見出し画像

オンラインでの出会い① アメリカの黒人文化からアイデンティティへ広がりを持って


 コロナ禍以降、Stay Homeで家族以外の人と話すことが少なくなったため、刺激を求めて日系オンライン英会話を始めた。世界中の講師とフリートークをすることで、私は視野が広がり、精神的に自由になったと感じる。新しい出会いを見つけるために、何百人と登録されている講師のプロフィールや受講生の評価・コメントを読みあさり、まるで人事採用をしているかのようだ。


 ある日の講師は私と同世代で、メキシコのアメリカン・スクールで高校歴史と実業教育を担当するアメリカの黒人女性だった。メキシコの前は、中東や東南アジア、東アジアのインターナショナルスクールで教師をしていたそうだ。

「この通り、私は黒人でしょ。」

 大っぴらにそう言う人はなかなかいない。アメリカの小学校や中学校の英語授業では毎年、アフリカン・アメリカンが主人公の小説を読む。そうした小説を通し、このアメリカで一緒に生きるアフリカン・アメリカンのリアルな生きざまについて知りたいし、理解したいと思うようになった。でも、なかなかハードルが高い。お互いの信頼関係と心に余裕がないとダメだ。そもそも微妙な問題なので、これまでどう話を切り出していいかわからなかった。腹の探り合いが永遠に続いてしまう。

 が、その微妙な問題に切り込む突破口が、意外なところにあった。アメリカで生まれ育った娘のアイデンティティをめぐる葛藤について話が及んだことがきっかけだ。オンライン英会話中、これまでも娘のアイデンティティについて話す機会はあったが、なかなかしっくり来る反応を得られなかった。しかし、彼女の反応はこれまでの講師(英米の白人講師)と違った。彼女はアメリカ南部で生まれ、その後、転々としながら、北部に引っ越していった。一般に南部より北部の方が、白人居住率が高くなる。そして高校では、全校生徒2000名のうち黒人がたった20名しかいない環境だったと言う。そのプレッシャー他は相当なもので、卒業後、黒人系アメリカ人の教育を主目的とする大学に進学し、初めてそこで自分は何者なのかを考え、アイデンティティを見出し、自信を持つことができたそうだ。

 翻って、「娘さんは、日本人の両親の元、日本の家庭で育ち、でも、アメリカ人の友達に囲まれ、アメリカの教育を受け続けてきたのでしょ。そこで感じる疎外感や違和感は相当なものだと思うわ。」と言われた。自分に自信を持ち、存在意義を見出すために、日本で暮らし、学ぶことは大切な時間になるはずだと言ってくれた。

 これまで、アメリカ黒人と娘のアイデンティティについて、結び付けて考えたことはなかったが、彼女の話を聞いて、すとんと納得が行き、もやもやした心の霧が晴れた気がした。個人の生い立ちから相対化し、意見やアドバイスをすかさず言える彼女は、マイノリティとして社会で相当、鍛えられて来たのだろう。これまでアメリカで生きてきた経験と、インターナショナルスクールで接してきた生徒の多様性などが、そう言わせたのかもしれない。アフリカン・アメリカンをはじめ、今後、民族・人種的マイノリティの問題について考える際の大切なヒントをもらった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?