今の不安に寄り添って

人生でどうにも身動きの取れない局面ってありますよね。
そう言う時にかけてもらった言葉は人の心の奥に強く残ります。

約10年前、私はまだシングルマザーで、教師をしていました。
生後2ヶ月半から保育園に通っていた長子は、病気がちなため熱を出して休むこともしばしば。

その頃は小学校で担任を持っていて、私が休めばもちろんクラスの授業が止まってしまいます。
他のクラスとの進度の差、もっと生徒たちに手もかけたい、心もかけたい。
けれど、子どもが熱を出してしまうと呼び出され、帰らざるを得ない。

我が子はもちろん、世界で一番可愛い。
けれど、クラスの子も同じくらい可愛いと思って接していました。
だから途中で帰らなければならなくなったり、休まなければならなくなったり、が続くとなんとも不甲斐ない、身を裂かれる思いになったこともしばしばです。

その頃に出会った、学年主任の先生の言葉が今も心に残っています。

「担任の代わりはいくらでもいるのよ。学年でフォローできるし、教務主任や教頭先生もいるし。
でもね、お母さんは1人しかいないの。お子さんが不安な時に寄り添えるのはあなただけなんだよ。学校のことは大丈夫。早くお迎えに行ってあげて!」

いつも子どものことと仕事でドタバタしている私をみて思わず出たのでしょう。かくいう彼女も3人のお子さんを育てたベテランお母さんでした。
かつてお子さんが小さい頃、たくさんの人に支えられて自分も乗り越えてきたんだという話もしてくれました。

どうしようもないことはたくさんある。それは仕方のないこと
今受けた恩は、これから先の未来にいる、いつかの自分と同じ境遇の人に返していってほしい。私もそうしてもらったから。

どんなに救われたか。
山積みの仕事がなくなるわけじゃないし、子どもの熱が下がるわけじゃないし、しんどさは変わらないけれど。
言葉一つで覚悟が決まるような、そんな思いでした。

生後半年を待たず保育園という社会に放り込まれ、虚弱体質のため2週に1度のペースで熱を出し、小学生になれるんだろうか、大人になれるんだろうかと心配していた長子は(多重アレルギーやアトピー、発達障害などを抱えつつも)小学校高学年になった今、熱を出すことは年に1度あるかないかまでに丈夫になりました。

あんっなに大変だったのに....

明けない夜はないように、どうしようもなく終わりのないように見えたことが静かに終わっていくことはあるんだと最近やっと実感したところです。

現職は会社員をしていますが、順調に歳をとり、社内の平均より少し上の年齢になりました。
あの頃、社会人としても母としても駆け出しだった自分を見つめるように、今度は私が誰かの助けになれるような言葉をかけられたらと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?