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勉強会vol.1 『稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則』|木下斉著

第一回の課題図書は『稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則 』(木下斉著、2015)でした。初、ということもあって、今後の進め方も探る記念すべき会合。民間4人、市職員6人の計10人が参加して、ガチトークを繰り広げました。


ざっくりとレポーターの気づき!

木下さんといえば、まちづくり研究家として第一線で自ら事業にかかわり、著書もたくさん出てますので、特に「公民連携」界隈で知らない人はいないはず。

今回の課題図書は2015年初版でもう8年前!の内容ですが、読み進めると世の中ほとんど変わっておらず、むしろ想定より悪化していると感じました。気づけば付箋だらで付箋の意味がなくなってしまう悲劇。。レポーターの気付きとして端的にポイントをまとめてみます。

まず大部分の人が、「まちづくりは行政がやるもの」と思い込んでいますし、確かに公共を司る行政が「まちづくり」に関与するのは当然です。しかし、この本は、行政主導のまちづくりを痛烈に批判し限界を指摘しています。

もちろん行政は市民サービスの中核を担っています。ただし行政がやることは儲からないことです。儲からないけど、市民のために必要だから、税金を活用して行政サービスを運営しているわけです。例えば、住民票の発行とか、道路とか橋とか、介護など福祉サービスとか、身近なものを想像してみるとよいかと思います。

一方、今後地域間競争が増していく中で、地方のまちづくりが目指さねばならないのは、まちが儲かることです。税収がなければ行政サービスは運営できません。

ここで一つ大きなポイントは、儲からない仕事を生業とする行政は、儲かるためのまちづくりが苦手、という前提です。だから毎年、形式さえ整えば儲からないことに多額の税金が泡と消えます。なぜか。

民間と異なり、行政は人々の税金で運営されている団体です。つまり国民、市民が出資者と言っても過言ではありません。だからこそなるべく「みんな」にとって公平に平等に物事を進めなければ、やんやと突っ込まれます。それゆえに、リスクヘッジの形式が重要で、限られた人で運営する民間ほどには新しいことに挑戦しづらい環境が生まれやすいのです。

他方、「人モノ金」が都市部に吸収され、地方経済は危機に瀕しています。民間も従来のやり方では生き残れなくなっている。だから儲からないのは「行政のせいだ」と言いたくなる気持ちもわかります。

それに追い討ちをかけたのが補助金です。大して持続しない事業に「地域活性化」という大義名分のもと多額の補助が費やされています。本来SDGsにある通り、持続可能な社会は補助金ありきでは成り立ちません。この「支援」としての補助金が麻薬のように地方社会の体力を奪ってきました。一つの店や事業を継続して運営することの方がどれほど尊いことか。

では、行政、民間双方はどのように動くべきなのか?行政は儲かることは苦手ですが、先にあげた道路はては都市計画、福祉サービスにせよ、やはり市民生活の中核を担っているのです。仮に補助を出すにしても、そこには経営的な視点が何より重要だと説かれます。

そして民間もただ単に己の利益の最大化を目指しているだけでは、根本的にまちの価値が高まらない難局にぶち当たっています。特に不動産オーナーの存在は重要です。うまくいっている世界各地の地域では、民間不動産オーナーが公共のために再投資する事例も示されています。日本でいえば、近江商人の「三方よし」の精神でしょうか。

つまりこの本の最後にある通り、「これからの時代には『民間には高い公共意識』、『行政には高い経営意識』が求められている」ということに尽きます。双方相反する分野ではありますが、互いに学び合わなければ理想とする「まちづくり」は達成されません。まさしくこの勉強会の1回目にふさわしい課題図書でした。

以下、当日のプレゼンを務めた本間さんの資料にあったポイントを貼付します。

内容を解説する本間さん

重要なポイント(1) 序章・一章

  • そもそも稼がないと地方は終わる。本当に終わる!

