手が痛む原因とは?-筋膜ラインからの考察-
どうも、青木です。
今回は「手の痛み」についてのコラムです。
私が経営している整体院では、「なんでかよく分からないけど手が痛い」という症状をもつクライアントさんがまあまあいらっしゃいます。
手の痛みは手自体に痛みの原因がないことも多く、様々な要因を検討する必要があります。
今回はなぜ手の痛みが出るのかを、アナトミートレイン(筋筋膜経線)から考えていきたいと思います。
手の痛みの代表的な疾患
まずは手の痛みを伴う代表的な疾患にどんなものがあるのか、ざっと見ていきましょう。
手根管症候群
手の怪我で最も一般的な神経障害で、正中神経が手関節の手根幹を通る位置で圧迫されて、しびれや痛みを起こす障害です。
代表的な症状としては、
・第1~3指の断続的なしびれやチクチク感
・症状進行により感覚麻痺、母指対立筋や母指外転筋の筋力低下、母指球萎縮がみられる
リウマチ性関節炎
人間が持っている免疫機能の異常により、関節を構成する組織の一つである滑膜に持続的炎症が起き、軟骨や骨が破壊される自己免疫疾患の一つです。
代表的な症状として、
・疲労感
・インフルエンザの様な症状
・朝のこわばり
・腫れて痛む関節
などがあります。
変形性手関節症
靭帯損傷や骨折などの外傷によって、二次的に手関節が変性して痛みが起こるケースが多いです。
代表的な症状としては、
・手関節の可動域の制限
・橈骨手根関節、手根間関節、下橈尺骨関節の圧痛
が見られます。
変形性指関節症
手指の退行変性によって炎症や痛みが生じる疾患です。
代表的な症状としては、手指の痛みや拘縮、握力の低下などがあります。
ドケルバン病
短母指伸筋腱と長母指外転筋が手背側の第一コンパートメント(腱が通るトンネルのようなもの)に通っており、コンパートメントが狭窄して腱の滑りが悪くなることで起こる腱鞘炎です。
代表的な症状として、
・手関節の母指側の痛みや腫れ
・短母指伸筋腱と長母指外転筋の収縮時痛
・手背側の第一コンパートメントの圧痛
が挙げられます。
三角繊維軟骨損傷
手関節の尺側に位置する三角線維軟骨複合体の損傷です。
三角線維軟骨複合体は、ドアノブを回すなど、手関節の回旋に伴う可動性、安定性、力の伝達および力の吸収において大切な役割を果たしています。
代表的な症状として、
・手関節を回旋させた際に痛みや引っ掛かり感が伴う
・椅子から立ち上がるなど手で体重を支える動作が難しい、またはできない
・手関節尺骨側の痛み。回外、回内の動作で痛みが誘発されたり、痛みを伴う引っ掛かり感がある
などがあります。
母指尺側側副靭帯捻挫
母指CM関節に対する外反の力に抵抗する靭帯を損傷する障害です。
スキーでの外傷に多いため、スキーヤー母指とも呼ばれています。
代表的な症状としては、
・何かを握る、また、母指と人差し指でつまむことが難しい
・指や手を使うと母指の付け根が痛む
・外反ストレステストでの痛みの誘発および尺側側副靭帯の弛緩
・尺側側副靭帯の圧痛
・MP関節の近位に断裂した靭帯が“ダマ”となって触診の際に触って確認できる(ステナー病変)
などがあります。
ばね指(弾発指)
手指の靭帯性腱鞘や指屈筋腱に炎症が発したり、それに伴い肥厚が生じる疾患です。
その結果、指の付け根に痛み、屈曲や伸展時に引っ掛かり感を訴えることが多いです。
代表的な症状として、
・指の付け根の痛み
・指の屈曲、または伸展時に引っ掛かり感を訴える
・指が屈曲位や伸展位で指が引っ掛かかったままになるロッキングが確認できる
などがあります。
手の痛みがある場合、まずは上記の疾患の可能性があるかどうかを考える必要があります。
※上記以外の疾患の可能性ももちろんあります。
基本的には疾患ごとの特徴的な症状があるかどうかを確認することと、現在の症状に再現性があるかどうかを確認します。
例えば、母指に痛みがある場合、付け根に圧痛があるのか、外側に開くと痛むのか、その痛みが同じ動作で再現されるのかを見ます。
症状に再現性がある場合は、何かしらの疾患によって引き起こされる痛みである可能性があります。
原因不明の痛みはなんなのか?
