見出し画像

初めてのデートと映画

先日、昔付き合っていた男子とおよそ20年ぶりに再会した。同窓会というやつだ。「ハゲてたりして」と不安になりながら居酒屋へ向かったが、それはなくて安心した。

別に相手の容姿がどうなっていようと関係のないことだが、「綺麗な思い出のまま残しておきたい」という欲。今現在の相手にもなんとなく「綺麗でいてほしい」と思ってしまうのはわがままだろうか。

高校三年生。初めてまともに付き合った彼氏との初めてのデートはイオンだった。
“田舎にできた新しいイオン”ほど魅力的なものはない。実際そこは若者のたまり場であったし、遊ぶといえばイオンだし、デートといえばイオンだった。
それくらいイオンだった。笑

まあ、そんなことはどうでもいい。
今回話したいのはそこのシネコンの話だ。
わたしも彼も映画が好きだった。そもそもは映画の話ができたから、お互い相手に興味を持ったというのもあると思う。
当時イオンに綺麗なシネコンがあったことはかなりhotなことだった。

待ち合わせた最寄駅には自転車で向かったが、おかしな天気だったのを覚えている。空は明るかったけど小雨が降っていた。さらに、強風で向かい風だった。
初めてのデートでスカートは外せなかった。風でスカートが捲り上がるが、右手に傘をさしていた。危ないと分かっていたけど、カッパなんて着て行くわけにはいかない。かといって濡れていくわけにもいかなかった。髪を濡らしたくなかったから。
両方を譲らなかった結果、駅に着く前にわたしは風に煽られ二回こけた。

デートに映画はよくないというけれど、今思えば二人を繋ぐものはそれしかなかった。
観たのは「ゴーストシップ」

※ホラー笑

実際、映画なんてなんでも良かった。内容なんて全く頭に入ってこなかった。映画の内容がここまでどうでもよかったことは、この時が最初で最後。

暗闇の中シートに座って、巨大な画面を見つめながら、隣に座っている人のことだけ考えてた。肘掛けに置いた手が触れ合って、その流れで手を繋いで…なんていう映画みたいな流れにはならなかった。

映画館を後にしたわたしたちは、
言葉なんてほとんど無かった気がする。
帰る前に一緒に、プリクラを撮った。
今日一緒に過ごした、その証拠はそれだけだった。

映画の内容は全く覚えてないけれど、
あの映画の冒頭シーンは忘れない。
甲板でパーティーをしている乗客達が、なんでか知らんがワイヤーで真っ二つ(体)にされてしまうあのシーン。
「なんつー映画をチョイスしてしまったんだ」


今思えば初めてのデートから色々と呪われていた。1年もしないうちに別れちゃったけど、それは誰のせいでも、もちろん映画のせいでもない。
斜め前に座って美味しそうにビールを飲む彼のこめかみには、シミができていた。


いただいたサポートは、いつか海外に飛び立つときの資金にしたいとおもいます。