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令和5年度京都大学法学部3年次編入試験合格体験記 ~運良く、排出率10%の"学歴ガチャ"を引き当てた話~


はじめまして、吟醸《ぎんじょう》と申します。私のnoteをご覧いただきありがとうございます。

このたび、令和5年度 京都大学法学部3年次編入試験に合格しました。私のTwitterをフォローしてくださっている編入受験生のみなさんから「合格体験記を書いてください!」との熱い要望を数多くいただいたので、私なりにその期待にこたえようと書いてみた次第です。


まず、このことから話しておきましょう。

私は「すごい人」ではありません。

私は、その辺に居るような、どうしようもないただの学歴コンプです。正確に言うなら、ほんのちょっとだけ運が良くて、"精神的に向上心" があった学歴コンプです。まあ、とにかく大した人間じゃないってことです。

合格後から現在に至るまで、「京大法学部3年次編入試験に合格するような人なんだから、きっとすごい人に違いない!」という謎の偏見にさらされることが何回かあったのですが、決してそんなことはありません。きっと、「すごい人」は大学受験時に現役で京大に苦労なく合格されていると思います。

私は、浪人を続ける勇気すらなかったくせに学歴コンプをこじらせ、優秀な中高同期たちに引け目を感じ、素直に自らの能力の低さを認めることもできず、挙句の果てに、一般的な大学生が青春を謳歌するはずの時期にわざわざ好き好んで実を結ぶ可能性の極めて低い勉強をし続けていた、ただの変人です。そんな人間が、紆余曲折を経て京都大学法学部3年次編入試験に合格した話をこれからはじめようと思います。稚拙な文章だとは思いますが、どうぞ最後までお付き合いください。

私のこの合格体験記が、少しでも読者のみなさんの参考になったり、新たな一歩を踏み出すための自信につながったりすれば幸いです。



1.自己紹介

はじめに軽く自己紹介をしておこうと思います。
私は、東海圏で中堅レベルの私立中高一貫校を卒業したのち、浪人期を1年経て、三重大学人文学部法律経済学科に進学しました。そして、2年間三重大学で「臥薪嘗胆」をした後、このたび京大法に編入学した者です。


2.編入試験とは

さて、さっそくですが、「そもそも編入試験とは何か」から簡単に説明しようと思います。編入試験とは、読んで字のごとく他大学に編入するための試験なのですが、一般的な大学受験とは様相がかなり異なります。私が受験した京大法学部の3年次編入試験は、英語資格であるTOEFLiBTのスコアと出身大学での成績を加味した総合点、それに加え、試験日に大学で受験した法学や社会科学に関する小論文試験の点数の合計点で合否が決まるものでした。

詳しくは、以下にリンクを貼り付けている京都大学法学部のホームページをご覧ください。
↓リンク

また、京都大学では、経済学部や教育学部でも編入試験を行っているようなので、気になる方は別途調べてみてください。


3.編入試験を受験するまでの経緯

ここからはしばらく冗長な私の回顧録となりますので、編入試験についての具体的な情報だけを知りたい方は、目次から「6.TOEFLiBT対策、小論文対策について」にジャンプしてください。


・医学部浪人の挫折、優秀な高校同期

さて、話は私の高校時代にまでさかのぼります。私はもともと高校時代は理系で、医師を夢見て国立医進学を目指すガリ勉でした。私たちの学年の数学の授業を中学高校と6年間通して受け持ってくださった先生に人気があったからなのか、私の学年の理系には、例年になく女子生徒が多く在籍していました。その中には、通称「神セブン」と呼ばれる(理系男子の一部で勝手にそう呼んでいた)、成績超優秀かつ容姿端麗な無敵の女子が7人おり、定期テストでは常に学年理系トップを固めるなどして、学年の理系勢力を席捲していました。

一方、成績・容姿ともにさえない私たち理系男子は、事あるたびに先生方から優秀な彼女たちと比較されては、自分たちの実力の無さを日々突き付けられていました。私はこれでも当時、学年の理系男子のトップ層として勉学に励んでいたのですが、学年主任のおじさまからは、「ボクぅ~、お医者さんになるんでしょ~っ? 」(ガチでこうおちょくられたので、さすがに腹が立った)、「女に負けて悔しくはないのか!」などと、度々呼び出されては圧力をかけられていました。いま思い返せば、このような高校生活を過ごしてきたがために、彼女らに対する "化け物みたいな劣等感" とでも形容すべき負の感情を、知らず知らずのうちに先生方から刷り込まれていたのだと思います。

