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【戯曲】 寒い冬


タケシ「体調が、悪いんだ」
サトシ「そうか」
タケシ「そうか、以外の返しはないの?」
サトシ「ないよ。面倒臭い女みたいな言い草するなよ。お前と友達なのは、面倒臭い女を感じずに済むからお前と友達なんだ。だから、」
タケシ「面倒臭い女みたいな言い草するな
だろ?」
サトシ「あぁ」
タケシ「サトシってさ、」
サトシ「おう」
タケシ「ポケモンいじりされたことある?」
サトシ「めっちゃあるよ」
タケシ「だろうな」
サトシ「お前もあるだろ。目細いなとか」
タケシ「それは顔面からdisってるんじゃん」
サトシ「いじりがなくなれば、いじめもなくなるかとおもうけどさ」
タケシ「うん」
サトシ「いじりのない世界もつまんなそうで、
適量のいじりを法律で決めて欲しいなとか思うよ」
タケシ「考えすぎだろ」
サトシ「俺がポケモン見てるだけで、周りが笑うんだ。
ポケモンがゲットできるはずもない現実世界で、夢を見ているんだなって。サトシを見てると自分が正当化できて嬉しいよって、前の彼女が笑ってそう言ってた。それきっかけで別れを告げたよ。俺の名前のやるせなさから自分の正当化をはかるなよってな」
タケシ「…酷い話だ」
タケシ「でも、未来、ポケモンがゲットできる世界が来るかもしんないじゃん」
サトシ「来ないよ」
タケシ「…」
サトシ「親戚が、自殺したんだ」
タケシ「へ?誰?」
サトシ「言ってもわかんないよ」
サトシ「俺とお前は他人なんだから」
タケシ「そういう所、俺嫌いだな」
サトシ「…葬式で1、2回会ったことある程度のおばさんだったんだけど、家で昔の写真漁ったらそのおばさんと俺のツーショットでてきて」
タケシ「うん」
サトシ「そのおばさん、しわっしわの顔して笑ってたんだ」
タケシ「嗚呼」
サトシ「こんなしわっしわの顔して笑ってる人が、悲しむような世界で俺は生きていて、誰かしらが今も死んでるんだって思うと、心が辛くて」
タケシ「…」
サトシ「でも、希望しかない世界もつまんないと思うんだ。」
タケシ「そうかなあ」
サトシ「だから、タケシ、戻ってこいよ
その崖の上から」



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