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【短編小説】私とゼンマイ時計(3)

第1話はこちら。

1つ前のお話はこちら。

開店前の店前でドアに手を掛けたまま
微動だにしなかった自分の姿を想像して、
頬が少し熱くなるのを感じながら元来た道を戻る。

大丈夫、この町には美味しいお店が沢山ある。

幸いにも何度か来たことのある町だったので、
私は記憶を辿りながら辺りを見回した。


そうそう、ここを曲がったところに古民家を改装した良い雰囲気のカフェがあったような…

建物が見えてきた。

以前見た古民家には間違いないのだが、
正面まで来ると、何だか様子がおかしい。

店内にあった木の机と座席は見当たらず、
陶器のみが棚に並んでいるように見える。

何度か表の柵越しに背伸びをしてみたり、
少し角度を変えて覗いてみるのだが、やっぱり何だか違う。


たたずまいはそのままに、
お店が変わってしまっていた。

そこそこ幾つか思い出のあったお店だった。


無意識に大きく息を吸い、深く息を吐くのを感じながら、
また、お店を後にした。

しばらく歩いていくと、食欲を誘うスパイシーな香りのするお店に行きついた。
いつもそこそこ人が並んでいるのに、今日は人が外に並んでいない。

どうしようかと迷いつつ、時間を確認する。
まだまだ時間はありそうだ。

隣で同じく悩んでいるかのような女性に軽く会釈をしてから、お店のドアを開いた。
一段とスパイシーな香りが漂う。

カウンター式のカレー屋さんだった。

店員さんに案内された席につくと、
私は少しどきどきしながらメニューを確認し始めた。


~つづく~


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