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日本映画傑作感覚未体験レッドゾーン突入のシン・ゴジラ

00. 序

2016年文月末日、バンコックは雨季だった。

僕はその時夏季休暇の只中で、Bangkokの宿にて日本経済新聞海外版朝刊を手にした。コラムには今夏最も気にしていた映画、シン・ゴジラの記事が在った。

1954年。唯一の被爆国・日本が放射性廃棄物から生まれた怪獣の映画を撮った。それがゴジラだ。ゴジラは当初、原水爆のメタファーのようだった。ゴジラ対◯◯によって日本都市を舞台に得体の知れない大怪獣が闘い都市をスクラップするという表現が伝えていたものは、所謂米ソ冷戦構造だったのかもしれない。ゴジラというエンターテインメントには思想が乗っかっていたともいえる。
そのようなことを記事を読みながら思った。

そして今、世界は混沌を迎えている。
僕たちの住む日本では大地震などの災害のみならずよくわからん動機の無差別殺人の横行。視点を世界に向ければ信じる神は同じなはずが概念のズレから産みだされたテロリズムの脅威。経済的危機に溢れる移民etc...

信じるものを失ったカオスな時代に庵野秀明監督が表現するゴジラとは如何に。興味を持たずにいられない。Bangkokから日本に帰ったら観に行こう。そうしよう。

序にかえて。Bangkokより愛を込めて。

01. Awareness シン・ゴジラ認知

そもそも何時何故、僕がシン・ゴジラを知ったかというところを振り返る。
僕がサポートしてやまないフットボールチーム・川崎フロンターレの伝統の対FC東京戦。それはバルサ対レアルをモデルに「多摩川クラシコ」と呼ばれ川崎東京両サポーターに親しまれている。
先月7/23に行われたその多摩川クラシコ対戦はフロンターレPRチームによって『多摩川クラジゴ』と名付けられ、シン・ゴジラとタイアップPRを展開していた。なんでもフロンターレ本拠地等々力競技場のある武蔵小杉が撮影舞台、とのことだ。「へ〜長谷川博己でゴジラなんかやるんだ。」と認知したのが最初。その時、監督が誰かなどは一切知らず、さほど関心も持てず、もっと畏れずに言ってしまうと結構つまんなさそうなトレーラーから「これ面白いのか?伝説的駄作実写版デビルマンみたいな危険な匂いも若干するな…」などと要らぬ心配をしたほどの印象だった。ごめんなさい。
ちなみにこの試合では小林悠選手が得点し、ゴールパフォーマンスでゴジラを意識するも結局、ジャガー浅野拓磨選手みたいになっちゃってたのが印象深い。

そんな話はさておき、つまんなさそうに撮られていたシン・ゴジラのトレーラーからの予想に相反し、実はシン・ゴジラは庵野秀明が監督だということを知り驚いた。そういえばゴジラ撮るみたいな記事を昔読んだことがある気もするが、忘れていたので新鮮な情報だった。シン・エヴァンゲリオンを撮らずにシン・ゴジラを撮っていてなんて僕は全く知らなかったから。公開直前まで結構、意図的にメディア・情報規制もされていたようだ。道理で。マーケティング的に強気で斬新。

俄然、興味が沸く。

02. Appreciation シン・ゴジラ鑑賞

8/2。平日ながらも帰国翌日でまだ夏休みの僕は二子玉川へ向かった。目的はシン・ゴジラを観るためだ。たまに観る映画だから大画面で観たい。とIMAX巨大スクリーンのある109シネマ二子玉川へGO。ニコタマGO。午前中には元祖円谷版『ゴジラ』をhuluで確認した。なるほど未確認巨大生命体に日本刀で対抗しようとする国民すらいる世界観がなかなか渋い傑作日本映画だ。ハリウッドでカヴァーされるのも頷けると改めて感じた。ただ、過剰に事前情報を摂取せずフラットに楽しみたいので、シン・ゴジラに関する情報はほぼシャットアウトして臨んだ。

