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【ローカルライター】ライターのギャラがカメラマンより安いのはなぜか、の考察。


「だって機材があるしね」が納得材料

地方誌の編集をしていた頃、飲食店などの取材が多かった。外注さんに取材を依頼する際、カメラマンが1日3万円のギャランティなのに対して、ライターは1件取材するごとに3500円という設定で生きていた。

自分が発注する側だと深く考えない。価格は上司が決めているし、私は「うち安いんです、申し訳ありません」と言うしかない。

しかし退社してフリーライターになってから「あまりの激安ぶり」を認識することになる。3500円では、1日5件詰め込んでも2万円に届かない。しかも、5件も取材したら原稿を書くのに1日がかり。
※そして会社員当時はアナログ時代。カメラマンは撮影後フィルムを現像に出せばよく、自分で画像処理はしていなかった。

ただ、「なぜカメラマンはちゃんとした金額なのか」については、「機材が高いから」「車を出してくれることが多いし(機材を積むから)」「写真の方がテクニックが必要???」「スタジオ持ってたりするし」と言う、色々な解釈を当てはめて納得していた。

そういうものだと思っていたのだ。

カメラマンを隠し撮り

でも今こそ、なんでライターの方が半額なの? と言う疑念が生まれる

東京からUターンして地方でカメラマンをされている方と話しているときに。

「なんで、ライターのギャラってカメラマンより安いんだろうね」

と言う話になった。

ここ最近も、メディアの料金設定表を見るたびに思っていた。カメラマンはページが減っても1案件3万円で変わらないのに、ライターはページが減るとギャラがきっちり減る。

その日、ご一緒したカメラマンは半日撮影で30000円。私は半日取材+帰ってからレイアウトを考え(ライターが自分でレイアウトを考える系のメディア)、文章を書いて、チェックして納品してやっと14000円。

「この差ってなんだろうね? 僕は画像処理を頑張るタイプのカメラマンじゃないし、合成とかしないでしょ。だからほぼ撮りっぱなしで納品するから本当に半日で終わるけど。ライターさんは帰宅後も現場以上に時間をかけて文章を書くじゃない。なんで、ギャラが半分なの?」

それは、私も聞きたい。

いろんな場所で撮影舞台を作り上げるカメラマンを尊敬する

多分「アイデアは無料」という認知の中で生きている(地方では)

この話には続きがある。

カメラマンさんが言うには、「カメラマンの値段って、東京と地方で大きく変わらない。むしろ地方の方が高い時もあるよね。でも、ライターって都会から離れると安くなるよね」と言うのだ。

確かに、旅取材で出会う東京在住のカメラマンさんは、「1日2〜3万で」と言う単価をぽろっとしゃべっていた。変わらないなと感じたのだ。
※ただ大手がクライアントとなる広告案件などでは、1日の撮影ギャラが10万、20万になることもあると思うので、一概には言えない。

「僕が思うに、写真って目に見えるでしょ。これが商品だ!ってわかりやすい。そう言う目に見えるものに対して、地方の人はちゃんとお金を払う傾向にあるよね」

その言葉でピンときたのだけど、ライターのギャラに「企画料」「長時間原稿の面倒を見る料」のような「目に見えないものへの対価」がない場合が多いのだなと感じた。

つまり「地方の人は、目に見えないものに対価を払わない傾向にある」。

最後にカメラマンさんが言った「地方の人は、アイデアは無料だと思ってるよねー」が、すべてだった。

少し前に買ったカメラ。仕事で撮影することはほとんどない

これは仕事をする側がアピールするべき?

ライターのギャランティとして、「取材の拘束時間」と「原稿を書く時間」にかろうじて対価が払われたとしても。そもそも原稿の企画を考える時間、ラフを書く時間、アポを入れる時間、相手が不在で何度も連絡し直す手間、デザインが上がってきたものをチェックする時間、赤字を入れる、直したものをチェック、お店に校正を出すなどの「計り知れない業務」は、目に見えない。発注する人によっても「どこまでを依頼するか」の線引きも曖昧。

さらに、ライターとカメラマンがタッグを組んで取材に行く時、大体「アポを入れたり、責任者になるのはライターの方。カメラマンが1日だけの付き合いなのに対し、ライターの方は入稿までずーっと原稿を世話する」みたいな雰囲気がありながら、なぜかライターのギャラが一番安いという謎文化。

おそらく「ここにちゃんとお金がかかっている」とアピールをしなければならないのかもしれない。なぜなら、カメラマンの機材のように、写真のように「目で見ることができない」から。

例えば私自身、編集から校正まで全部やっているのに「見積もりに編集費がほとんど入っていない」と言う現場にも遭遇した。あまりのことにもうやりたくない、と伝えたところ、その後編集費を上げていただくことにつながったのだ(と私は認識している)。

「業務が発生していることを伝えなければ、相手は知らない」

プライベートでの撮影旅も楽しいもの

ライターへ発注する人が編集者である場合が多いので、「ちゃんとわかってくれているだろう」と思いがちなのだけど。

実は、私は会社員だった頃「そんなこと想像さえしていない。広告1ページの取材と原稿料で平気で1万円を切る価格で外注さんにオーダーしていた」過去がある。

立場が変わると、すぐに人は訳が分からなくなるし、「総じてそのエリアの文化が生み出す、無言の認知をくつがえすのは難しい」と感じている。だからライターはカメラマンの機材と同等か、それ以上の手間をかけていることをアピールして、伝え続けるしかないのかもしれない。

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地方の出版社を経てフリーの編集ライターとして活動しています。
○地方でライターの仕事を続けるには
○単価アップを叶えるには
○そもそもライターってどんな仕事?
○編集の視点とライターの視点の違い
などについて、自分なりの解釈をしていきたいと思っています。


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