フリーランスとして成果が出ないのはフォロワーの数ではない。個人経営の意識だ。(書評:『V字回復の経営』)

新卒で大手教育系会社に就職して5年勤めるも、横浜から静岡への通勤という無茶が嫌になり、東京の出版社へ転職をした。しかし、会社の風土とまったく合わず、独立することになった。部下を持つ経験も、チームをマネジメントする経験もほとんどなく、中途半端な状態でフリーランスとなった。

それから数年。大した成果を出すことができずにくすぶっている人間を知っている。

これは、ぼくだ。

ブログ(10万PV)や Twitter(7300フォロワー)、編集スキル、ライティングスキル、指導スキルなど、いろいろと持ち合わせているものの、どうも成果が出ない。この答えが知りたくて、いろいろなビジネス書を読み漁った。1000冊は優に超えるだろう。自分を変えようと何度も試みてきた。

それでも、成果が出ない。

まったく仕事がないわけではないが、くすぶっているという言葉がぴったりな具合だ。

しかし、ようやくフリーランスとしての自分を変えてくれる一冊に出会ったようだ。それが『V字回復の経営 2年で会社を変えられますか』(三枝匡)である。


1. 本書の概要

この本は、ストーリー仕立ての経営書である。著者である三枝さんが経営コンサルタントして働く彼自身の体験談。不振にあえぐ会社に、そと者である黒岩がリーダーシップを発揮し、どのように再建していくのかを描いている。不振事業の症状を指摘しながら、改革を成功に導くための要諦が散りばめられている。

2. 自分の会社を経営する「個人経営」という意識

正直に言うと、ビジネス書は多く読んできましたが、経営に関する本は避けてきました。経営という言葉自体が会社に所属する人向けだと考えていたからです。しかし、会社であろうが、個人であろうが、経営をしていくのは同じこと。

フリーランスという個人が社長であり、従業員でもあると考えながら、この本を読むと、くすぶっている理由が浮き彫りになっていきます。フリーランスとして活躍したい方に向けて、自分という会社の成果を出す「経営意識」を身につけるための言葉をご紹介しましょう。

3-1. 強烈な反省から始める

彼らの話の中では競争企業の影が薄かった。彼らの関心はあくまで内向きのことばかりなのだ。

これは従業員が自分の会社を愚痴る場面に対しての指摘です。今、「好きなことを仕事にしよう」「やりたいことをやろう」という声が多いですが、お客さんにしたい相手のことを考えずに好き放題やっても成果は出ません。世の中にどんなライバルがいるのかを意識した上で、自分の強みを発揮していかなくてはならない時代と言えるでしょう。自分ではなく世間を見ること。

反省論が中途半端なままであったら、その結集は起きない。幹部や社員が自分で情けなくなるほどの、痛切な反省論が必要なのだ。
人々に「強烈な反省論」を迫るときには、徹底的な事実・データに基づく追い込みが不可欠である。

中途半端な反省では具体的なアクションに移らないのは自明の理です。だからこそ、痛切とも言えるほどの反省をする時期が必要であるということです。しかも、その反省は「事実」「データ」に基づくものでなくてはなりません。ぼくの場合、年度末に行う確定申告がまさにそうです。自分の成果を数字という形で目にするのですから。

人は厳しく損益責任を問われない限り、経営者として育つことはない。

上に書いたことと同じく、確定申告をすると、無残なほどに損益について直面します。ここに対して危機感がない限り、「個人経営」の意識が育つことはないでしょう。

3-2. 切迫感を抱く

「まだ甘いな。君の仕事次第でこの事業の生死が決まるんだぞ」

仕事がなくなれば、お金が手に入らなくなります。このシンプルなことを常に考えてアクションに移せるかがポイントです。ぼくの妻はフルタイム勤務で、ある程度の収入が見込めるため、そこに甘えが生じているのは間違いありません。自分の仕事で生きていく自覚を持つことが大切です。

3-3. 相手を徹底的に想像する

私が聞いているのは、性能じゃない。お客様がどのようなメリットを得るのかだよ。

お客さんが何を受け取るかを徹底的に想像することができなければ、結局、自己満足に陥ってしまうでしょう。Twitter のつぶやきを一つ取っても、単なる感想を相手がメリットを感じる形で提供することはできます。

3-4. 競争相手を認識する

世の中に同じ六商品群をすべて扱っている競合企業が一社もないのは当然だった
強みと思われていた事業の組み合わせそのものが、実は赤字の元凶だった

本書に出てくる会社は多くの商品を扱っていることを強みに思っていました。ところが、それら全部の商品を扱っている競合企業はない。ここには「選択と集中」ができていない証拠だと言えるでしょう。ぼくの場合、ブログや Twitter、note、Instagram、YouTube とさまざまなチャネルを展開しています。「これをやるといいよ」という声に飛びついた結果です。「選択と集中」ができていないわけです。前述した「相手への想像力」を駆使して、自分のお客さんが見るチャネルに絞っていかなくてはなりません

3-5. 現場にストーリーを落とし込む

調子の悪い会社は「上層部で大局的に語られている戦略」と「現場の実態」がつながっていないに決まっている

いくら素晴らしい戦略を描いても、それを現場に落とし込めていなければ、成果にはつながりません。ぼくはビジネス書を読んで「こんなことをしよう」と戦略を練ることはあっても、それが現場で行われるアクションに結びつかないことはあります。戦略を描くことができたら、必ずアクションを起こすように心がける必要があります。この note 自体もアクションにつなげていかなくてはならないのは言わずもがな……。

3-6. 感情的であれ

元気な組織とは感情の起伏の激しい組織であり、褒められたり、悔しがったり、痛かったりを豊富に体験させる組織である

個人という会社を経営するにあたり、嬉しいことも嫌なこともあります。そういったことを淡々と乗り越えることはできます。しかし、自分の感情に敏感になることが必要ということ。個人で動いていると、褒めてくれる人はいません。だからこそ、自分で自分を褒める意識が大事になるということでしょう。

3-7. 経営者の自覚はあるか

経営者がかかえ込む問題のほとんどすべては、経営者自身の力量の反映である

個人経営の意識で最も大切なことはここかもしれません。フリーランスであっても、自分という会社を経営している意識はあるか。その意識が薄いと、自分の仕事に関する問題が生じたときに、強い問題意識を持つことができません。すべての責任は自分にあるという考え方で生きていく必要があります。

以上、『V字回復の経営』を引用しながらのご紹介でした。これをお読みのフリーランスの方が、ぼくのように「フリーランスに経営なんて関係ない」と思っていたら、今すぐに引き返してください。

ぼくが他の人より多少多いであろうフォロワーは偶然の産物です。これにすがっているようでは結果が出ないのは当然です。フォロワー数ばかり追いかけても成果にはならないかもしれません。それよりも優先すべきは、個人を会社として見立てたときに必要な「個人経営の意識」だと思います。フリーランスと言うとふわっとしたイメージが多いですが、これからは経営者として名乗って動いていきましょう。

自分は「経営者」として動くのだ。

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渡邉 淳/porpor(英語学習コンシェルジュ)

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