僕が事前に知るシン・ゴジラ情報は「監督が庵野秀明で長谷川博己が主演で石原さとみと竹野内豊が出てるゴジラの映画らしい。」

この程度の薄さで、その他の情報はバンコクで読んだ朝刊記事しかほぼ持っては行かなかった。庵野監督の意図に添って、意図的に。

03. Impressions シン・ゴジラ感想

僕の拙い一言で言うならこんな内容である。

「ある危機状況下における国家の組織問題と戦略的思考と集団的意思決定の、エヴァンゲリヲンフレームワークを用いた物語化」

組織問題。戦略的思考。意思決定。これらの個人的にホットなテーマが濃厚に凝縮されている内容!
その他、細かいキーを上げればダイレクトに東日本大震災、自然災害、原発問題、集団的自衛権問題、憲法改正問題、日米安保条約etc...などいろいろなメタファーが盛り込まれているように思える。それはまさに元祖ゴジラが孕んでいたメタファーの面白さそのものの再演。

セリフだけでグングン進んでいく斬新なリズム感のエクスペリメンタルムービーで、のっけからコレは日本映画史に残りそうだと感じた。
冒頭からクライマックスまでノンストップで走り抜けるスピード構造はまるで組織管理版MAD MAX怒りのデスロード。ハイテンポなセリフ主体で演者たち全員の演技は素晴らしく、全編において集中が途切れることなくグイグイと引き込まれる。

そして、内容以外の意匠部分も凄い。

先ず映像。見慣れた東京が破壊されてゆく映像。そしてとにかくゴジラ凄い。カッコイイんですよこれが。
立ち振舞やシルエット、元祖ゴジラもいいが現代版はスタイリッシュでとても格好がいい。
東京湾から上陸当初の四本足で這ってる形体なんて、目がどこか逝っちゃっててどこ見てるかわかんなくて。
なんなのかまったくわかんない生命体感丸出しの表現。使徒感すらある。わけのわからん生命体が東京に上陸しわけのわからんまま破壊していく。わけわからん不条理。それはまるで災害。神のみぞ知る運命。まさにゴジラはGOD。

そしてオリジナルリスペクトのゴジラロゴ。元祖まんまの書体に、シンがついただけのクールネス。新たにゴジラロゴを作るなんて選択しないのはさすがのセンス。センスのない企業ならロゴを新しくしイメージ刷新しよう、なんて言いかねない。

劇中キャプション書体はおそらくマティスPro ED。否応なしにエヴァ的で昂ぶる。

書体だけでなく、音楽音源もオリジナルリスペクトかつエヴァンゲリヲンにニヤリ。
エヴァ寸止めアレンジをBGMに実写俳優女優が演技しているシーンのMIXはエヴァを観てきた自分からすると悶えるほどのハイセンスを感じた。

キャストもアニメ屋が創る実写映画とは思えないほどに超豪華。
MOZUもでも狂っていて最高だった長谷川博己氏は僕と同大卒で、同時期に同キャンパス内にいた可能性濃厚の親近感を感じている。言われてみればすごい中大っぽい。彼の白熱の演技はシン・ゴジラを傑作にした要素として外せない。やはりいい役者である!
アニメキャラチックに好演する石原さとみは、かなりかわいい♡
小出恵介やピエール瀧は劇中確認できたものの、エンドロールにてKREVAや斎藤工、前田敦子、果ては内藤大助まで出演していたのかと感心。

さらに後で知ったことはゴジラの中の人が野村萬斎だったなんて。通りでエンドロールのキャストのラストが野村萬斎その人だったのか!日本の伝統演劇のモーションがシン・ゴジラには注がれていた。クール!

とにかくこれはもう、庵野秀明監督にしか絶対に撮れないゴジラである。
世界に誇る空想特撮怪獣モノ日本映画の大傑作!
男なら。日本人なら。是非シン・ゴジラ、オススメです。

以上、シン・ゴジラに興奮した夜に。

おやすみなさい。

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