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有頂天と地獄を味わった、はじめての転職

新卒で入社した不動産仲介業をメインとする会社には、約4年ほどいた。

以前書いたように、不動産の仕事は面白くないと思っていたので、自分の納得のいくところで区切りをつけて、転職活動をはじめた。

転職エージェントに勤める先輩にサポートしてもらい、先輩が本当にいいとすすめてくれる企業だけを厳選して転職活動を進めていった。
サイバーエージェント、GMO、当時まだ30名ほどだったDeNAなど、IT系企業を中心にみていた。

そう。不動産業界から離れる決意でいたのだ。
先輩にも、「不動産には行きたくない」とはっきりと伝えていた。


ところが、転職企業リストの中に、1社だけ不動産の会社があった。

「この会社は絶対受からないと思うけど、いい会社だから受けておけ!」
先輩に強くすすめられた。

信頼する先輩がそう言うなら…と、素直に応募し、採用選考に進んだ。
業界内でも給与はいい方。
その分、採用は狭き門だった。

ダメもとで選考に挑んだのだが、驚くことに合格をもらえてしまった。
自分の経歴から考えると、普通では入れない会社に受かったのだ。

その合格を知った先輩は、
「簡単に入れる会社じゃないから、行った方がいい!」と、その会社に入社することを強く僕にすすめた。

(そんなにいい会社なら…同じ不動産業界だって悪くないよな…)

気を良くした僕は簡単に心変わりして、その国内不動産運営会社に転職を決めた。


その会社は、建物運営・管理などのプロパティマネジメントを中心業務として、その他にトランザクションサポートや、当時日本では駆け出しだったJ-REIT(不動産投資信託)などの事業もサポートする会社だった。

同じ不動産業界でも、それまでとは異なる仕事に従事することになった。


狭き門を突破して入社した26歳の僕は、調子に乗っていた。
前職での営業成績は悪くなかったし、あろうことか「採用できてありがたく思えよ」くらいに思っていたのだった。

そんな僕は、入ってすぐにボコボコにされることになる。
もちろん肉体的な暴力ではなく、なぜだか仕事がとことんうまくいかないのだ。


しばらくすると、なぜうまくいかないのか自分の中で明白になった。

答えはいたってシンプルで、圧倒的にコミュニケーション能力がショボかった。
深さが足りなかったのだった。

クライアントが異なれば、伝え方・説得の仕方や理解してもらうための方法が異なる。
これまでとは違うコミュニケーションが必要なことを、わかっていなかった。


前職では、お客さんの多くは地主さんだった。
昔から土地やマンションなどの不動産持っている個人オーナーの方を相手にしていた。

しかし、転職した会社のお客さんは、法人企業。
オフィスビル投資家とオフィスビルのテナントなどの企業がクライアントなので、直接仕事をする相手は大体、投資を司る担当者や総務部長や役員の方ばかり。

正直、地主さんとのコミュニケーションでは「かわいがられたもん勝ち」みたいなところがあったのだが、それが同じように通用するはずもない。

根拠をもって説明・説得するという、今思えば当たり前のことが当時はできなかった。


地主さんは、田中というキャラクターを好きになってくれさえすれば、なんでも話を聞いてくれた。
僕が知らないことでちょっと知ったかぶりをしても、相手は僕以上に知識がないので支障をきたすこともなかった。
そんな環境に甘えていたことを、2社目で思い知らされる。


何もわかっていなかった僕は、1社目の時と変わらないコミュニケーションを、2社目のクライアントに対して行った。

その結果、社内においても社外においても
「田中さんが何を言っているのかさっぱりわからない」
「何が正しいのか判断できない」
と、ツッコミを受ける日々。

ツッコミだけならまだしも、クライアントの方が知識が豊富で、クライアントの話を理解できないことまで発生する始末。


転職は、暗黒時代への入り口だった。

次回につづく。

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