私なりに努力はしましたが、残念ながら、共通テスト移行前の最後のセンター試験で、理系正答率71%という、医学部志望だとは口が裂けても言えないレベルの低スコアを叩き出し、瞬時に一浪することが確定してしまいました。国立医学部に特攻することさえ全力で担任に止められ華々しく散ることすらできなかった私は、母校へのせめてものご奉公として、母校の合格実績のために前期に三重大学の生物資源学部、中期に都留文科大学の教養学部を受験して無事合格し、もちろんどちらにも入学はせず浪人生活を開始しました。

(ちなみに、中期で受験した都留文科大学の受験科目に小論文試験があったので、当時の受験対策がある程度今回の編入試験の法学・社会科学系小論文にも良い影響をもたらしたのではないかと思っています。)

浪人生活を開始したわけですが、ちょうどコロナが流行し始めた時期で予備校に通うことすらはばかられたため、浪人期の8月までは宅浪生活を送っていました。この時期に、家族以外の者とまともに関わることなく独りで黙々と勉強を続ける生活を半年弱続けていたため、この経験が生きて編入試験の学習も自分のペースで黙々と進めることができたのだと思います。夏休み以降からは河合塾に通いました。

一浪後も結局、共通テスト正答率77%という相変わらずの低スコアを叩き出した私は、香川大の医学部に特攻して二浪をキメる勇気すらなかったため、またもや華々しく散ることに失敗しました。医学部以外の理系に興味がなかったため、理系の共通テスト科目でも受験することができる近隣の国公立大の文系学部を探しました。奇しくもその条件に合った大学が三重大学だったため、人文学部法律経済学科に入学しました。正直言うとここは、現役時代の学力でもA判定がとれたレベルだったため、「私のこの1年はなんだったのか」と入学後もひどく落ち込みました。

ちなみに、私たち理系男子トップ層が先生方から比較され続けたあの「神セブン」たちは、輝かしい戦績(名市大医、岐阜医×2、富山医、京都大[非医]、名古屋大[非医]×2)を残して現役で大学生になっており、しかも彼女らの多くが医学生になっていたことを知ってしまったため、おかげさまで重症の学歴コンプレックスを患うことになりました。


・司法試験予備試験短答式、大差落ち

三重大学の法律経済学科に行き着いてしまった私は、学歴コンプを開き直って部活動やサークル活動に打ち込めるような質でもありませんでした。

「結局、あの "神セブン" に勝てなかった。」

高校時代、散々彼女らと比較され続けてきたがために、そのことが、その一点だけが、あまりにも悔しく、自分が情けなかったのです。ほとんどが医療従事者としてキラキラと働くであろう彼女らの数年後の姿を勝手に妄想しては、幾度となくとてつもない希死念慮に襲われていました。かといって、さらに浪数を重ねてまで医学部再受験に取り組む気力は当時の私にはもう残っていませんでした。

私は考えていました。小っちゃい脳みそで、懸命に考えていました。大学が始まる前の3月から、「文系として成り上がるためにはどうすればいいか、この学歴コンプレックスを克服するためにはどうすればいいか」だけを、ただただ必死に考え続けていました。

文系、地方国立大、無資格、コミュ障。

当時この全ての条件に合致していた私が、数年後にこのまま就活をしても悲惨な結末が待っていることくらいは、かろうじて私の頭でもわかりました。そこで私は、苦肉の策として資格を取ろうと思いました。法律経済学科に来たのだからせっかくなら法曹になろうと決意し、バイト代をかき集め、親のお金を拝借してまで、伊藤塾という司法試験対策予備校に飛び込みました。

それからは、大学の講義の課題や定期試験をこなすのはもちろんのこと、司法試験予備試験の対策に集中していました。大学生らしいとはお世辞にも言えないような、浪人期並みの生活を1年以上続けました。しかし、残念ながら現実はそう甘いものではなく、司法試験の受験資格を得るための試験である予備試験の、その1次試験である予備試験短答式試験に、合格最低点から40点以上の差をつけて落ちました。


この時点で、大学2年の6月でした。


4.編入試験との出会い、軽率な受験動機

いよいよ行き詰まった私は、ふと、大学1年のときに仲良くなった友人が編入試験について話していたことを思い出しました。彼女も少々学歴コンプレックスを抱えていたようで、他大学に法学編入をするために勉強をしていると言っていました。私は自身が重症の学歴コンプレックスを患っていることを彼女に打ち明けていたため、編入を目指してみないかと、大学1年当時に誘ってくれていたのでした。

