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近所のストリートマーケットのお花屋さん

自宅から歩いて20分弱の一画が土曜日はストリートマーケットになる。以前はマーケット近所のなかなか高級なブッチャー(肉屋)が豚の丸焼きを捌いていて人気なマーケットだったのだが、そう言えばここ半年見なくなったな。
マーケットには義母がライ麦パンを買うために毎週通ったパンの出店、私はそこのカラメライズドウォルナットパンが好きだ。カラメライズって日本語だとキャラメルってことか。黒糖で胡桃を炒ったものが入ったパンである。他にオーガニックの野菜、エンパナーダ、キッシュやタルト、フランスの惣菜、チーズにサラミ、キャンドル、シープスキン、などなど15種類くらいの出店が並んでいる。マーケットの入り口はお花屋さんが陣取っていて、私はそのお花屋さんに足繁く通っていた。ユニークな、でも四季にピッタリ合ったお花を置いているので気に入っていた。オーナーのイギリス人のおじちゃんが一度コインを投げて表裏どちらかの賭けを私としてくれて、私が勝って欲しかったお花を全部もらったこともあった。

夏休みが始まる前にお花屋のおじちゃんがマーケットから追い出されることになったと嘆いていた。理由はマーケットを持っている女性が新しい花屋を入れたいらしく色んな理由をでっち上げられ出ていく羽目になったとのことだった。
まず、私はそのマーケットは区が管理しているものだと思い込んでいたので個人の所有物だと聞いてびっくりした。加えて途方に暮れるおじちゃんを見て、私も何か手助けできないものかと嘆願書?とか色々考えたけど結局マーケットのオーナーにまで辿り着けず夏休みが終わってロンドンに戻ってきた時には新しいお花屋さんが既に入っていた。新しいお花屋さんはと言うと、センスのかけらもないお花屋さんで眺めていても全く買う気になれない。

さて、先日息子がスケボーのレッスンを受けている間に、子ども用の本屋さんに立ち寄って買い物を終えて本屋から出ると、あのお花屋のおじちゃんが立っていた。私を先に見かけて声をかけてくれてお互いの近況を報告し合った。おじちゃんはお花屋さんの時とは違って何だかスマートなコートなんか着て憑きものが取れたようなスッキリした顔をしていた。隣にいたとてもエレガントで綺麗な女性を紹介してくれたのだが、おじちゃんのパートナーだそうだ。私が知っているおじちゃんのパートナーは白人のイギリス人で、ぽっちゃりとした同じお花屋さん。新しいパートナーができたんだな。そんなことを考えているとおじちゃんが、

「実はもうお花屋はやってないんだ。その分僕には時間ができて、こうして今のパートナーと一緒に世界を旅しているんだ。先日インドネシアから帰ってきたばかりだよ。これからどうしようかと途方に暮れたけど、新しい人生がスタートできて結果オーライだったよ。」と嬉しそうだった。

きっと60代半ばごろのそのおじちゃん、今からのことを考えて危惧していたけども、長年やっていたお花屋もパートナーとも別れ、自由と新たな愛を手に入れて人生の再スタートを切ったんだな。そんなこともあるんだな、良かったな、と私の心もほっこりと温かくなった。

※写真は私の両親が日本から来てくれた時に、義母とその土曜日のマーケットに一緒に行ったのだが、夏休みでマーケットがお休みだった時の写真です。



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