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0922「世界大戦と世界大戦の間」

ニューヨークというのはあんまり地震もないし、建物も石系でできているので、古い建物が多いというのは聞いていたが、実際古い。私がニューヨークで最初に住んだ部屋がある建物は、1918年に建てられた建物だった。

1918年って言ったら、第一次世界大戦が終わった年だ。築100年以上経っているということになる。それだけ長い時間経っていたら、自分が住んでいた部屋で人の1人や2人亡くなっていたりするだろうし、事故物件も何もない気がする。大島てるも商売上がったりだ。

今年の大河ドラマ「いだてん」についてはこのうんこ日記でも何回か書いているが、この大河ドラマはかなり画期的だと思う。オリンピックをテーマにしているので、さぞや来年のオリンピックに向けてオリンピックを称賛する大政翼賛ドラマになってしまうのだろうとか思っていたが、非常にしっかりとオリンピックというものの光と影を丁寧に描ききっていて、忖度なく、「で、来年のオリンピックはどうなのか」を突きつける。今週は、有名な「前畑ガンバレ」の回だったが、その部隊となるナチス主導のベルリンオリンピックの闇を逃げずに描いていた。

画期的なのはそういう部分だけではなくて、大河ドラマという枠で1年間、これほどにしっかりと近現代史に向き合ったドラマというのはたぶん今まで無かったのではないかと思う。もちろん日本のスポーツ史が軸だから、政治家による宮廷劇とかそういうのではなく、「なぜ日本がこうなったのか」みたいのは描かれずに、主にそれに翻弄される庶民の視点から、時代の空気が描かれる。

物語は第一次世界大戦前夜の1912年あたりに始まる。その年のストックホルムオリンピックが最初の舞台で、次の1916年のベルリンオリンピックは第一次世界大戦で中止になる。

明るい大正時代の雰囲気が続き、関東大震災が起こる。満州事変、五一五事件、二・二六事件ときて、今週の最後には日中戦争が起こった。その間に浅草の遊女が人妻になったり、関東大震災で亡くなった主要人物の娘が大人になったり、学生だったオリンピック選手が指導者になってたりする。

今まで私なんかは、第一次世界大戦と第二次世界大戦、なんて聞いて、なんとなく間をおかずに連続して起こったような感覚を持っていたが、「ああ、この2つの戦争の間にはこのくらいの時間があって、こういう変化が起こっていったのだな」ということが実感できる。

あのへんの時代をそういう形でしっかり描いたコンテンツというのは今まであまり無かったように思うし、大河ドラマという長尺でじっくり体験させるフォーマットであるからこそ可能になったことでもあるような気がする。

第一次世界大戦が始まった1914年から第二次世界大戦が終わった1945年までは31年。よく考えたら平成元年から今現在までくらいの時間が経っていたのだ。逆にいうと、そのくらいの時間で、幸せで明るかった時代が、重苦しく悲惨な時代に変わってしまい得るということだし、いまから30年後あるいはもっと早くに、日本人あるいは人間はまたとんでもない方向に足を向けてしまうかもしれない。

「いだてん」は、この後さらにおかしくなっていく時代を描くことになるが、戦争の悲惨さだけを描いてきて、問題提起があまりなかった既存のコンテンツの戦争描写とは一線を画したものになっていきそうで、楽しみにして良いのかわからないが、楽しみだ。

日本が月曜休みだと、日曜の夜でもゆっくりできるので、すごくいい。もうずっと休んでいて欲しい。

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