思いました。罰金以外にも危険運転を抑制するために、街中のあちこちにhumpと呼ばれる段差?が意図的に設置されています。気づかず乗り上げるとバンパーを傷つけてしまうことがあるので、標識はしっかり見ておいてくださいね!

ちなみに、BUMP OF CHICKENのバンド名でお馴染み(?)bumpにも、humpと似たような「盛り上がった部分」のような意味があります。ハンプとバンプの音のイメージ通り、humpの方が起伏が緩やかで、bumpの方がほぼ一時停止レベルまで減速しないといけないような凸部のことを言います。

【Traffic Accident/事故】

さて、最後に交通事故についてお話ししておきます。先の2つは気をつけて安全運転、煽られようが何台に抜かされようが法定速度を遵守して走っていれば避けられますが、気をつけても気をつけきれないことがあるのが事故ですよね。これ、高校入試のちょいレベル高めの授業でよく扱ってました。

You cannot be too careful when you drive a car in Cairns.
ケアンズで車を運転するときは注意してもしすぎることはない。

tooは「〜も」と同意を表すほかに、程度が過ぎていることを表します。上の文を直訳すると「注意深くなりすぎることは出来ない」と言っているんですね。

似たような「〜しきれないよ!」に、I cannot thank you enough!があります。すごーく助かったときに使えます。私なら冷蔵庫にいつもの備蓄がなくなってしまって、買い足す時間も取れずに帰宅したら、家主が私の分のお夕飯も用意してくれてあった時とかですかね。

つい昔取った杵柄の埃を払いたくなってしまいました……。tooとenoughには見た目似ても似つかないのに切っても切れない関係性があって可愛さ余って憎さ百倍といった複雑な感情を抱くのですが、柑橘の内情など知ったこっちゃないですね、脱線してないでさっさと話を事故に戻しましょう。

ケアンズでよく聞く事故は、人身ではありません。野生動物との接触です。ケアンズ市内から車で15分ほど走るだけでも、カンガルー注意の黄色い看板が立っていますし、山道にはカソワリー注意の看板やら、手作り感満載の「Three were killed here」って書いてある注意喚起の看板やらが散見されます。ケアンズ周辺にはないですが、ケアンズからブリスベンへのロードトリップの道中には、コアラ注意の看板も見かけました。たまーに道路を横切っているらしいです。いちいちの看板はなくても、蛇や小さい鳥とぶつかってしまうこともあるようです。

ロードトリップするならカンガルーに負けない4WDの車を買え!と今の家主は言っていました。

人間絡みでの運転中のヒヤリでいうと、e-scooterが挙げられます。これはいわば電動キックボードです。紫色のレンタルe-scooterは街中の至る所で目にしますし、車の代わりに近所への移動にこれを買うワーホリ勢も結構います。ちなみに日本人がスクーターと言われて思い浮かぶ、原チャリはmopedと呼ばれています。それなりのスピードが出るのですが、縦横無尽に走っているので車を運転する側からすると近くにいたら警戒する存在ですね。日本でも自転車と同じような立ち位置です。

自滅系の事故だと、雨の日のスリップと椰子の木の枝や実によるダメージはいつもレンタカー屋での貸し出しの時にお伝えしていることです。

路面が濡れていると起こるハイドロプレーニング現象(hydroplaning)は教習所でも必ず学びますが、ケアンズでは雨の日のスリップを促進してしまうものがあります。大型車から垂れてくるオイルです。特に峠のカーブやラウンドアバウト(環状交差点)では本当に滑りやすくなっているので、雨の日には注意が必要です。一度滑り出すとゾッとするほど制御が効きません。キュランダに出勤する時に2回ほど「あ、やばい滑ってる」と感じたことがあります。幸いそこまでスピードを出していなかったこと、対向車がいなかったことで何事もありませんでした。

