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【書評】『歴史としての社会主義』和田春樹

要約

ソビエト連邦崩壊後、新生ロシア連邦下のモスクワ・クレムリン情勢の分析からはじまり、ユートピア思想の起こりから社会主義の終わりまでを網羅的に解説した本

概要

社会主義思想の基盤としてのユートピア思想が十個弱紹介されており、そのうちの特に重要な数個は詳しく説明されています。予備知識の少ない読者でも分かりやすく読み解ける、比較的平易な印象でした。

欧州の社会主義の受容、ソ連邦成立の過程についても同様に、ユートピア思想と平行して丁寧に論じられていくため理解しやすいです。

流れとしては「マルクス主義→ソ連邦成立→レーニンからスターリンへ→第二次世界大戦→東欧の征服と抵抗→米ソの和解→ペレストロイカ→ソ連邦崩壊」という、至って教科書的なものですが、ペレストロイカ→ソ連邦崩壊までの記述については(著者の専門ということもあり)特に詳しくなされています。

感想

一章の「モスクワ1992年」のはじめでは、混乱した当時のモスクワの様子がエッセーのような文体で描かれます。高校の図書館でこの本を手に取った私は、闇市と化した市街や、撤去されたばかりの銅像の立派な台座、ドイツ語で書かれたオーストリアの建築会社の看板など、どこか哀愁を感じさせる描写に心を惹かれました。

そしてなんといっても、ユートピア思想をさらっと身に付けながらソ連史をおさらい出来ることがこの本の最大の魅力だと思います。ただ、本書のみでユートピア思想をすべて学べるわけでは無いのであくまでも入門書として読むのがおすすめです。

あとがき

noteでの投稿はこれが初めてなので、この量を書くだけでもかなりの時間がかかってしまいました。まぁやっていくうちに変わっていくだろうと思いますので進化(?)を見守ってくだされば嬉しいです。最後までご覧いただきありがとうございました。

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