タランティーノ

クエンティン・タランティーノの話

現在、最新作『ヘイトフルエイト』が公開中のクエンティン・タランティーノ監督をご存知でしょうか。

ヘイトフルエイト予告

「キルビル」や「パルプフィクション」など、監督作品を次々にヒットさせた人気監督で、ゴダールから日本や香港のB級アクション映画までをこよなく愛するシネフィル(映画狂)としても有名です。

今日は、そんなタランティーノの魅力について、少しだけ語っていきたいと思いますよ。

1992年の監督デビュー作『レザボア・ドックス』で鮮烈デビューを飾ったタランティーノですが、彼は決して多作な監督ではありません。
監督作は『レザボア・ドックス』から公開中の『ヘイトフルエイト』まで僅か9本です。(脚本やテレビドラマ・ゲスト監督、プロデュースなどは除く)

簡単な経歴

大の映画マニアだったお母さんの影響もあって、タランティーノは幼少の頃から映画に親しんできました。
そして高校を中退し、ジェームス・ベスト劇団で演技を学んだ彼は、22歳の時にビデオショップの店員になり、映画を観まくりながらお客と映画談義に花を咲かせていたらしいです。
その中の一人に、映画監督・脚本家でプロデューサーでもあるロジャー・エイヴァリーという人がいて、その繋がりからハリウッドのパーティーで映画プロデューサーのローレンス・ベンダーと出会い、脚本を書くように勧められます。

そうして1987年に共同脚本と監督を勤めた自主制作映画が後にトニー・スコット監督の『トゥルー・ロマンス』の原型となったんだとか。

ちなみに「トゥルー・ロマンス」はコミックショップに勤めるオタク青年がコールガールと恋に落ち、ギャングのコカインを持って逃げるという映画です。ところがトニー・スコットの希望でラストを改変。タランティーノはすっかりヘソを曲げるものの、主演のクリスチャン・スレーターの説得で渋々了承します。

その後、自主制作で作った映画を俳優のハーヴェイ・カイテルに認められ、タランティーノ監督・脚本・出演でハリウッドリメイクしたのが1992年のデビュー作『レザボア・ドックス』です。(ハーヴェイ・カイテルが製作総指揮、出演もしている)

時系列シャッフルや会話劇によるサスペンスの構築、ショッキングなバイオレンスシーンとジョージ・ベイカーの『リトル・グリーン・バッグ』に代表されるスタイリッシュな劇中音楽で多くの映画ファンにショックを与え、支持されたタランティーノは、2作目の群像劇『パルプフィクション』でそのスタイルを推し進め、多くのフォロアーがタランティーノのスタイルを真似た映画を作るなど、世界中に影響を与えます。

スタイルの遍歴

大きく分けると、タランティーノの作風は3段階に分かれています。

『レザボア・ドックス』『パルプフィクション』は、時系列シャッフル・過去の名曲や一時は一世を風靡したものの落ち目の俳優を起用し、新しい形で提示する『DJ』期の作品。

ブラックスプロイテーション・フィルム(黒人が悪い白人をやっつける映画)の大スターだったパム・グリアを主演にしたクライムサスペンス『ジャッキー・ブラウン』(1997年)

1970年代のテレビドラマ『燃えよ! カンフー』で人気を博したデビッド・キャラダインや『影の軍団』の千葉真一を起用した復讐劇『キルビルvol1・2』(2003・2004年)。

落ちぶれたスタントマンの殺人鬼役にカート・ラッセルを迎え、ドライブインシアターやB級映画を2本3本立てで上映する劇場『グラインドハウス』で上映されるような映画を再現した『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007年)

この3本は、タランティーノが1970年代に影響を受けた映画を、忠実に再現しながらも現代風にアップデートして見せた『再現』期の作品。

第2次世界大戦でユダヤ人虐殺したヒトラーナチ幹部にユダヤ人が復讐する 『イングロリアス・バスターズ』(2009年)

黒人を奴隷として売買し、非人道的な行いで苦しめた南部の白人への復讐をマカロニウエスタンのフォーマットで撮影した『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012年)

この2本は、タランティーノが史実を踏まえたうえで、フィクションの中で歴史を改変し、悪を倒してみせる『伝奇映画』期の作品。

そして、現在公開中の『ヘイトフルエイト』へと続いていくわけです。

ハリウッドデビューから8本の監督作品(ヘイトフルエイト以外ね)の中で、タランティーノはこの3つのスタイルを『発明』してきたんですが、その根底には幼少の頃から親しんできた映画の膨大な知識と、深い愛情あると思うんですね。
そして、自分の作品の中で『映画の面白さ』や『フィクションの力』を観客に問うているんじゃないかと思います。

会話劇の人

タランティーノの映画に登場するキャラクターはみんな饒舌です。
下らないおしゃべりや世間話の中に、そのキャラクターの性格や情報、嘘やホントを混ぜながら、ストーリーの流れや重要なヒントなどを忍び込ませることで入り組んだ物語を、自然に観客に理解させていきます。

また、時には会話の中からサスペンスを生み出したり、日常会話が突然起こるバイオレンスの引き金になったりします。

映画の本質が『アクション=動き』であり、セリフや説明を削って動きや表情で語る監督が多い中、タランティーノはそうした映画の本流を逆手にとって、ほぼすべての映画の中心に『会話』を据え映画の流れを作っているんですね。
これは、タランティーノ自身が脚本家出身の監督でもあり、彼自身が饒舌な人ということも大きく作用している気がします。

そんな会話劇が極まっているのが、僕がタランティーノ映画の中でも一番好きな『デス・プルーフ in グラインドハウス』で、この映画では前半すべてが、ほぼ意味のない女の子同士のおしゃべりで構成されてたりします。

あと『イングロリアス・バスターズ』なんかは、会話サスペンス劇を突き詰めた名作ですよ。

復讐劇の人

また、タランティーノ映画の多くは復讐劇です。
『ジャッキー・ブラウン』と『デス・プルーフ』を除いたほぼ全ての作品に、多かれ少なかれ『復讐』というモチーフが出てきます。
『イングロリアス~』と『ジャンゴ~』がいわゆる歴史の巨悪に復讐していくフィクションだったことから、思想的な部分が絡んでいるのではないかと推測している人もいるようですし、実際そういう部分もあると思いますが、でも一番大きいのは、『復讐劇が一番映画らしい(盛り上がる)』とタランティーノが考えているからなんじゃないかなーって思ったりします。

そんなタランティーノ監督、噂では新作『ヘイトフルエイト』でまた、新たな境地を開いたらしいんですよね。
なんと3時間の長い映画らしく、今までのタランティーノ映画の総決算なんて言う人もいて、もうね………

超観たいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!

ってジタバタしてしまい、居ても立ってもいられずに、こんな記事を書いてしまいました。

「いや、そんなにタランティーノ好きなら見にいけよ」って思われるでしょうが……………

僕の地元の映画館では、今のところ公開予定がないんですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!・゜・(ノД`)・゜・

シネコン3つもあるのに1館も上映しないとかどういう事!?
あの、タランティーノですよ!?
当然、全国公開するって思うじゃないですか!!
「○○○○○○」とか「✖✖✖✖✖x✖✖」なんかいいから、「ヘイトフルエイト」上映してくれよぉぉぉぉ!!

スイマセン。取り乱してしまいました。
ともあれ、タランティーノ作品が公開されるのは数年に一回の祭りですからね。ファンの方もそうでない方も、興味と機会があれば是非、映画館の大画面でご覧くださいねー(*´∀`*)ノ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?