学歴コンプレックスを患っているものの、司法試験に合格すればそのコンプレックスはある程度緩和されるのではないかと大1当時の私は考えていたため、結局彼女からの誘いを適当に受け流し、編入試験よりも資格取得を優先させていたのですが、予備試験に不合格となった大2の6月の私にとって、編入試験は最後の希望のように思えてきました。

編入試験について調べていくうちに、京都大学の法学部に3年次編入試験があることを知りました。京都大学です。神セブンの1人が現役で進学していった、あの京都大学です。医学生になっていった彼女たちには勝てずとも、京大法に合格すれば、学部の差こそあれ、京大生という同等の地位に上り詰めることができる。京大法に合格すれば、名大に進学していった彼女たちには学歴として勝てる――。

学歴コンプレックスを克服するための最後のチャンスだと思いました。

"そうだ 京都、行こう。"

これが、最終的に私が出した結論です。


5.編入試験に向けて、始動

大学2年の7月、ようやく私は編入試験を受験するための覚悟を決め、情報を集め始めました。予備校を過信し、校舎に通い、講義を受けるだけで「勉強をやった気」になってしまう、予備校特有の落とし穴にまんまとハマっていた医学部浪人時代の苦い過去があったので、編入試験においても同様の失敗を繰り返すことになりそうで怖かったのですが、試験までにもう期間がなく、効率的に編入試験対策をやりたかったため、ECC編入学院という編入試験の予備校に入塾しました。

私が入塾しようとした時点で、予備校の対面講義はもう仕上げの時期に入っていたため、対面講義ではなく、自分のペースで学習を進めることができそうなWeb講義を受講しました。オンラインで提供される動画講義を、自身のスマホやパソコンで視聴しながら購入した教材を進めていく形態だったのですが、動画講義内で与えられた小論文課題の添削については、最寄りの校舎の先生に面倒を見てもらっていたため、とくに不自由なく学習を進めることができました。

予備校に入塾したものの、実は、しばらく小論文対策は完全に放置しており、まずはTOEFLiBT対策のために市販の問題集を購入し、特に予備校のお世話になることなく自力で学習していました。大学2年の前期の試験対策に追われることもあったため、7月は、小論文対策はほとんどできませんでした。

大学2年の9月、中高同期の同窓会が私の自宅から徒歩圏内で開催されました。もちろん出席できるはずがありません。高校時代から医学部に行くと豪語し続け、浪人した挙句、現在三重大学の人文学部に在籍している私が、中高同期たちに合わせる顔なんてありませんでした。Instagramから同期たちの楽しそうな様子がドバドバ流れてきました。それでも病みながら勉強を続けました。

最初に受験したTOEFLiBTが63点というなかなかの低スコアだったのですが、時間もお金もなかったため、TOEFLiBTについては早々に見切りをつけ、大学2年の8,9,10月は、ただひたすらに黙々と小論文の答案作成に取り組んでいました。

で、このまま勉強を続けていたら京法編入試験に合格することができました。嗚呼、なんとまあ奇跡は起こるもんだなあと。めでたしめでたし。

さすがにはしょりすぎた気はしますが、受験後の私のことは読者の皆様にとってはさして興味のないことだと思いますので割愛します。


次の章からは、具体的な京大法編入試験対策についてお話ししていこうと思います。また、7章以降で「小論文試験の闇」についてお話しします。


6.TOEFLiBT 対策、小論文対策について


・TOEFLiBT の対策

TOEFLiBT対策のために市販の問題集を購入したと先ほど書きましたが、具体的には、旺文社から出版されていた、TOEFL®テスト大戦略シリーズを購入しました。そして、そのうちの、
・「はじめてのTOEFL®テスト完全対策」と、
・「TOEFLiBT® テスト本番模試」
を使用しました。

はじめに「はじめてのTOEFL®テスト完全対策」でTOEFLiBTテストの全容を把握し、次に、練習を重ねるために「TOEFLiBT® テスト本番模試」を使用しました。これらだけである程度の対策はできると思います。リーディングの問題形式や解答時間の感覚を掴むこともできましたし、付属のリスニングの音源もインターネット上で聞くことができました。ライティングの書き方もある程度理解することができました。

追加で、リスニング対策として「english.best」というサイトを使用しました。このサイトでは、無料でTOEFLのリスニングの練習ができました。音源に言い間違いが存在することもごくまれにありましたが、耳を英語に慣れさせるにはとてもよい教材でした。下にリンクを貼りつけておきます。

