見出し画像

ワーカーホリック 心酔する愚者 2章ー①

11月19日 8時00分
スマートフォンのアラーム音で起きる。
だがユリカは起き上がらず、下半身に手を伸ばす。

がりがりがりがりがり。
ユリカは今右手の伸びっ切ったジェルネイルの爪を見ながら、左手パンツの上から、下から上に掻きむしっていた。掻きむしるのに丁度良い。あぁ股が痒いって本当に面倒だ。17日の接客後に風呂場で小陰茎に白い出来物ができたから、また何かの性病だろうと思い、また病院に行かないと、その前に店に休みの連絡をいれないと。

でもそれは、あとででいい。

今日はカトウアイがミーティングで朝から出勤する日だ。
昨日下っ端ホストがうちの店にきたときに、アイさんが明日朝から緊急のミーティングなんで、ご飯に連れてってくれなかったんですって足でしごかれながらバカな顔して話していた。ホストの朝からのミーティングなんて、他の女との枕に決まっている。

ユリカは起き上がり、パジャマからスウェットに着替える。

ユリカのベットの横にはネットで買ったタンスの上、今まで、カトウアイに入れて来たシャンパンの空の瓶が並んでいた。
どれもデコレーションがされており、クラブでは高級なものだ。

どうせあいつに会ったところで、素直に結婚してくれる訳ない。いまは、捕まるわけにはいかない。
変装するにも服がないから、とりあえずパジャマがわりのスウェットにする。頭がボサボサだが帽子を被ればいい。メイクなんてマスクがあるからしなくて良い。
見てやりたい。どんな顔であいつは、あの封筒の中をみたのか。

ベットから立ち上がって5分で支度を終えたユリカは、そのまま出鞄を持って玄関に向かった。


8時20分、ユリカはタクシーでクラブキャロルの前に着いて、反対側の2階のカフェに向かった。ここのカフェは純喫茶だが、まずユリカのような嬢が利用するところではない。窓側の席がいいですとお爺さんの店員に伝え、窓の側の2人席に案内された。メニュー表があったが、すぐホットのカフェオレを頼んだ。どうせ飲めないのだから、適当で良い。
お水を飲み、窓からクラブキャロルをずっと見つめる。この位置は正面のエレベーターと裏口の扉が丁度見える角度なのだ。
スマートフォンを開き、店長にLINEをする。あとは客たちに返信をしていたところ、裏口の扉か2人入って行った。あの容姿からする社長と店長か。と思い裏口を凝視する。するとエレベーターに3人の男が入っていったようにみえたが、目で追えなかった。でもカトウアイじゃないから後回しだ。
9時になり裏口にタクシーが1台きた。
そこから2人降りてきた。ナインとシンだ。そして小走りでナインとシンに駆け寄る男がいた。コイツはタカだ。3人揃ったと同時に裏口に入っていった。
9時20分また裏口にタクシーが止まる。今度こそ、あいつに違いない。ユリカは息を飲むように見つめる。降りた瞬間すぐにわかった。カトウアイだ。カトウはいつも通り具合の悪そう顔て、裏口の扉に向かっていってしまった。

ユリカは震える手でスマートフォンであの人にメッセージを送る。カトウアイがお店に入りましたと。

あとは無我夢中で掲示板に投稿する。
どいつもこいつも、自分が1番と思っていて、本当に腹がたつ。ユリカは15分近く、ずっと画面から目を離さなかったた。

そんなユリカの状態のため、まさか同じ空間に佐藤がいるなんて気づかないだろう。一通りコメントして満足したのか、水を飲み干し、トイレに立った。佐藤は席を立つとユリカの席方向に小銭を落とす。そしてユリカの席に近づくと小銭を取るふりをして、ユリカのコートの裏側にシール型盗聴器兼発信機を貼り付ける。鞄を持って出ていく女は多いが、コートまでは持って席を立つ女はそんにいない。
佐藤はそのまま会計をし、お店を出る。佐藤は変装用にかけていたカメラ付きメガネの電源を切り、コートのポケットにしまった。
そろそろNがくるころかなと。スマートフォンの画面をみたところ、時間は9時45分を指していた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?