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私が始めたオンライン・ボランティア活動

 コロナ禍をきっかけに、新たに始めたことの二つ目に、オンライン日本語交流ボランティア活動がある。コロナ禍の流れで最近、始まったばかりのオンライン・ボランティア活動だが、毎回、とても刺激を受けている。日本に到着して二週間のホテル隔離期間中の技能実習生が、日本語や日本文化に慣れて、日本生活にソフトランディングできるようにすることを目標にした活動だ。オンラインだと、アメリカに住んでいながら、こうした人たちとも簡単にコミュニケーションをはかることができる。
 

 技能実習生と会話をすることで、彼らの母国だけでなく、同時に日本が抱える現状、さらには世界が抱える問題についても学べることに気づいた。アメリカに長く暮らす私には、外国人の目を通して日本の今を知ることの方が、実は親近感を抱く。私自身、アメリカに外国人として暮らしていて、いまだに疎外感を味わっているからかもしれない。
 

 アメリカに暮らしていると、移民問題はとても身近で、避けて通れない問題である。これまでは、米国の移民政策や外国人労働者問題、ビザの発給問題等に関心を持ってきた。しかし、日本に働きに来た人と直接、話をして交流を持つことで、日米両国の視点から複眼的にこうした問題についてとらえるようになった。メディアが流す限られた情報に惑わされず、直接、今の日本の外国人労働者問題に関わることができ、日本社会の将来像についても考えるきっかけを与えてくれる。日本の移民政策はアメリカとは全く違う形を採り、そして社会の中で徐々に受け入れられていくのではないか、そう思うようになった。だとしたら、どんな社会が築かれるべきだろうか、など考えたりする。
 

 そして、私が最近始めたオンライン英会話で、世界に散らばる講師に、このオンライン・ボランティア活動について説明すると、皆、熱心に耳を傾け、矢継ぎ早に多方面から質問され、意見を聞かれる。英米人講師でも東南アジアに暮らす人や、コロナ禍で東南アジアから出身地(英、米、カナダ他)に戻った人が多いのである。東南アジアに暮らし続ける人の多くは、現地の人と国際結婚をしている。なので、各国政府の移民政策、労働問題は切実な問題なのだ。
  

 日本語会話の勉強を意識しながら、技能実習生と交流をするという目的の他に、ボランティア同士の交流からも得ることは多い。経歴も皆、ばらばらで、さまざまな動機で活動に参加している。活動が始まってまだ数週間だが、すでに20名くらいボランティアが集まっている。技能実習生の出身国の言葉や文化、社会・政治・経済を学ぶ大学生や、技能実習生のことをテーマに卒業論文を書こうとしている学生もいる。実際に技能実習生を雇用し、現場で日々奮闘している経営者もいる。私は、日常生活で家族以外の日本人に会うことが、コロナ・パンデミック前からほとんどなかったが、今、アメリカに暮らしながら、これほどバックグランドが異なる日本人に沢山会えるのは、オンライン・ボランティアを始めたからである。日々の暮らしに彩を添えてくれる。
 

 外国語学習というのは、あくまで手段にすぎず、言葉を学ぶこと自体を目的にしてはいけない。それより、相手を尊重した上で、彼らが背負っている文化や経済等を理解し、共感して、自分の内に落とし込み、自分自身の立ち位置を振り返るのが、言葉を使ったコミュニケーションの目的なのではないか。オンライン英会話とオンライン日本語ボランティアを通して、そう思うようになった。

 

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