帰国子女でもない限り、一番の問題はきっとスピーキング対策だと思うのですが、この対策にはかなり苦労しました。高校1年次に英検2級を取得したきり、スピーキングが求められる英語の試験を受けたことがなかったため、「はじめてのTOEFL®テスト完全対策」でスピーキングの問題にはじめて取り組んだときは、全くと言っていいほど話せませんでした。

スピーキング対策で迷っている方は、ひとまず、YouTubeなどで
「TOEFLiBT スピーキング」
と検索してみてください。色々な先生方が様々な情報を発信しているのが見つかると思います。自分に合う方法を探してみてください。

ちなみに私は、スピーキングの解答として不自然ではなさそうな汎用性の高い英語の文章をある程度「テンプレート化」して準備しておき、それを事前に頭に叩き込み、問われた質問に合わせて解答する手法を採用しました。


・TOEFLiBTの受験戦略について

そもそもTOEFLは海外留学を志す学生の英語力を確認するための試験なので、英検やTOEICなどとは少し出題のされ方が異なります。TOEFLの試験では、かなり実用的でアカデミックな内容が問われます。例えばリスニングにおいて、生物学や歴史学に関する英語での講義を聞き取ることを要求されます。大学受験英語や英検、TOEICなどとは少し問われる角度が異なるため、いままで読者のみなさんが培ってきた英語力が通用しない場合も往々にしてあります。自分はこれから未知の試験に挑むのだ!と気を引き締めて受験してください。くれぐれも大学受験英語の惰性で取り組まないようにしてほしいです。

戦略と表現するのは少々誇張しすぎかもしれませんが、私がTOEFLiBTテストに取り組んだときの戦略というか、方針のようなものを以下でお伝えします。

京大法学部3年次編入試験では、出身大学での成績やTOEFLiBTのスコアなどの提出書類と、小論文試験の得点を総合的に判断されて合否が決まります。しかし、やはりメインは小論文試験であるため、TOEFLiBTに対してあまり時間をかけてはいられないというのが実情です。なるべく早めにそれなりのスコアをとって、その後は小論文試験対策に集中することが重要です。

そこで、私が提唱するのが、

・戦略①「TOEFLiBTは3週間で決着をつける」です。

決して無茶を言っているつもりはありません。3週間、TOEFLiBT対策以外は何も勉強しない期間をつくってください。法学の勉強が心配になるかもしれませんが、勇気をもってTOEFLiBTだけに集中してください。とにかくTOEFLiBT対策だけをやり続けるんです。

なぜこのような手法をおすすめするのかというと、一定期間英語漬けにすることで、試験本番直前に帰国子女状態を疑似的に作り出すことができるからです。つまり、頭を"英語脳"に切り替えることができるからです。

自身の頭を帰国子女状態にしておくことで、スピーキングセクションで切羽詰まった時に、なぜかぽろっと頭の片隅にあった英語で、解答を反射的に口に出すことができるようになったり、読解の速度・精度が向上したりします。

一応言っておきますが、英語が強い方は3週間も必要ないかもしれません。英語漬けにする期間は各自の能力に合わせて調節してみてください。


・戦略②「勉強はなるべくパソコンで」です。

TOEFLiBTテストはパソコンを使用した試験であるため、画面に表示された英長文の読解に慣れることや、タイピングの練習をする必要があります。目が疲れてしまうかもしれませんが、紙媒体ではなく、なるべくパソコンを使って勉強するようにしてください。

とくに、ライティング対策として、自分の持っているパソコンで時間内に規定単語数程度の文章をタイピングで作成する練習をしてみてください。手書きではなくタイピングであるため、意図せず単語のつづりを間違えてしまっていたことも私は何回もありました。タイプミスによる情けない失点を防ぐためにも、ライティングは最初から、つづり補正機能のない「メモ帳」などで作成するなどして、練習をすることをおすすめします。


・戦略③「Home Edition も考えてみては?」です。

もはやこれは戦略と言うよりただの提案になってしまうのですが、京都大学法学部3年次編入試験で提出しなければならないTOEFLiBTスコアは、令和5年度入試現在、Home Edition で取得したスコアでも認めてもらえるようです。Home Edition とは、TOEFLiBTテストを、自宅で、しかも慣れ親しんだ自分のパソコンで受験することができる制度です。

私は、公開会場での受験を一度経験しただけで Home Edition を受験したことがないため、Home Edition の経験談を語ることはできないのですが、公開会場での劣悪な受験環境を考えれば、試してみる価値はあると思います。

狭い雑居ビルの一室にパソコンがずらっと並べられている部屋があり、そこが試験会場だったのですが、公開会場試験のなにが劣悪だったかというと、とにかく試験に集中ができないような状況での受験を強いられたことです。

