高尾歳時記 2024年2月28日
2024年2月27日付、読売新聞朝刊「編集手帳」から引きます。原文縦書き。
「鳥の図鑑によると、メジロのことを『花吸い』と呼ぶ地方もあるそうだ。細長いくちばしを使って蜜を吸う。ソフトタッチを心がけているらしく、花をちぎって落とすことはないという◆通勤路に立派な梅の木を育てる家があり、飛び交うメジロを見かけた。怪しい見物人(筆者)を気にしたか、すぐに木の裏側に隠れ、マナーがよいと評判の食事は見せてもらえなかった」
梅が満開を迎えるこの季節、高尾ではメジロの群れが梅の木をとりまいて、次々に花を渡りながら蜜を吸う姿を観察することができます。編集手帳の筆者が見かけたメジロは奥ゆかしかったみたいですが、私が出会うのはいつも豪胆に、人を怖がる様子も見せずに、次から次へと花々をつついていきます。じつはこのメジロ、雑食で昆虫なども捕食するのですが、一度、木の葉の茂みに突っ込んだかと思うと、直後に大人の人差し指ぐらいある大きな芋虫をくわえて飛び去っていったのには驚きました。
メジロは花をちぎって落とすことはないのですが、先日出会った群れがつついていた梅の木は満開をすぎ花の散り始めだったので、群れが次々に花から花へと羽ばたくと、花びらがハラハラと落ちてきました。今年の高尾の梅の開花は例年より早く、一部は見頃を過ぎています。
再来週の週末、3月9日と10日は高尾梅郷梅まつりが催されます。裏高尾には様々な梅の見どころがありますが、普段は立ち入りが禁止されている木下沢梅林は、梅まつりが催されるこの時期だけ特別開放されます。公式ホームページの開花状況によると咲き始めとのことですので、梅まつりが催されるころに見頃となるかも知れません。
木下沢梅林の開花状況のところに、こんな注意書きがあります。
「※2月5日から6日の降雪により、木下沢梅林では約200本の梅に枝折れ・倒木の被害がありました。3月2日からの開放に向け園路付近の危険個所を優先して復旧作業を進めておりますが、被害が大きいため、すべての梅の処理が間に合わないことも想定されますので、観梅の際はご理解をお願いいたします。」
この日は都心も積雪するほどの大雪になりましたが、台風並みの低気圧が通過したことで積乱雲が発達し、夕刻落雷と強風を伴う荒れ模様になったことは記憶に新しい。この嵐は、高尾広域で枝折れや倒木の被害をもたらしました。木下沢梅林のみならず、ほかの梅林でも被害が出ています。
来週3月5日は、二十四節気の啓蟄です。冬ごもりしていた虫が目覚めて、動き出すころとされます。天候は三寒四温のサイクルが戻り、徐々に春めいてきています。高尾では、啓蟄は虫だけでなく、初春の花が目覚める頃でもあるのですが、本日沢沿いを丹念に観察していたら、ハナネコノメが開花していました。例年より一週間ほど早い開花です。
私が幼少の頃までは、春の到来を告げるセツブンソウやフクジュソウが高尾に自生していたらしいのですが、見たことはありません。現在これらは高尾では絶滅したと考えられており、観察できるのは高尾山野草園で栽培されているものだけです。自生種をみることができないのは残念ですが、本来なら、この時期の高尾は、花の使者が春の訪れの喜びを伝えてくれる頃合いでした。
高尾山野草園のちからを借りながら、高尾の春の到来を味わってきました。
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