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感想|印象派 モネからアメリカへ

東京都立博物館「印象派 モネからアメリカへ」
いつも会期ギリギリに駆け込んでしまうので今回は早めに行ってきました。
開催したばかりなうえに東京藝大の卒展もあったからか、平日なのに結構混んでいました。

ウスター美術館はモネの≪睡蓮≫を初めてコレクションした美術館だそう。そういう意味でも「モネからアメリカへ」というタイトルなのかな。
展示全体を振り返ると、モネ以前の作品やアメリカ以外の作品もあって「印象派の総集編」という感じでした。

ほとんど全ての作品に解説ボードがあり、印象派からの影響や注目する点が書いてありました。展示を通して写真禁止だったこともあって作品に集中できるのもおすすめポイント。

展示の構成は目次にある全5章。ここからは作品について思ったことや率直な感想をつらつらと書いていこうと思います。


1. 伝統への挑戦

まず印象派の先駆けとなる作品たちが展示されていました。①伝統(神話や歴史)に反した自然や日常の風景、②アメリカでの雄大な自然という絵画の2つの動きが紹介されています。

ウィンスロー・ホーマー《冬の海岸》1892年 ウスター美術館蔵

戸外制作といえば印象派のイメージが強いけど、アメリカの作家であるホーマーも独自に戸外制作を始めたそう。水飛沫や波の動きと低い彩度とが相まって海の荒々しさが表現されています。左下に足跡があったり北斎の浮世絵を想起したりいろいろなことを思いながら見ました。

ジュリアン・デュプレの≪干し草作り≫は躍動感がすごかったです。飛び散る干し草の部分の絵具が少し盛り上がっていて飛び出してきそう。クールベの≪女と猫≫では猫の毛がもふもふしていて可愛かったです。

2. パリと印象派の画家たち

第2章ではモネ、ルノアール、カサット……と印象派を代表する作家が勢ぞろいです。ポスターにもなっている≪睡蓮≫とアメリカ印象派のハッサムの作品が展示されていて「モネからアメリカへ」を象徴する章だなと思いました。

印象派展ポスター とてもかわいい

ハッサムの ≪花摘み、フランス式庭園にて≫ はポスターの段階から気になっていたのですが、実際に見てみると予想以上にきれいでした。画像だと赤やピンク色が目立つのですが実際に見ると金色(黄色?)の存在感が大きかったです。花や芝の輝きに違和感なく金色が使われていて日光の眩しさを感じます。

クロード・モネ≪税関吏の小屋・荒れた海≫ 1882年 日本テレビ放送網株式会社蔵

モネは≪税関吏の小屋≫が印象的でした。≪睡蓮≫のような淡い作品とは対照的にこの作品では黄色がかなり使われていてギラギラとしています。遠目に見ると花畑とか雲海の上のようでとても幻想的で、今回の中でも特にお気に入り。

3. 国際的な広がり

「印象派=西洋」という勝手なイメージを持っていたので、日本の作品が多く展示されていたのが新鮮でした。パリを訪れた日本の画家たちは印象派の要素を取り入れたそうです。藤島武二の≪ティヴォリ、ヴィラ・デステの池≫はかなり印象派らしいなあと思いました。

水面の緩やかな揺れや葉が表現されていて好きです。他にも舞妓さんや風景を題材に日本風に落とし込まれた作品もあったけど紹介しきれない……。

サージェントの≪キャサリン・チェイス・プラット≫の肖像画は、なんだか引き寄せられるようで構図や布の質感が凄いなと眺めていました。≪カーネーション、リリー、リリー、ローズ≫という作品が好きなのですが、帰った後に同じ作者だと気づいて「えー」と言ってしまいました。

さらに解説文にも驚き。この肖像画は依頼者の父親が紫陽花の背景に不満を抱いたため未完に終わったそうです。この時点でも既に美しいのだけど描き上げたのも見てみたかった。

4. アメリカの印象派

1880年代にはアメリカの画家がヨーロッパに留学し印象派の様式を学んだそうです。ハッサムを中心にアメリカの作品が並んでいました。

チャイルド・ハッサム ≪朝食室、冬の朝、ニューヨーク≫
1911年 ウスター美術館蔵

展示スペースにはちょうど座席があったのでこの作品の前で休憩しました。とても穏やかでずっと見ていられました。どこか日本画のようでもありとても落ち着きます。今日でハッサムがとても好きになりました。

5. まだ見ぬ景色を求めて

ここでは印象派以降の新しい運動に焦点があてられていました。キュビスム展を見に行ったこともあって、解説をすんなり理解できたのが嬉しかったです。

ピカソと共にキュビスムの先駆けとなったブラック。彼の作品といえばモノクロのイメージが強かったので、色とりどりに描かれた≪オリーヴの木々≫は少し驚きでした。他にもセザンヌや新印象主義のシニャックなどたくさんの作風のものがあって面白かったです。


印象派以前→フランスの印象派→印象派の影響という順番に展示がされていたので発展の歴史を辿れたようで楽しかったです。これまでは「印象派がすき!」と何となく言っていた気がするけど、それぞれ特徴があって少しでも理解できたかなと思います。

東京藝術大学の卒展にも行ったのでその感想も書きたい。
最後まで読んでいただきありがとうございます、うれしい。

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