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映画感想『土を喰らう十二ヵ月』

この映画で一番好きな場面は主演の沢田研二が義母を家の外から呼ぶところ。
通常の場面では、年相応の老いた男性の声そのものなのだが、

「ちえさん、ツトムです」

そう呼びかける時だけ、若々しい歌手の声になる。
その瞬間、沢田研二が現れるのである。
淡々と進む映画にあって、存在を感じさせる瞬間である。

劇中の料理担当は土井善晴。
どれも美味しそうだが、開巻一番で登場の小芋を焼いたのを食べたい。

料理に加えて、調理道具にも目が行く。
憧れの羽釜とおひつ、漬物石、すり鉢、水場。
料理をしたくなる。

細部細部で心に残るところはあるが、これで生活できているというのがどうにも嘘っぽいというか。
土地に根ざして生きているようでいて、ファンタジーのようでいて、話全体としては頭に入ってこない。
それだけが残念。

2024/3/11

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