ただ臨床現場では、前項の疾患に見られるような症状で、かつ再現性がない症状を訴えるクライアントさんの方が圧倒的に多いように感じています。
では原因不明の痛みの正体は一体何なのでしょうか?
考えられる原因のひとつに「筋膜」が挙げられます。
最近の研究では、筋膜には固有受容体や侵害受容体などの感覚器官が多く含まれており、筋膜は体の感覚器官であることが指摘されています。
筋膜は、長時間の同じ姿勢やスポーツなどの反復した動作によってパターンが変化し、筋膜の滑走性を制限すると言われています。
筋膜の滑走性が制限されることにより、筋膜内に存在する自由神経終末やポリモーダル受容体の刺激を増加させ、痛みや炎症が増加します。
筋膜での痛みは画像診断では判別出来ない上に、痛みの出ている場所が原因出ないことがほとんどなため、痛みを訴える方は原因が何か分からないという状況になるのです。
では、なぜ痛みが原因のある部位ではなく、それ以外の場所に出るのでしょうか?
次の項目で解説していきます。
筋筋膜経線(アナトミートレイン)から手の痛みを考える
筋筋膜経線(アナトミートレイン:anatomy trains)(以下、ATと略す)とは、筋膜のつながりをもつラインのことであり、同じライン上にある筋肉は張力によって互いに影響します。
手に関係するATのラインは4つあり、手から肩甲帯、または胸部へと繋がっています。
つまり、肩甲帯や頚部周辺の筋が短縮すると、張力が筋膜ラインを伝って手内筋や手外筋へストレスとして伝わり、痛みが生じるのです。
上肢の筋膜ラインを下記に記載します。
ディープフロントアームライン(Deep Front Arm Line:DFAL)
スーパーフィシャルフロントアームライン(Superficial Front Arm Line:SFAL)
ディープバックアームライン(Deep Back Arm Line:DBAL)
スーパーフィシャルバックアームライン(Superficial Back Arm Line:SBAL)
上記に記載した筋膜ライン上の筋肉は、張力によって互いに影響し合います。
原因が分からない手の痛みがあった場合、同じ筋膜ライン上にある筋肉の硬さや機能低下がないかを見るのも大事になってきます。
特に肩こりや首こりなど、肩/首周りの症状がある場合は同じ筋膜ライン上に手の痛みが出る可能性があると言えます。
上肢の筋膜ラインを整えるセルフエクササイズ
筋膜ライン上の筋はお互いに張力によって影響し合い、原因部位とは別の場所に痛みが生じるメカニズムについて、理解出来たと思います。
ここからは、上肢の筋膜ラインを整え、痛みや機能を改善するためのエクササイズをご紹介します。
紹介するエクササイズはフロントアームラインのストレッチとバックアームラインの強化が多めです。
理由としては、日常生活動作ではフロントアームラインが短縮固定され、バックアームラインが伸張固定されているケースが多いからです。
それではどうぞ。
肩甲骨開閉運動
キャット&カウ
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広背筋&胸筋群ストレッチ(応用)
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リバースプランク(簡易版)
リバースプランク
原因が分からない手の痛みを訴える方は多くいるように感じており、ほとんど方は手に原因があると考える方が多いです。
しかし、手以外に原因があるという視点を持つと改善アプローチの幅が広がるので、ぜひ参考にして下さい。
ではまた。
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