もう一つレンタカー屋でも口を酸っぱくしてお客さんに伝えていることとして、"Don't park the car under palm trees."があります。トロピカルな気候の代名詞とも言える椰子の木は、ビーチになくてはならないものですが、あれ、案外危ないんです。なぜならまあまあなサイズの実が落ちてくるし、枝も丸ごと落ちるんです。走行中に直撃することはまずないと思いますが、駐車中に屋根に降ってくると、利用時間内での損傷となってしまいます。お店としてもそんな不慮の事故のせいで、せっかくケアンズを楽しみにきたお客さんに修理費何百ドルもの請求をしたくはありませんので、毎回必ず伝えることになっています。

そのほか不運としか言いようがなく、でもそれなりの頻度で報告を聞くのが飛石によるフロントガラスのダメージですね。日本ほど道が整備されていない上で走行速度は日本より早いとなると、飛石のリスクと当たってしまった時のダメージが大きいです。こういうのを安く直すための車両保険ですね。【スペック】のところでもお話しした通り、プロに修理を頼むと本当にお値が張る(上に迅速とは言えない対応をされることもある)ので。

【Postscript】

とまあ、ケアンズドライブの闇側をお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。いいとこだけ見せるやり方は性に合わないので、今回思い切って「こういう違いと危険があるよ」というコンセプトで記事を書いてみました。出掛けに「気をつけてね」を声をかけてもらうと、本当に事故率が下がる、なんて話もありますし。

私はよくタロットカードで出す”未来”のことを、黄色い道路標識に例えています。私は運命論者ではないので、未来は決まってないでしょ、じゃなきゃつまんないじゃん。と思ってる派なのですが、それでも「今まで通り行くならこうなりそうだよね」という、デフォルトというか、既定路線みたいなものは過去のパターンから予測できると思っています。人間の行動にはパターンがあるって師匠も言ってたし。

でも、その既定路線は本人が望んで、行動をすれば変えることができる。だから、カードで出した"既定路線的な未来"が望ましくないものだった場合、そこに行かないように行動を起こすことができるのが、カードに未来を聞いてみる意味だと思うんです。タロットは未来を決めません。あくまでも予測するだけ。それに乗るか反るか決めてるのは自分だよ、といつも自分にもお客さんにもしつっこくいうようにしています。

「ここに気をつけるんだよ」と、それこそ「カンガルー注意」の看板のように出ていたら、看板がない時よりはちょっとだけ路肩に意識を向けて走れるでしょ。それと同じ。カンガルーがいるかも、なんて思いもせずに走っていたら轢いちゃうかもしれないけど、「ひょっとしたら飛び出してきちゃうかも」と思ってたら、対処できるかもしれない。

スイスかどこかで生涯無事故無違反で免許を返納したおじいさんが、安全運転の秘訣を聞かれて答えていました。
「自分以外全員気が狂ってると思って運転する」
お茶目なジョークでもあったのでしょうが、事実でもあるんでは、と思います。日本の「かもしれない運転」てやつですね。いつでもブレーキに足を移せるようにして、アクセルを踏む。疲れるけど、取り返しのつかない後悔を生むよりははるかに良いんじゃないかと。

過去と他人は変えられないけど未来と自分は変えられる。使い古された言い回しですが、私なりの言い方をすると、

過去が変えられないのは確か
だけどその過去へ抱く感情は自分の認知で変えられる
他人が変えられないのも確か
だけどその他人への接し方は自分の認知が変われば変わる
そしてその接し方が変わることで相手との関係性にも変化は起こせる

こんな感じです。何を隠そう、私の専門は「認知」なので。

だから、いつも通りあとがきは好き勝手しゃべり散らしましたが、「ケアンズ旅行楽しみにしてるのに不安にするような記事書きやがって」と言われるとしても、この記事で私が伝えたいのは、「いってらっしゃい」の後の「気をつけてね」なんだよ、とわかってもらえたら嬉しいです。can't be too carefulだからね!!!

Thank you for reading.
Hope to see you soon.

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