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高尾歳時記 2023年9月24日(日)

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天気:晴れ
気温:22.5℃(高尾山山頂 11:00)
人出:混雑
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ヒガンバナ

9月25日の読売新聞朝刊、「編集手帳」から引きます。読売新聞東京本社版。原文縦書き。

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彼岸花が咲き始めた、という各地からの便りに心が和む。曼珠沙華まんじゅしゃげ、つまり天界に咲く花という別名を知る方も多いだろう。秋の花を待ちわびたのは、暑すぎた夏がやっと終わるからにほかならない◆彼岸花は気温が20度ぐらいに下がると突然現れ、赤い花を咲かせる。桜と同じく、花のあとに葉が育つ。ほとんどの植物が枯れている時期に、誰にも邪魔されることなく光合成を行い、栄養を蓄えるそうだ(『すごい植物最強図鑑』中央公論新社)
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ヒガンバナと同じヒガンバナ科の植物で、キツネノカミソリという植物があります。仲間というだけあって、読売新聞のコラムに記述のある、「突然花を咲かせる」「花の後に葉が育つ」という性質そっくりの生態なのですが、時期はこちらの方が早い。種の保存のための作戦は同様なのですが、時期が違うところが面白いと思っています。

今年の秋彼岸の入りは9月20日。「暑さも寒さも彼岸まで」といいますが、東京は22日金曜日までは暑い日が続いたものの、23日土曜日は最高気温が25℃を下回り、急に涼しくなりました。

23日土曜日は一日中雨がふったりやんだりする空模様で涼しくなるのもむべなるかなという日でしたが、24日日曜日は朝から晴天。しかし、高尾山のお昼の気温は25℃に届かず、湿度も下がって爽やかな行楽日和となりました。

高尾山ではヒガンバナがあちこちで一気に開花しています。ヒガンバナ自体は都心の公園などでも普通に見かけますので珍しい花ではありませんが、この時期高尾のふもとや山中では自生する個体がたくさん咲いて、文字通りお彼岸の到来を伝えてくれます。もっとも自生しているといっても、かつては日本にはなかった植物で、人為による分布の拡大がはかられないと、植生域が広がることはないみたいです。なので、高尾の山中に咲く個体も最初は誰かが植えたのかな…でも、こんなところにわざわざ植えるか…誰がいつ?というような、想像力が楽しめる花です。

今年のように暑い日が長引いた年でも、山の花々は季節をたがえることなく、きちんとその時期を知らせてくれるのは本当に不思議です。山に通っている人間の実感としては、暑い寒いより昼夜の長さの変化の方が、植物や昆虫そして鳥や動物など、生きとし生けるものの季節感に影響を与えているような気がします。山行中に聞こえてくる秋の虫の声も賑やかになってきました。

今日も、この季節お花が多い場所をぐるっと巡ってきました。昨日の写真も合わせて掲載します。

ユウガギク。雨露に濡れる姿。ふもとから山中まで、あちこちで見られます。
開花はピークに近づいていて、クラスターを作って花をいっぱいつけている姿を見かけるようになりました。秋が深まってきている証拠です。
ツユクサもピークを迎えつつあります。
フジカンゾウはもうそろそろ終わりです。
オトエコシの花もあちこちで見かけるようになりました。秋の花です。
アメリカセンダングサ。ふもとや里山で多く見かけます。
昨日は一日中雨がふったりやんだりする天気で、雲が低くたれこめて稜線からの景色は真っ白でした。
ツリフネソウはピークを迎えています。ふもとから山中まで、あちこちで咲いている姿をたくさん見かけました。
くるくるっと丸まった距がかわいい。
あっ!キツリフネを見つけました。
ツリフネソウは高尾陣馬の山域あちこちで見られますが、このキツリフネを見つけるのは難しい。
秋に咲くイチゴ、ミヤマフユイチゴ。この時期に花をつけて、11月ぐらいに実をつけます。
レモンエゴマ。
このレモンエゴマを高尾山で採取した牧野富太郎博士が、ちぎるとレモンのような香りがすることから命名したとされます。
葉っぱは、サムギョプサルの時に豚肉を包むエゴマの葉に似ていて、美味しそう。じゅる…。
(食するのに安全かは知りません。食べたことがあるという話も聞いたことはありません)
ミゾソバも盛りを迎えつつあります。
金平糖のような蕾は、熟成すると、このようにポンポンぱっちりと開花して、かわいい姿になります。
クサボタンも見かけるようになりました。秋の花。開花すると花弁がこのようにくるっと可愛くまるまります。
ツヅラフジの実も濃紺に熟成しています。
秋が深まりつつありますが、まだ緑が色濃い日陰乗鞍。
ノハラアザミも秋の花。高尾ではもっともよく見かけるアザミのひとつ。
総苞片の突起が短いのがノハラアザミ。
長いのがトネアザミ(タイアザミ)。
ツリガネニンジンも秋の花。高尾では比較的個体数は多い。
今年は例年よりヤマホトトギスの花を多く見かけます。
日陰乗鞍の、植林のための伐採から免れた、落葉広葉樹主体の明るい森。ここは風の通りが特によく、いつも爽やかで涼しい風が吹いています。
秋はマメ科の花の季節です。これはノササゲの花。
あっ、これは!カエンタケ!
食せば命にかかわるだけでなく、触るだけで皮膚が炎症し、ただれるという猛毒キノコ。
実は、高尾では全然珍しくありません。ナラ林で多くみかけます。ふもとや里山では管理している人が駆除してしまいますが、山中では普通に生えていますのでご注意を。
危険なキノコですが、それは我々の主観からということであって、カエンタケからすれば、命を繋ぐための手段として自衛しているだけです。向こうから攻撃してくることはありませんので、何もしなければ無害です。
他のキノコと同様、森の代謝に貢献する存在です。何も知らず、「危険キノコ!」なとど、愚鈍に面白がって紹介する情報を鵜呑みにしないでください。森からすれば、こちらがお呼びでない侵入者なのです。
他の野生生物と同様、見かけたら手を出さずに、その生命を尊重し、適切な距離を保ちましょう。
カシワバハグマ。秋の花です。高尾ではごく普通に見かけます。
(小仏)城山に到着。今日空は晴れて、さらに湿度が低かったので空気の霞がほとんどなく、ここしばらく見ることができなかった富士山の遠景を望むことができました。
キバナアサギリ。こちらも秋の花です。個体数は比較的多く、高尾陣馬の稜線上でも見かけます。
ナンテンハギは、高尾では一番最初に咲くマメ科の花です。
イヌショウマが開花し始めています。秋の花です。
今日は久々に富士山の遠景を拝むことができました。一丁平の展望台より。
同じく一丁平の展望台より。遠く相模湾が見えます。よく目を凝らすと、江ノ島のシルエットが。
拡大した写真がこれ。どうでしょう、相模湾越しの三浦半島、そして写真中心に江ノ島のシルエットが見えますよね。
ゲンノショウコも秋の花。こちらも高尾ではごく普通に見かけます。
コブシの実が色づき始めていました。
真冬に氷の花を咲かせる、シモバシラ。詳しくはこちらをご参照ください。
高尾山山頂に到着。本当に久しぶりの、富士山の遠景です。
同じく高尾山山頂から、丹沢主脈の稜線。今日は丹沢主脈の稜線もくっきり。


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