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失敗の科学

こんにちは。PHR事業開発部の加藤です。

突然ですが、みなさんは「失敗すること」をどのように捉えていますか?
自分は、失敗と向き合うことがあまり得意ではなかったと思います。
(いまは得意か?と言われれば、全然まだまだですが。。。)
ただ、今回ご紹介する「失敗の科学(洋題:Black Box Thinking)」を読んでからは、失敗することに対して、ゼロとまではいきませんが、マイナスの感情を抱くことが少なくなったと思います。

失敗って?

「失敗」を一言で定義するのは難しいと思いますが、今回の本に書かれている「失敗」は、難しい局面に遭遇した場合や、新しいことにチャレンジするような状況で起こる失敗だったり、正解がわからない場合に失敗を繰り返すことで答えを探すような類のもの、あとは認知バイアスによって引き起こされる失敗について多くの事例が掲載されており、それらの失敗が起こる理由や対策が解説され、最終的にその失敗を生産的なものにするために、どのように失敗と向き合っていくべきかが記載されていました。

では、本書で紹介されている事例から2つだけピックアップして書いていきます。

航空業界の取り組み

1つ目が航空業界の取り組みです。この本の出版が2016年なので、ちょっと前のデータになりますが、2014年のジェット旅客機の事故率は、100万フライトあたり0.23回と記載されていました。あの大きくて重い鉄の塊が時速何百キロという速度で世界中の空を行き来していることを考えると、驚くほど低い事故率だと思います。この低い事故率に貢献している要素の一つが、航空業界の失敗への姿勢だと記載されています。具体的には、ミスの大小に関係なく、それを個人の問題としては捉えず、業界全体で「学習機会」と捉えている点にあるようです。それに加え、航空事故が発生した場合、機体に設置されているブラックボックスのデータの収集とその解析を独立した機関が速やかに行い、事故の対策を航空業界全体で共有、各航空会社はその対策を確実に履行することが義務付けられており、システムの面でも過去の失敗を決して無駄にしないようになっています。これらの失敗にオープンな姿勢と客観的なデータを用いた分析と対策の積み重ねが、今日の安全で快適な空の旅に繋がっているんだと思いました。

F1のメルセデスの取り組み

自分は車やそのレース(フォーミュラ、GT、ラリー問わず)が好きなので、2つ目はこの話をピックアップしてみました。F1(フォーミュラ 1)はカーレースのなかでも知名度抜群のレースですが、その中では参加メーカーが大量の最新技術を実践投入してトライアンドエラーが行われている実験場でもあります。その参加メーカの一つ、メルセデスAMGは2014年から2021年までコンストラクターのチャンピオンを獲得するほど速さと同時に安定感も持っているチームです。そこで行われていた失敗への取り組みの一つが、マージナルゲイン(小さな改善)の積み重ねと大量で精度の高いフィードバックを用いた「オープンループ」環境下でのマシン開発およびピットクルーの作業の効率化でした。具合的な例として挙げられていたのは、ピットストップ時のタイヤの交換時間の削減(これほんとにレースの勝敗を左右します)で、ここではホイールガン(タイヤ交換時にホイールのナットを緩めたり締めたりするもの)をホイールに当てる角度にまでこだわって、トライアンドエラーによる改善が進められていました。また、そのトライアンドエラーにあたっては、改善の効果があるかないかを測定するセンサーなどを新たに作成して、正確なフィードバックが得られるようになっていました。驚くほど細部にまでこだわった改善のための試行錯誤と、その良し悪しが確実にフィードバックされる環境が、7年連続のコンストラクターチャンピオンに繋がっていたんだと思います。

じゃあ、エンジニアは?

じゃあ、ITエンジニアは?というと、エンジニアこそ失敗に対する姿勢や取り組みを日常業務やシステムに取り入れる機会に溢れていると思います。開発したプログラムやアプリには必ずバグが潜んでいるものと思いますが、テストを一部自動化することでバグの混入を減らしながら作業効率を改善したり、日常の保守業務にあたってはエラー検知やサーバの異常検知を自動化したりすることで、エラーの見逃し防止や不要なサービス停止の回避にもつながると思います。いまやAWSやGoogleのクラウドサービス上にサービスを構築することが当たり前になっており、様々な自動化サービスも提供されているので、いろいろな改善を実践できる環境にあると思います。
(一部モジュールのコンパイルやデプロイなどは自動化してたりします)
また、新しい技術を取り入れる場合も、最初から効率良くシステムを構築できることは少ないので、メルセデスの話で出たマージナルゲインを積み重ねていく必要があると思いますし、その積み重ねが、最終的に大きなアドバンテージになり得るんだと思いました。また、その改善の正確なフィードバックを得られて可視化できる環境作りも同時にあるべきだと思いながら、本書を読んでいました。

まとめ

今回は「失敗の科学」から、失敗への姿勢や失敗をどう活かすかについて、ほんのちょっとではありますが、内容を抜粋して記事を書いてみました。ほかにもいろいろな事例からなぜ失敗が起きるのか、それらに対応するにはどうしたらよいのかがたくさん書かれていますので、是非読んでみてください。日々の業務の改善などにも役立つと思います。最後に、最近妻の影響でハマってアニメを一気見した「ハイキュー!!」からの失敗に対する一言を書いて終わります。

「できるまでやればできる!」