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会話の記録5

「音って、思い出せなくない?」
「本当だよね。それは本当に思うよ」
「だよね、再生されないよね。音じゃなかったら、再生される?昨日の出来ごととか映像で再生される?」
「映像はね、思い出せるよ」
「映像は思い出せる?」
「うん。再生できるよ、断片的なら」
「記憶の映像を再生できる?」
「うん、白黒だけど」
「それ今聞こうと思ったんだよ、白黒かどうかって」
「うん、伝わった。あくびがうつったみたいに…なにを言ってるんだろうか」
「うん、なにを言ってるの」
「それも伝わった」

「この世にあるすべての言葉を習得したらさ、」
「うん」
「習得したら…よくないね」
「なんで?」
「なんかよくあるじゃん。言葉を通して世界を見てるから、見えるものが増えちゃうと、」
「うん」
「んー、見えないものが見えなくなる?」
「なるほどね」
「昨日君が言ってたなんとか現象と一緒じゃない?赤い…お風呂だっけ?」
「そっちじゃないね、赤いバス。乗り物だね」
「乗り物だ」
「赤いバスを意識したら、世の中赤いバスだらけになっちゃうっていうね」
「言葉を知っているものがすごく大きく目に入るようになっちゃうから、それ以外が見えにくくなるよね」
「なるほどね。でも言葉あっての思考実験とか…」
「そうなんだよ」

「何してるの?」
「んー、考えて、文章書いてる」
「ふーん」
「何のために?わかんない」
「何も聞いてないよ」
「なんか池田晶子先生がさ、」
「うん」
「目的をもってみんなやってるんだから、みたいなことを言ってなかったかもしれないけど言っててさ」
「ん?目的を持ってみんなやってないんだから?」
「やってるって」
「やってるんだから?何ごとも?」
「うん」
「目的をもって…」
「目的があるのかなー…」
「目的…」
「私、寝るために寝たい、みたいなこと、いつか言ってたでしょ?」
「うんうん」
「それが違うのかなーってちょっと思っちゃった」
「寝るために寝たい、が違う…目的?」
「休みたいから寝てるのかな…。起きるために寝るのはいやなんだよ」
「うん、それは分かるよ」
「だから目的なく寝たいのかなって思ってたけど…んー目的はあるのかな…」
「眠いから寝るはだめなの?」
「眠いから寝るはさ、今じゃん」
「ちょっと分かんないな」
「なんか理由と目的は違う気がするんだよ」
「なるほど、目的は未来ってことね。それは分かった。」
「だからねー…んー。歩く もそうなんだよ」
「うん」
「どこかに行くために歩くのではなくて、歩くために歩くんじゃダメなのかな、それって目的がないってことなんじゃないのかなって思ってたんだけど。違う目的があるのかな、歩くために…。んー歩くためにって言っているのは歩きたいからなのか?」
「そういうこと?」

「何してるの?」
「ゲーム」
「君って、ながらで話せるんだね」
「いや、できないよ」
「ゲームしながら話してるんじゃないの?」
「これは頭を使ってないからね」
「私、本読みながら話せるからね」
「それは最強。え、でも前に"本を読むときは本しか読めない"みたいなことツイートしてなかった?」
「そういえばしました」
「嘘じゃん」
「嘘だ。でもどっちが嘘かっていうと今言った方が嘘だ」
「そうなの?」
「うん、本を読みながら話すことはあるけど、間が出来たタイミングで読んでる。だから話してるときは読んでないや」
「器用だね」
「ね」

「人って言うこと二転三転するよね」
「するよね。でもさー…、そうなんだよ」
「そうなんだよ?」
「何か最近、noteとか書いてるからちょっと人目気にしちゃってさ」
「うん」
「矛盾してるじゃんとか、同じことずっと言ってるじゃんとかって思われたら嫌だなって思ったけど」
「うん」
「この二つはアリにしようって自分の中で決めて」
「うん」
「なんか今思ってることをとりあえず書いてみて、そこに一貫性を見つけられたらさ、」
「うん」
「いいじゃん」
「そうだね」
「あと、谷川俊太郎が」
「うん」
「詩人は矛盾したことを言っても全部本当になるんですみたいなことを言ってて、」
「うん」
「例えば、雨は美しいと言った次の日に雨は最悪だって言っても、それは本当のことだから」
「うん」
「とにかく詩は、理にかなってなくても全部本当だから、みたいなことを言ってて、いいなって思った」
「それはいいね」
「一貫性があったらいいけど、それは結果論であってほしいよね」
「うんうんうん」
「一貫性があるように自分で自分をコントロールすると、それは自分じゃないもんね」
「そうだね。…確かに」

「仕事はじめても、暇な心でいてね。希望です」

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