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ワーカーホリック 心酔する愚者⑩

「それで、いったい何があった?」
ビルの前から出発して5分、国道を運転する佐藤は、私に話しかける。私は助手席の窓に頭をよりかかりながら、国道沿いのお店を見眺めていた。私は姿勢を戻してSにこたえる。
「2個ある。1個はエレベーターでセクハラ、もう1個は梨本さんからのチップの入金」
「セクハラがめちゃくちゃ気になるけど、梨本さんの件から聞くわ」
佐藤はにやにやしながらきく。
「Sが・・・佐藤くんが先にビルから出た直後に、梨本さんから入金があったでしょう?私はスマートフォン操作する。わたしは13時25分に1000万の入金と書いてあった。
「おう、1000万の入金があった。」
佐藤は淡々と答えた。
Sと同額か・・・と思ったが、顔に出ないように話す。

 昨日のメールの内容ですでに、八戸橋議員のからの依頼料は8,000万円の確定していたことは把握していた。そこで今日決まったクラブキャロルから5,000万円あわせて1億3,000万円私たちの依頼はとなる。しかし、上へ上納と手数料と雑費、そして仲介料として警察庁に1,000万円支払うと、私たちの取り分は7,000万になる。そこから更に私とSで半々にするため、3500万ずつの報酬になる。
しかし梨本さんは、私たちの案件が5000万円を超える際、いつもチップをくださる。今回チップ各1000万円、合計2,000万頂いているので、今回の最終的な私たちの取り分は4500万になる。
ここに最短での処理が含まれると梨本さんからの追加のチップも貰える。
「それにしても、ずいぶんチップの金額が多いことで・・・お前、梨本さんから総額でいくらチップをもらっているんだよ」
わたしは内緒。と伝えた。
チップという表現をしているが、警察庁からお金だ。いや警察庁よりも国からの予算かからの支出に近いのか。
「だからクラブキャロルの割引をしたのか?でもあいつら、金ならもっているだろう?」
「持っているといっても、額面の話で貯金しているホストなんて少ないんじゃない?だって、頭からつま先まで、ハイブランドまみれじゃん。社長や店長もあの金額を見て驚いたってことは、貰うお金は慣れているけど、支払いは慣れていなさそうだし・・・。そもそも、私は民間人からお金をふんだくろうなんて思っていないわ。・・・搾り取るなら狙いは公職のみ」
「とんでもない女だな」
「今さら何を、そういえば、馬場ちゃんとこの前、目指せ国家予算の3分の1の年間報酬って話ししたっけ」
「それって、日本の?」
「いや、まずは小国から行こうか攻めようかって考えてる。アフリカあたりの」
「僕には理解できないよ・・・どんだけ働く気なんだよ。中毒かよ」
「ヤク中、アル中よりましでしょう。それにこの仕事は絶対稼げる。」
まぁそうだけどさ、と佐藤は呟いた。
信号が赤になり、でもさっと佐藤が話しはじめる。
「この1000万円のチップはお礼より脅しだよな。絶対に失敗するなよっていう。」
「まぁね、迂闊に使わないほうがいいよ。もし失敗したとき、あとでいくら請求されないか分からないし。私は失敗しないから、賠償金ですぐ消えちゃうけど」
「どこの女医の話だよ・・・賠償ってあといくらなの?」
「3億ぐらいじゃないかな?先月2億支払いが終わりましたってメールがきてた気がする。」
「気がするって、ちゃんと確認しろよ・・・」
「そうね、あとで明細みなきゃって・・・私の賠償は今はいいのよ。チップの件は、一発1億3000万円の案件になり、チップがもらえましたねってことを伝えたかったのよ」
「1億越えか・・・お前や馬場なんかは当たり前にこなしているんだろうな」
「そんなことないけどね?馬場ちゃんは週1で受けているんじゃないかな?わたしは半年ぶりの1億越えだよ。だから・・・心躍るわ」
わたしはニヤケながら、スマートフォンの画面を閉じる。
うわぁとした表情を佐藤がしていた。
「・・・まぁ、俺は貰えるもんは、すべて貰う。払うときは、払うだけさ。それで、セクハラは何があったの?あの精液ホストに襲われたんか?」




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