公開会場での試験は、試験開始時間が "ある程度" 事前に決められています。しかし、強調した通り、"ある程度" なので、会場に到着した受験生から試験を始めさせられる形態でした。私が入室した時には、何人かの受験生が既に試験を開始しているようでしたし、私が試験を始めてからも、続々と狭い試験会場に受験生がやってくるのです。最初のリーディングセクションでは、周りでごちゃごちゃとうごめいている他の受験生や試験監督者によって集中できませんでした。

次のリスニングセクションを取り組んでいるときには、後半で、私より先に試験を始めていた受験生のスピーキングがはじまり、しかもそれがかなりの声量で狭い部屋全体に響き渡るので、集中力が途切れてしまい、リスニングどころではなかったです。

次のスピーキングセクションでは、「私のこの声も、まだリスニングをしている他の受験生の妨害になっているのだろうな…」と、申し訳ない気持ちになりながらも、スコアを得るために、一生懸命取り組みました。とくに、気が散ることはありませんでした。

最後のライティングセクションは、これはこれでかなり集中力が削がれるものでした。私より早く試験を始めて、既に受験を終えた受験生たちが、ぞろぞろと退出し始めるのです。退出を指示したり、試験が終了した受験生が使用していたパソコンの画面を操作しにいったりするなどして、試験監督員もバタバタと狭い部屋で動き回っていました。しかも、私より遅く試験を開始していた受験生は、いまだに、なかなかの声量でスピーキングセクションの解答に取り組んでいました。ライティングセクションが一番集中力を削がれたと言っても過言ではありません。

以上のように、少なくとも私が受験したTOEFLiBTの公開会場での試験は、正直、かなり劣悪なものでした。


・戦略④「TOEFLは何回も受けるな」です。

TOEFLiBTの受験料は非常に高額です。また、試験時間も長く、パソコンに向かって黙々とおこなう試験形態であるせいで、ペーパーテストに慣れている一般的な編入受験生にとっては、なかなかの苦行だと思います。経済力、体力、精神力の全てが人一倍ある方は別として、複数回受験することはあまりおすすめしません。できる限り一発で決めてください。


・京法編入の配点について

先ほど、TOEFLiBT試験は「できる限り一発で決めてください」と申し上げましたが、だからといって、一発で高得点をとらなければならないというわけでもありません

なぜそう言えるのか?それは、令和3,4年度入試時点での情報ですが、京都大学法学部3年次編入試験での点数開示資料から推測される配点を考えれば、一目瞭然だからです。

私が京法編入の受験生だった頃、京都大学法学部3年次編入試験に合格されたある先輩が、Twitter上で点数開示書類を公開していたことがありました。

それによると、

・小論文試験の配点が200点 [2問 各100点]
・提出資料(TOEFLiBTスコアを含む)による総合点 [10~15点程度]

であることがわかりました。ちなみに、「提出資料による総合点」については明確な配点が点数開示書類には記載されておらず、私が受験生時代に数名の京大法3年次編入試験の合格者の先輩方からそれぞれ見せていただいた点数開示書類に記載されていた「提出資料による総合点」の得点から推測した点数であるため、少し信憑性に欠けるかもしれません。

信憑性を高めるために、もう少し配点についての情報を提供します。以下は、私が受験したときの成績開示資料です。

R5京法編入次席合格の合否判定資料

上記の通り、第1問と第2問の小論文2つが各100点で、私は第1問が64点、第2問60点でした。だいたいの目安としては、各小論文で6割をそろえられれば合格が見えて来ます。そして、出身大学の成績とTOEFLiBTの成績を合わせた総合点が私は7.04点でしたので、この総合点の配点はおよそ10点程度だと推測できると思います。

小論文が200点、TOEFLiBT&出身大学の成績が10点だとすると、小論文に対するTOEFLiBTの配点比重は1/20より小さくなります。

この配点を見れば、TOEFLiBTで高得点を取得せずとも、京大法編入試験で戦えることがお分かりいただけるのではないでしょうか?見ての通り、たとえTOEFLiBTの成績や出身大学での成績があまり良いものではなくとも、小論文試験で巻き返すことが可能なのです。

恥ずかしながら、前述の通り私はTOEFLiBTスコアは63点で提出しました。令和4年度入試では、TOEFLiBTスコアが50点台で合格されている先輩もいらっしゃるようです。よって、あくまでも私見にはなりますが、TOEFLiBTスコアは、せいぜい65程度あれば十分だと考えます。

