夜職に就いて思ったこと

若者が集まるダイニングバーで働く私の出勤時間は午後8時。一滴も酒を飲んだことの無い数年前の私にとっては信じられないことだが、今の仕事はびっくりするほど自分にフィットしている。人生何があるかわからないと、心底感じている。

学生時代から接客業はいくつか経験したが、客の個人的な話を聞くことは滅多になかった(そりゃあそうだ)。私が働いているのはいわゆるオーセンティックバーではないので、少し大きめにかかった音楽に混ざって楽ししうな会話が聞こえてくる。カウンターに座って従業員と話す人も多い。名前も仕事も知らないような人達の様々な価値観を知るのは、とても新鮮で面白い。

かれらの言葉の端々からは、他人に対しての決めつけが読み取れることが多い。価値観やプライド、人生の指針について語るとき、かなり大きめの主語で話をするのだ。

「女はマジで簡単に嘘つくよ。お姉さんもでしょ?」「男はみんな絶対に浮気したいと思ってる!」「若者は皆、何をするにも真剣味がない」.......

いったい今まで何人の人と接してきての言葉なのか私の知るところではないが、どの人も自信満々に話すものだから、面食らってしまう。こういった話をする時、何故か誇らしげに話す人が多い(そして大抵ツレが引いている)。他人はこうだ、と決めつける前に、自分はこうだ、と語れる方が格好がつくのに、と思う。

酔って思わず出た言葉は、結構本音だったりするんじゃないだろうか。たまにはお酒のせいにして赤裸々になる日も良いけれど、この仕事だからこそ知ってしまった悲しい言葉はなんだかやるせなさもある。根っこの部分から優しくなれたらみんなもっと幸せなのにね。

2019.08.30 植物

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