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「ドイツ縦断ひとり旅」(29) ついに帰国

2019年9月26日(木)曇りのち晴れ

16:40、テイクオフ!
窓から必死で地上を見る。ドイツの森が遠ざかっていく。ふと、15年前のことが浮かんだ。
ドイツ南西部のシュヴァルツヴァルト(黒い森)地方を旅行し、フランクフルト空港から帰国する途上だった。乗り換え便のスイス航空の小型機にはたった2名の乗客。クルーの方が多いので驚いてしまった。
私は窓から、遠ざかる「ドイツ」をひたすら見ていた。

帰りたくない。でも、帰らなければならない。いつまた来られるだろう。涙がこぼれてきた。チョコレートを運んできたアテンダントの男性は、私が泣いているのを見て驚き、「どうかなさったのですか?」と訊いた。
「愛する国から離れるのが悲しくて・・・帰りたくなくて・・・」
彼は、「おお、そんなに私達の国を愛してくれているのですか。チョコレート、ひとつかみお取りなさい。食べて元気を出して、またスイスに来てください。」と言って、カゴを差し出した。

私は涙を拭き、言われた通りにした。今さら、「いえ、あの、スイスじゃなくてドイツなんです。」とは言えなかった。
銀紙に包まれたキューブ状のチョコレート。ひとつ口に入れたとたん、ふわーっと溶けて、「こんなおいしいチョコ、初めてだ!」と、感動した。
残りの7個は持って帰り、そのころ英語を教えていた小さな塾の生徒達に配った。

今日もまた、帰りたくなくて泣いている私。きっとまた来るんだ。来年来ればいいじゃない。生きてさえいれば・・・来る意思さえあれば・・・

さよならドイツ


遠ざかる
遠ざかる

17:30、飲み物が運ばれてきて、ミネラルヴァッサー(水)を頼んだ。
18:30、夕食。

あと2回 機内食を楽しんで、映画を5本観たら日本に着く。

2019年9月27日(金)晴れ

ドイツ時間、午前3:40、日本時間、10:40、羽田空港に到着。
まず入国審査、次に荷物を受け取り、税関検査を受けて、出迎えの人達がいる所に出たら右へ進み、国内線乗り継ぎ手続きをして、荷物を預ける。

11:25、第二ターミナル行きのバスに乗る。えっ、私一人!? 最初のバス停で下車。ゲート番号を伝えると、ドライバーさんが最も近いバス停で降ろしてくれた。降りた所には職員が待っていて、「エレベーターで2階へどうぞ。ゲート71ならすぐですよ。」と、ていねいに教えてくれた。ちっとも困ることがない。

12:15、搭乗案内が始まった。私の腕時計はまだドイツ時間。朝の5:15。乗客が全員乗り込み、さあ出発!という時になって、機に不具合が見つかったという放送が流れた。しばらく、調整や話し合いが行われていたようだが、結局、安全のため、機を乗り換えることになった。 えーっ! こんなこと初めてだ!

新しい出発時刻は14:50に変更。F 空港到着は16:45。 予定より、2時間15分も遅れる!
搭乗口で各人、夕食代として 2千円を支給された。

初日から予定通りにいかなかった今回の旅行だけど、最後の最後で、とんでもない番狂わせ。これにはもう笑ってしまった。

そう、何が起きるかわからない。思いもよらないことが起きても何とかなる。何とかする。旅先で不測の事態が起き、おろおろしても、それが後になってみれば、逆にいい思い出になる。何事も楽しむべし。

未知との出会いに心ときめかせ、さあ、出かけよう! 新しい発見をし、気付きを与えてくれる、旅は屋根のない教室。

         ーー 完 ーー

💛 この旅行記を閉じるにあたって、友人達、そして、親切にしてくださった一期一会の方達に、心からの感謝を捧げます。
また、読んでくださった皆様、コメントをくださった方々にも、心から感謝申し上げます。温かい励ましのお陰で、最後まで書き綴ることができました。ありがとうございました♪♪ 💛

最後に、ゲーテの言葉を。
「人が旅をするのは目的地に到着するためではなく、旅をするためである。」

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