その一方、インターネットで調べる限り、世間では京都大学法学部3年次編入試験のTOEFLiBTスコアのボーダーは、75~80などと言われているようです。予備校からもそのように言われました。また、今年私と同期で京都大学法学部3年次編入試験に合格された方は、TOEFLiBTで80という高スコアを叩き出していたようなので、残念ながら、異次元の英語無双受験生が一定数存在することもまた事実です。

余談ですが、令和6年度から京法編入試験において、成績開示書類の形式が変わってしまい、小論文の配点を明示しなくなりました。私がこのnoteで配点について露骨に暴露してしまったせいかは定かではありませんが、たとえ明示せずとも、今年の私の教え子の合格状況を鑑みるに、配点については今まで通り同じ比率で評価されている感じがしますので「配点比率が変わったのではないか?!」などと、必要以上に警戒する必要はないと考えます。

もう1つ余談ですが、R5年度京大法編入試験においては、2位で合格した私の合計点と6位で残念ながら不合格となった方の合計点との点差は僅か3.2点でした。また、出身大学の成績とTOEFLiBTを合わせた総合点については、6位の方のほうが私より1点以上高かったことが判明しています。

これらのことからも、京法編入試験攻略のカギは法学・社会科学系の小論文だと言えますので、TOEFLiBT対策はほどほどに、小論文対策に注力して合格を勝ち取りに行きましょう!


・小論文試験の対策について

私は、前述の通りECC編入学院という、大学編入に特化した予備校に通っていました。試験までに期間がなかった私は、小論文試験の論述対策としては、ほぼ、予備校の動画講義とテキスト、過去問にしか手を付けていません。それで合格することができたので、テキストさえ完璧にできていれば(完璧にすることが難しいのだが)十分だと思います。なので、潤沢に軍資金がある方に対しては、予備校への入塾を強くすすめます。

編入勉強の独学は結構危険です。編入関連の情報はネットで探してもあまりありませんし、むやみに本を読んで、法学・社会科学関連の知識を得たとしても、その知識を試験本番の小論文に、実践的に使えるものにするにはかなりの労力が必要です。もっと言うと、そもそも、何か基本書を通読したくらいで知識が定着することなどなかなかない気がします。

私がただ、本から知識を吸収することが非常に苦手な人間であるがために偏向的な主張をしているだけ、という可能性も十分にあるとは思うのですが、あえて申し上げると、編入試験対策としてこむずかしい本を読んだとしても、せいぜい自己満足と達成感しか得られないのではないでしょうか?

こむずかしい本を片っ端から読破したりしなくても、インプットの大部分は予備校の講義に委ねた方が効率的だと思いますし、ほとんどは予備校の講義で網羅されています。ちなみに私は、末川博先生の『法学入門』ですら、2,30ページめくってどうにも眠たくなったので、読むのを途中で放棄しました…笑

直接的に小論文対策となるかどうかは正直微妙ですが、ここからは4点だけ、予備校の講義やテキスト以外で、私なりに小論文試験のために勉強したことについて紹介しようと思います。


①時事知識の収集

小論文試験において、自身の論理に説得力を持たせるための具体例として取り上げるために、実際にあった事件や出来事などを、時事知識として常日頃から収集するようにしていました。収集とは言いましたが、律儀に新聞の切り抜きなどをするのではなく、なんとなくニュースを見て、試験時に都合よく思い出せたらいいなあ…という程度に、頭の片隅にとどめておく感じでした。

小論文で問われる分野ごとに、具体例として使いやすいため実戦的な時事知識として押さえておきたいもの(ex, コソヴォ紛争における人道的介入について)はいくつかありますが、その多くは予備校のテキストで紹介されていたため、自力で収集するのは最新のニュースだけでした。

効率的な最新ニュースの収集方法としておすすめなのが、Twitterです。私がただツイ廃だということもあるのですが、NHK、読売、朝日あたりの、ニュースを流している公式Twitterだけをフォローするアカウントを作って、ツイートに書かれているニュースの見出しだけを流し見る癖をつけてみてはいかがでしょうか。時事知識は薄く広くで大丈夫だと思うので、基本的には、ニュースのツイートの見出しを見て、「ふーん」と、流す程度でいいと思います。少し気になったニュースについてのみ、リンクから記事に飛んで、じっくり読んでみるのもいいかもしれません。これだけでも意外と覚えていることは結構あります。「あ~その話題、なんとなくTwitterで見た記憶あるな~」という程度の知識を増やしてみてください。

