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3spoons vol.12ー自由、港ーthe 1st spoon_かとうひろみ

文芸ユニットるるるるんツイッター400字小説3spoons 

雨が降ったのか海に落ちたのか記憶はないけれど
スカートの裾から水をぼたぼた垂らしたまま
コンクリの地面に据え付けられたベンチに私は座る
遠くで77階建てのビルが777の窓を光らせている
その光はここまでは届かず
持っていた本を開いても文字は読めないが
そこにあるのは名作に違いないと思う
さっき背筋をヤモリが這っていき、海に落ちた
私はそれを追いかけて海に沈むこともできるし
ヤモリを見捨てて町の明かりを目指すこともできる
777 憶兆の光を放つ灯台が見えたとき
私はどこにでも行ける
私は自由だ

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