フィンランド留学記 十周目

先週、新しいホストファミリーへ移り、早々に素晴らしい時を過ごすことができた。さらには次のファミリーからラップランド(フィンランドの北部地域)への旅行のお誘いが来た

もちろん行きます、是非とも参加させていただきます。

このように、僕は只今絶賛幸運パラメーターが上昇中にあります。

月曜日のお昼、食堂で気のせいか日本語での会話が聞こえた。まさかと思い、振り返るとなんとそこには四人の日本人がいた。
初めはそんなことがあるのかと疑いながらも、日本の方ですか?と声を掛け、一緒に食事をすることになった。一人は某大学で福祉に精通している教授、残りの三人は親子で新聞記者の母親と、その場に一緒にいる二人の子供とフィンランドへ一時的に滞在している。この日その教授と記者は僕のいる高校へ取材しに来ていた。
そこでは僕がこの一ヶ月で体験してきたことを話したり、都市などもっと大きな所に行きたかったなどとわがままを吐いたりした。留学を決めた時は、現地で日本人がいたとしても絶対に話さないことを決意したにも関わらず、今ままで自分の身に起きた出来事を誰かに話さずにはいられなかった気がして、つい話してしまった。あえて厳しい環境に自分の身を置きに来た、だのに甘えてしまっては意味がないと思っていたからだ。だが、結果的に話しかけてよかったと思った。次の授業の時間が迫り席を立った時、

私たちヘルシンキにいるから、来たかったらいつでも来ていいよ。」

と言われたのだった。

「あ、ありがとうございます!」

この思いがけない出会いで、フィンランドの福祉や社会制度についての話をしてくれるだけでなく、ヘルシンキでの滞在を許してくれることにまでなるとは、一体誰が想像し得るか。

水曜日はホストマザーの誕生日だった。放課後にマザーと一緒に演奏会に行って音楽を聴いたり、ファミリーでささやかな誕生日会を開き、またこういう状況のために一応持ってきた赤べこをプレゼントした。本当は最初のファミリーに渡すつもりだったが。
そしてこの日を祝うかのように初雪が降った。

木曜日は体育の授業で、なんとMEGAZONというレーザー銃のサバイバルゲームを学校の費用で遊ぶことができた。元より、MEGAZONは高校の友達を誘ってみたが、度重なる不運やすれ違いによって結局一緒に遊ぶことは叶わなかった。が、結果的にこういう形で楽しむことができたからよかったと思った。

このように、僕の留学生活は楽しいことがたて続きに来て、今ではむしろ他の友達に自慢したい立場にいるくらいだった。今までにあった嫌な出来事ももはや笑い話として会話のネタにしていた。

しかし、金曜日の体育の時間でフットサルをしていた時、自分より一回り体の大きい男子とぶつかり、フィンランドに来てから筋トレをサボったツケなのか、僕は左膝から倒れ、盛大に膝を打ち、怪我をした

幸運パラメーターはこの日に暴落した。

いってぇ...

ゆっくりならば歩くことができたが、少しでも膝が他の方向へ向くととても痛む。また、屈むことも難しいため、トイレをするときは大変になりそうだ。

最悪だ...なぁ嘘だろ?こっちは来週ラップランド旅行があるんだぞ?

打った後はすぐに冷やしたりしたが、それでもまだ痛む。ただの打撲ではないようだった。

翌日土曜日にLP(Local contact Person)に病院に連れて行ってもらい、膝の関節が少し離れていることがわかった。自分でも予想はしていたが、医者からは、ラップランドではすでに雪が積もっていて歩きづらいため、旅行は控えたほうがいいとのことである。
ラップランドといえば、サンタ村や氷のホテル、トナカイや犬ぞりなどが目玉である。だが、次のファミリーが言うには、そこでは鳥を狩ったり森を長時間歩いたりするだけだそうだ。
ラップランドに行く機会は失えど、それなら別に行かなくてもいいか、いいよな、と自分に言い聞かせた。逆にこれほどにもタイミングよく膝を打ってしまうとなると、むしろ神が行くのを引き止めているかのように感じてしまう。
また、その代わりに来週の秋休みはLPが周辺地域に連れて回りながら他の留学生に会ったりすることになった

むしろこっちの方がいいんじゃないか?気に病むことはないさ、だって、歩くだけなんて多分面白くないだろう?ああ、これでいい。

また、この日の夕食はラーメン(ラ王の坦々麺)に茶碗蒸し、鮭のホイル焼きと、膝を怪我しながらも色んな日本食を作って振る舞った。まだ料理には慣れていないこともあるが、単純に作りすぎてしまったため、結局2時間ほどかかってしまい食べる時間が遅くなってしまった。初めての日本食に興味を持ってくれたみたいでよかった。少し悲しかったが、中でも一番喜んでもらえたのが、ラ王だった

日曜日は、ラップランド旅行の代替プランのため、LPの家へ向かった。サウナに入り、マザーから借りた膝のサポーターを着けて、ゆっくりと体を休めた。

膝はすぐには回復しそうにない。

人生は偶然なのか、それとも必然なのか...

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