紙の新聞を購読して読み込むのもいいとは思いますが、じっくり読み込みすぎてしまうと時間を浪費しそうなので、あえてTwitterのニュースツイートの流し見をおすすめします。


②憲法が保障する権利と条文のリンク

法学部への編入試験であるため、やはりある程度の条文知識は必要だと思います。特に憲法です。「憲法○○条は〇〇権を保障してる!」と、ぱっと反射的に言えるようにしておくと、あとあと命拾いすることがあるかもしれません。

「~は〇〇権として憲法〇〇条でも保障されており...」のように、小論文の中で、さらっと触れるだけでも、「私、憲法の勉強できてますよ!」アピールができますし、どんな事例でも、それに関連する憲法の条文を指摘することは結構簡単です。みなさんも勉強を進めていくと実感できると思うのですが、憲法条文の知識は色々と使えて便利なので、ぜひ勉強してみてください。

「11条 基本的人権の尊重」「13条 個人の尊重、そしてこの派生原理として自己決定権、幸福追求権」「14条 (平等権)法の下の平等、ちなみに両性(男女)の本質的平等については24条」「18条 奴隷的拘束、苦役からの自由」などなど…こんな感じです。


③過去問

過去問はひと通り解いておき、そして添削も受けておくことをおすすめします。ありがたいことに京大はとても良心的で、京大法学部のホームページに編入試験で出題された過去問がかなりの量PDFファイル形式で掲載されています。実践的でとても有意義な勉強ができると思うので、ぜひ活用してみてください。

ちなみに、予備校に行くと、校舎にもよるとは思うのですが、京大法学部のホームページに掲載されていない平成27年度以前の過去問についても保管されているため、より多くの過去問演習ができます。


④漢字の書き取り

は?漢字の書き取り?あなた小学生ですか??と馬鹿にされそうで怖いのですが、恥ずかしながら、私は漢字の書き取りもやっていました。

京法編入の小論文試験はボールペンで紙に解答する形式です。紙とペンで答案を作成する練習をすれば、一部の方にはこの感覚を理解していただけると思うのですが、結構な頻度で、「書こうとした熟語が書けない」んです。

比喩、繋がる、頻繁、蓋然性、盤石、指摘、掌握、文化振興、涵養、煽動罪、衆愚政治、形骸化、奴隷、推薦、漏洩、容貌障害、一身専属的、廃仏毀釈、ビキニ環礁、包括的…etc

意外と書けないんですよ。漢字。
大学受験を終えてからというもの、レポートなどの課題はほぼパソコンで作成するため、なかなか手書きをする機会がないと思います。自分の書く速度や文字の汚さ加減などを意識するために、私は、小論文の答案作成練習では常に紙にボールペンで答案を作成するようにしていました。その練習時、毎回のように何らかの「書きたかったけど書けなかった漢字」が発生していたため、それらを1つずつノートにまとめ、気が向いたときにでも、熟語や用語の漢字を書き取る練習をしていました。


7.小論文試験の闇

みなさん、大変長らくお待たせいたしました。いよいよ、"学歴ガチャ"だなんて不謹慎極まりない題名の伏線回収に取りかかろうと思います。

「2.編入試験とは」でも述べた通り、私が受験した京都大学法学部3年次編入試験では、出身大学での成績やTOEFLiBTスコアなどの提出書類と、小論文試験の合計点で合否が決まりました。出身大学の成績やTOEFLiBTスコアはまだいいとして、ここで問題となるのは、小論文試験です。

そもそも小論文試験とは、ざっくり説明すると、与えられた問いや課題について自分なりに論じたり説明したりしながら制限時間内に文章を書き上げる試験です。そしてこれは、文章を書く試験だというその試験形態からある程度想像がつくと思いますが、数学や物理の試験とは異なり、残念ながら(幸運にも)明確な答えが存在しない場合が往々にしてあります。そのため、一定水準以上の出来の小論文答案であれば、最終的には、採点者の好みや主観、思想、裁量によって評価が変わる可能性があると私は思っています。

ここまで言えば、勘のいいみなさんならお気付きだとは思いますが、あえて禁忌を言語化してみようと思います。

小論文試験は「採点者との相性マッチング」です。

せっかくなのでもっとぶっちゃけましょう。

「受験生同士による、採点者へのゴマすり対決」です。

ゴマすり? ええそうです。あのゴマすりです。中学校での学生生活を思い出していただければ、なんとなく私が言わんとしていることがわかるのではないでしょうか。周りにいませんでしたか?常に先生に媚びへつらい、内申点を上げることに躍起になっていた方…。

