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カウンセリングが『流行っていない』という「思い込み」

カウンセリング(キャリアコンサルティングを含みます)がもっと身近になって欲しい、広まって欲しい、そんな思いを持って、ネットで発信されているカウンセラー(キャリアコンサルタント)の方を非常に多く見かけます。

その思い・活動は非常に素晴らしいと思います。しかし残念ながら、カウンセリングはもう「十分身近である」「広まっている」と言っても過言ではありません。

この「現状」を正確に認識しないと、せっかくの活動が無駄になるばかりか、本当の問題をスルーしてしまうことになると思い、今回noteでお伝えすることにしました。

例えば、あなたが死にたいと思ったとき、誰かに相談したいと思うのではないでしょうか。

そんなとき、頭に「いのちの電話」を思い浮かべる人も少なくありませんよね。

現に、「いのちの電話」は「繋がらない」という苦情が非常に多いサービスです。

下記の新聞記事はSNSカウンセリングについてですが、「若い女性が『殺到』」とまで述べられていますね。

ちなみに、私が以前に事業責任者及びSVとして勤務していた相談機関は、その当時で年間27万件の相談件数を誇っていましたが、ここでも検索サジェストはやはり「繋がらない」と出てきます。

厚生労働省には「こころの健康相談統一ダイヤル」tel:0570‐064‐556もあります。私はこちらの相談員でもありますが、(通話料有料も影響しているのか)回線がパンクするほどというわけではないものの、コンスタントに相談が入ります。

もちろんカウンセリングは、「死にたい」に限りません。例えば東京の小中学校では、長期休みの前に下記のような案内が配布されます。

西東京市版相談窓口一覧

大人は我も我も「子どもの相談相手になりたい」とばかりに、相談窓口を山ほど作っているし、実際にそれらを利用している子どもも多いのです。学校にはスクールカウンセラーがいるにもかかわらずです。

その他、大学にはキャリアセンターがあり、就職活動の悩みを聴いてくれますし、社会人の場合は「キャリア形成支援センター」のキャリアコンサルタントが無料でキャリアコンサルティングを行ってくれます。ストレスチェックの結果に対して、また福利厚生の一環として、外部EAPサービスなどのカウンセリングが受けられる企業も少なくありません。

さらに、ネット掲示板でメンタルヘルス系の相談をすれば、必ず誰かは(ネットの相談だけじゃなく)「カウンセリング受けた方が良いよ」と助言します。

↓こんな感じですね。

現在、多くの相談機関が抱えているのは「(能力を持った、又は相談機関によってはボランティア)相談員の不足」です。

決して「相談者(クライエント)の不足」ではありません。

いつまでも「カウンセリングが一般的になって欲しい」「カウンセリングをもっと身近に」と訴えかけるカウンセラー(キャリアコンサルタント)は、いったい「何」を根拠にそう訴えかけるのでしょうか。

仮に、食える食えないという観点(収入の問題)からそのように訴えているのであれば、カウンセリング(カウンセラー)が食えないのは、日本では基本的に「カウンセリング(≒傾聴)が『無料』で提供されている」からであり、「カウンセリングが一般的ではない」からではありません。

キャリアコンサルタントの場合は、「知名度の低さ」をその問題(食えない)にすり替えていることも多いように感じます。

しかし「食える食えない」の問題と、その職業の「知名度」の高低は特に関係ありません。

例えば「アクチュアリー」は、キャリアコンサルタントでさえ知らない方が非常に多いマイナーな職業ですが、平均年収は1000万円と言われています。

このように、ある職業が食えるか食えないかは、多くの場合制度的・構造的な問題です。例えば、医師であっても国民皆保険と業務独占がなくなれば、食えるか食えないかは確実に「自己責任」になるはずです。

カウンセラーの場合、無料窓口で行われるのは、基本的に「傾聴」であることが多く、いわゆる「聴くだけ」との批判もあります。

とはいえ、そもそもロジャーズ的カウンセリングを誤解しているカウンセラーは(そしてカウンセラーを束ねる相談機関は)、「聴くだけ」を「カウンセリング」だと思っているのですから、そこはもう変えようがありません。

言い換えれば、ここまで広まった「カウンセリング(傾聴)」を「カウンセリングではない」と否定するのは無理筋です。

また、カウンセリングではなく、「セラピー」を広めたいのであれば、間違いなくまだ「一般的」でもないし「知名度が高い」とは言えませんので、その意義は理解できます。

しかし、あくまで「カウンセリング」ということであれば、繰り返しになりますが、日本ではもはや『聴くだけ』≒『傾聴』≒『カウンセリング』なのです。

「カウンセリング(≒傾聴)」は、十分広まっており、一般的である。
食える食えないの問題は、「カウンセリングが無料で提供されることが(日本では)当たり前であり、有料のものを受ける必要性が低いからである」

この事実から目を背け、認知度の問題にしても、既にカウンセリングは一般的に広まっている以上、状況は何も変わらないのです。

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