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3spoons vol.9 『入れ違い』the 2nd spoon_UNI

文芸ユニットるるるるんによるツイッター400字小説 3spoons

百年床

しっとりとしたこの世界が私のすべてだ。海のものと田畑のものを用いて作られたことを、バァさまのバァさまから聞いている。この世界に時々、あたたかで柔らかなテェがさしこまれる。それは私のすべてをひっくり返し、かきまぜ、足したり引いたりする。

私がぬか床であるということを認識するためには他者が必要であり、それは初期のバァさまだった。バァさまからのちのバァさまへ話しかける声が、手に手をとり世界につっこむその行為が、私を作りあげた。

いつも女だった。硬く高い声はやがて柔らかで低いものとなり、そして硬く高い声に私を引き継ぐ。大きなテェと小さなテェは百年のあいだのほんのひと時、私の中でふれあって、そして大きなテェはいなくなる。

大根は居座る。胡瓜と茄子はいつも入れ違う。胡瓜の心を知っている私はその時ばかりはバァさまのテェにすがり着くのだが、しっとり湿っているだけの私には成すすべもない。私はただ世界なのであって神にはなれないということを思い知る。

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