アレです。小論文試験にはあの要素があります。実にみじめです。もちろん、ある程度の勉強は必要ですし、論理的で説得力のある答案を作成するのは大前提なのですが、残念ながら、最終的に合否を決めるのは、中学校のアレだと思います。小論文の答案を作成するために今までどれだけ勉強したかなんて関係ない。地頭だってそんなに関係ない。ただひたすらに、徹底的に採点者に媚び、採点者が好むような答案を書き、自身の小論文答案を採点者に気に入っていただきさえすれば高得点です。

では、ここで、「どうやって媚びるのか?」が問題になると思うのですが、京大法の場合はわりと単純です。

リベラルな答案を作成するよう心がけてください

具体的にいくつか例示してみます。死刑存廃論を問われれば死刑廃止の方向性で、憲法関係の話題が問われれば護憲主義の方向性で、答案作成をしてみてください。なんとなくの私の体感なのですが、京大法には左寄りの思想を持った教授陣が多い印象を受けました。教授陣のうちのどなたが採点をされているのかは分かりませんが、少なくとも、ゴリゴリの極右思想を前面に押し出した答案よりかは絶対に採点者ウケがいいはずです。迷ったら、左派思想で答案を作ってみましょう。

一応免責事項として書かせていただきますが、これは単なる私見ですので、「リベラル答案でも京大法編入落ちたぞ、どうしてくれるんだ!」などと言われても困ります。あくまでも参考程度に考えてください。


8.学歴ガチャをまわそう!

ここまでごちゃごちゃと様々なことを書いてきましたが、小論文のある編入試験の合否は、最終的には採点者の一存に委ねられていると言っても過言ではありません。受験生にとっては、もはや不可抗力のようなものです。もっと言えば運です。

だから"ガチャ"なんです。

ちなみに、このnoteを執筆している時点において、少なくとも東京大学の文系には、学部卒業後に編入学ができる「学士編入試験」という制度はあれど、出身大学に2年以上在籍して一定数単位をそろえれば受験資格を得られる「3年次編入試験」という制度はありません。よって、京都大学法学部3年次編入試験は、文系最強の"学歴ガチャ"だといえます。

医学部学士編入などは別ですが、3年次編入試験は、一般的な国公立大学の受験に必須である共通テストを受験する必要がありません。この点を考慮しても、編入試験は一種のチート試験だということがお分かりいただけると思います。

京都大学に合格するために何年にもわたり浪人生活を続けておられる仙人のような方も世の中には一定数いらっしゃるようですが、私はこのような仙人様方や、学歴コンプや孤独な浪人生活によって人生が行き詰まってしまっている方に、このチート試験への乗り換えを強くおすすめしたいです。

だって、小論文と英語だけで京大に合格できるんですよ?しかも、対策に必要な期間はたったの4カ月です!(ソースは私本人) コスパ&タイパ良すぎませんか!?

この、最強のコスパ&タイパのおかげで、普通に大学受験を勝ち上がってきた猛者である一部の京大生からは、編入生は"裏口"入学などと叩かれる(※出典)こともまれにありますので、合格後は面の皮をより厚くして堂々としていましょう!

編入学だろうが、腐っても京大生じゃ、文句あるか

このメンタルが大切です。

(※出典)ヴァルゲリアン京大生起業家natto『予備試験発狂大辞典 第二版』


9.最後に

以上で、私の合格体験記は終了です。なにを書こうか色々と推敲しては書き足し、推敲しては書き足し…を繰り返しているうちにかなり長めのものになってしまいました。読むだけでもひと苦労だったと思います。おつかれさまでした。

最後に少しだけ宣伝をさせてください。現在(2023/2~)私は、京都大学法学部3年次編入試験に合格した経験を踏まえて、小論文や志望理由書の個別添削を承っております。具体的には、受験生のみなさんが各々ご自身で作成された小論文の答案に対して、気になった部分を指摘して改善案を提示したり、答案構成能力や論述力の強化のためのアドバイスをしたりする形態です。

ちなみに、令和6年入試では私の教え子さんが同志社大学社会学部3年次編入試験、北海道大学法学部2年次編入試験、京都大学法学部3年次編入試験にそれぞれ合格してくれました!おめでとうございます!!

そのほかにも、私が作成した答案を個別に公開したり、勉強方法についての相談など色々と編入関係の活動を精力的に取り組んでおりますので、少しでも気になった方は、私のTwitterアカウント(吟醸 @sontaku_yankee)にDMを気軽に送ってください。


以上です。

私のnoteをここまで読んでいただきありがとうございました。


あなたの今後の人生が、実りあるものになりますように。

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