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鳥のヒエラルキー

先日、ベランダに唐突にカラスが舞い込んできまして、思わずびっくりして、仰け反りそうになってしまいました。

家に唐突に舞い込んでくる生き物としては、他にはゴキブリが有名ですが、自分は彼らに対しては、見かけても仰け反りそうになることはありません。

あくまで冷静沈着な気持ちのまま、バスタオルを持ってきて、いったんゴキブリが静止した隙に、そおーっとバスタオルでその身体ごと包み込んで、力いっぱい手で握りしめて、クラウザーさんの形相でSATSUGAIするだけですから。

ちなみにこの手法は、丸めた新聞紙で叩くのとかよりもよっぽど効果的なのでおすすめ。

羽が付いているタイプのゴキブリに対しても適用できます。

彼らは飛んだあとにしばらく壁に張り付く習性があるので、その隙を付いて静かにバスタオルを叩き付けてSATSUGAIするのです。

いくら害虫とはいえ、SATSUGAIはちょっと……という方は、彼らを柔らかく包み込んだままで玄関のドアを開け、バスタオルを外に向けて振って、逃がしてやることもできます。

まあ、バスタオルは基本的にドロドロに汚れてしまいますが、止むを得ません。

小さい頃にボロ家に住んでいたおかげで、ゴキブリをはじめとして、ナメクジやネズミとも、親しくはないけど、会ったら挨拶くらいはする仲でした。

なので、最近はとんとご無沙汰なものの、いきなり家に入り込まれても、特に動揺はしません。歓迎もしませんけど。

しかし、カラスがいきなり舞い込んできた時の対処法は全くわからないので、思わずビビってしまった。案山子を準備していなかったもので……。

いや、そもそもアレだって、カラスを寄せ付けないために使うものなのであって、いざ寄ってきた場合に戦えるのかどうか。

しかも、勘のいいカラスなら、一発でアレが人の形をしたダミーだと見抜いてしまうのだという。カラス先輩、マジパネエっす。

そしてカラス先輩、間近で見ると結構でかい。意外なくらいでかい。怖い。

とはいえ、上には上がいます。

何年か前に、島根県にある松江フォーゲルパークというところを訪れました。ざっくりいえば鳥オンリーの動物園で、ありとあらゆる種類の鳥さんがいます。

そこで生まれて初めてエミューを見たのですが、これがまた、なかなかの迫力。  

体長は1.4〜2メートルと、人間の大人の身長と同じくらいですが、感覚的にはもっと大きく見える。

鋭い嘴を持つ鳥の目線の高さが自分と同じだと、結構マジで捕食されそうで怖い。

昨年に熊本県の牧場からエミューが脱走したというニュースを見たときは、あんな迫力のある奴らがが街中に放たれたのかよ……、と戦慄したものです。

実際のところ、基本的におとなしい性格だし、主食は昆虫や雑草なので、人間が襲われることはほとんどないのですが、その大きさだけでも、充分に威嚇の材料になる。

スズメやハトみたいな小さな鳥がエミュー先輩に出くわしたら、きっと即座に裸足で逃げ出すでしょう。スズメもハトも、もともと裸足だけど。

きっと、鳥類にもヒエラルキーがあり、東京婆亞怒會ばあどかいの壱番隊隊長のエミュー先輩には、ヒラ隊員のスズメやハトは逆らえないのです。

ちなみに東京婆亞怒會の総長はヒクイドリさんでして、体長こそエミュー先輩と同じか少し低いくらいですが、重量が約90kgとかなりのマッチョ。

さらに、まるで攻撃するためだけに発達したかのような強靭な脚から放たれるキックの威力は凄まじく、2005年8月3日に起きた8・3抗争では、ハゲワシを一撃で半殺しにしたといわれています。

こんなふうに、世界の屈強な鳥たちと『東京リベンジャーズ』を混在させた意味のわからない妄想をしているうちに、ふと、ある考えが過ぎりました。

他人事(他鳥事?)のように考えているけれども、人類のことだって、本当はわからない。

まだ発見されていないだけで、とてつもなく強靭で巨大な人間が世の中のどこかに存在している可能性もある。

現代では地球上に80億人が生存していることが確認されていますが、あくまでそれは確認されている数であって、人類すべてとは限りませんからね。

もし巨人の方々が我々のもとに現れた場合、どう対処すべきだろうか。

『進撃の巨人』みたいに、めちゃくちゃ高い壁を構築しなくてはいけないのだろうか。

巨人先輩の好みのパンとか飲み物とかを、走って買ってこないといけないだろうか。ダカラがコンビニになかったからグリーンダカラを買ってきました、とか言ったらブン殴られるのだろうか。

そのようなことを考えると、私は不安でたまらなくなり、ベランダにブラックキャップをばら撒き、裏返したCD-Rを物干し竿に吊るすのでした。

生物多様性が失われるのは困りますが、その一方で、多様な生物が共存することも難しいのです。


サウナはたのしい。