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自分に合う広さ

2DKの小さいアパートに住んでいた小さな頃、自分はとにかく広い家に憧れていました。

一軒家で2階があるというのは大前提。少なくとも4LDK以上。

アニメの『クレヨンしんちゃん』で、パパの野原ひろしは安月給だとか、35年ローンで買った家だとか散々な言われようなのを見て、いやアンタら金持ちやんけ、といつも思っていました。あと、自分の記憶では、野原家の階段は螺旋状だったはずで、それもオシャレで憧れていました。最近クレしんを視ていないのでうろ覚えなのですが、近く視る機会がありそうな方は確認してみてください。

現代の感覚で野原家が裕福に映るかどうかは個人差があると思うのですが、少なくとも、まだバブルの香りが世間に残っていた平成1桁時代に幼少期を過ごした自分は、当時はまだ行ったことのなかった埼玉の春日部という地に想いを馳せ、リッチに映る野原家を見ながら、我が家の貧困を嘆いていました(※家は確かに狭かったけど特に暮らしに困っていたわけではありません。小学生というのはなんでも大袈裟に捉えるものです)。もちろん春日部は大都会だと思っていましたし。

その後に引っ越して、マンションなので2階はないけど、そこそこ広い家に住むことになりました。が、そうすると今度はなんと……「別に広い家、いらんわ」という逆の発想に転んでしまいました。贅沢といえば贅沢なお話です。

引っ越した家は少し特殊な間取りをしていて、小さな空き部屋が1つありました。引っ越した当初の自分はその空き部屋を見て、めちゃくちゃテンションが上がりました。

テンションが上がりすぎてミニ四駆のブロッケンギガントをそこで走らせ、新築の家のフローリングにさっそく傷を付けたのは良い思い出です。非公式の爆速モーターを搭載したブロッケンギガントはその後、壁に激突して砕け散りました。ミニ四駆は丁重に扱いましょう。

2畳くらいの物置みたいな部屋だけど、ちゃんと床もあるし、まだ身長150cmに満たない子供だったのでそこで余裕で寝ることもできて、しばらくの間はかなりのお気に入りスペースで、何時間もそこに居座ったりしました。

でも、それは1年も続きませんでした。どうやら人は突然に広い空間を与えられると持て余してしまうようです。

次第に、衣替えの時にシーズンオフの服を突っ込むだけの本当の物置に変わり、今ではもう足の踏み場もありません。ろくに掃除もしていないので奥の方なんかは、たぶん埃まみれ。

たった2畳ほどの部屋でもそんな有り様なのだから、なん部屋も余分にいただいたところで、ただ物を投げ入れるだけになるのは目に見えているなあ、と、古本とCDで溢れ返っているタンスの引き出しを見て思うのでした。……ところでタンスって本来なにを入れるとこだっけ?

まあ、かといって狭いアパートに戻りたいかと問われればそれもNOで、要は自分に合う広さというものがあるんだろうな。

最後に。埼玉は大人になってから2回ほど行ったけど、正直に言います……大宮はともかく、春日部は別に大都会ではなかった。 

サウナはたのしい。