  • 縮小社会→税の再配分でなく、限られた資源で「まち全体の利益」を生み再投資する”経営視点”=「まちを一つの会社に見立てて経営する」

  • 不動産オーナーは当事者意識を持って資産価値最大化を行え!

  • そもそも「まちづくりは自分たちのアセットマネジメント」

  • 不動産オーナーの公共意識の低さ/まちの公然猥褻→当事者意識

  • お金より覚悟!100人の合意より1人の覚悟

  • 言い訳をせず、できることをやる、やるかやらないか

重要なポイント(2)二章 10の鉄則

①小さく始めよ

やろうと決めた人は粛々と良い店を作り・・・「変化の核」をつくる
ターゲットを絞る:自分の生活に足らなかったものと思わせる
一つの場が10揃えるより1に特化した場が10ある方が:ユニークなものの多数集積を

②補助金をあてにするな

活性化とは事業を通じて経済を動かしまちに新たに利益を生み出すこと
大変だから創意工夫・知恵が出る
身の丈にあった事業を徹底すべき

③「一蓮托生」のパートナーを見つけよう

裏切らない仲間

④全員の合意は必要ない

必要なのは一緒にリアカーを引く”覚悟を持った”同士を集めよ

重要なポイント(3)二章 10の鉄則

⑤「先回り営業」で確実に回収

履いて欲しい人を探し、その人の足の形に合わせてつくる

⑥利益率にとことんこだわれ

まちとしての生産性をあげる
ファシリティマネジメント型(コスト削減)
設備投資型:高粗利業態を集積:カフェ・英会話・ヨガ・製造小売

⑦「稼ぎ」を流出させるな

地元資本→販売→消費→利益→再投資 ※複利

⑧「撤退ライン」は最初に決めておけ

3ヶ月ごとの点検→1年で4回挑戦/二、三年で回収

⑨最初から専従者を雇うな

⑩お金のルールは厳格に

0→1→100までは自己資金で

重要なポイント(4)三章 公民連携で「稼ぐインフラ」をつくる!

  • 公民連携は自立した「民」が小さくてもしっかり利益を出す事業を立ち上げ、それを続け、数を少しずつ増やし、周囲に波及させていく

  • 官と民で「公」をよくしていくという発想

  • 「いかに行政からお金を引っ張るか」→「いかに行政にお金を払えるか」

  • 縮小する社会で、官民で共に「公共」を守っていく構想

  • 行政の役割は”お金ではなく”「民間のやりたい」を「やれる」に変えるための地域の稼ぐ努力のサポート

  • 行政の初期投資なく公共施設を建設

  • 「消費を目的にしない」普遍的集客装置

  • 民間開発で規模を適正化→逆算開発→成立しない事業は実行できない→知恵が出る!

  • ピンホールマーケティング(EX.オガールのバレーボール専用体育館)

ディスカッション

内容解説のあとで、以下のような項目をテーマにディスカッションを行いました。

  • 「まちを一つの会社として経営する」ために、民間企業・行政・市民はそれぞれ又はお互いにどのような行動をすれば良いと思うか?

  • 行政の存在意義って?

  • 行政のそれぞれの課がなくなったら街は機能しなくなる?

  • ビジョンがあって民間が動ければ職員は最低限で良いのでは?

  • 不動産オーナーが共同してまちづくりできるの?

  • 自分自身はどのようなことができそうか?

  • 補助金は使い方次第ではないか?

いやはや2時間ほどの第一回勉強会でしたが、どの問いも着地せず、若干尻切れトンボで終わってしまいました・・・。とにかく「まちづくり」の内容は広範で、理解するのは至難の業です。だからこそ本気で学ぶ場が必要だ!そう確信した1日でした。

次回は、再度木下さんの著作『まちづくり幻想』(2021/SB新書)を取り上げ、また違った観点から真相に迫ってみたいと思います。

メンバーの皆さんは、課題図書のレコメンをお忘れなきようw

レポーター:ひがし


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