フィンランド留学記 十一周目

今日から一週間は秋休みでサボンリンナの周辺都市を周り他地域にいる留学生と会うことになった。本来は次のホストファミリーにラップランドに一緒に連れて行ってもらえるはずだったのだが、偶然か必然か、体育の授業で膝を打って怪我をしてしまい、断念せざるを得なくなってしまった。

まだ雪はたくさん積もっていないから、別に今行かなくてもいいんだ。行ってもスキーや観光などはしないらしいし、狩りをするとは言っても自分は見ているだけだろう。ならば、それより他の留学生と会って話をしたり、他の地域を巡ったほうが楽しいし為になるだろう。

と、この一週間は自分にそう言い聞かせた。

月曜日はLPの夫の家族が昔農業を営んでいた古家へ移った。草原の中に家が二つ三つほどしか見えない。この家には他の地域にいる留学生と初めて会ってアスレチックで遊んだ日に来たことがある。中は暖かかったが何故か蝿がいる。これは夜に羽の音で眠れないオチになる予感がする。
家の外を出て散歩していたらこの辺りに住んでいる八十歳くらいのおばあちゃんに会った。もちろん話しかけられた。落ち着いて知っている単語を聞き取ろうとしたが、唯一聞き取れたのは「猫」という単語だけだった。(「猫?」とジェスチャーをしながら確認をしたから確かに「猫」の話をしていた)どういう話の流れで「猫」が出たのかもわからなかったので、おばあちゃんには申し訳なかったがその時は「jo, jo...」と相槌で乗り越えさせてもらった。

火曜日はMikkeliミッケリというサボンリンナより少し大きめの町へ訪れ、そこにいるベルギーから来た留学生に会いに行った。その留学生のホストファミリーの家にお邪魔し、小さいホストブラザーがいると言うことで一緒にお菓子作りをすることになった。日本ぽいお菓子を作ろうと思い、大学芋を作ることにした。フィンランには芋ならなんでもあると思っていたが、スーパーに行っても薄オレンジ色の芋を除いてはサツマイモらしき芋が見つからなかった。疑いながらもそれしかなかった上、ジャガイモを使う訳にもいかないとだろう思い、買った。
しかし、帰って断面を見てすぐに違うと確信した。そもそも硬くて切りづらく、水っぽかった。普通に使ったら不味そうだったため、急いで他のレシピを探し、「キューブ大学芋もち」というものを見つけた。試してみたが想像以上に水っぽかったため、片栗粉を加えすぎたりし、結局みたらしをかけたパンケーキになってしまった(普通に美味しかった)。そして、意外にも醤油に砂糖を加えるというのが海外の人から見て珍しいのか、みたらしの評判が良かった。
また、あとになってわかったが、僕が買った芋は細かくしてスープに使うための品種だった。
その後は町を案内してもらったりして終わった。

木曜日はKuopioクオピオというフィンランドで九番目に大きい都市へ訪れた。ここには大きな大学があるため学生が多く賑やかである。この都市にはイタリアから来た留学生二人と香港から来た留学生一人いるが、この日は会わず、翌日会うことにした。LPとここに住んでいるLPの娘にこの都市で人気なバイキング形式の寿司チェーン店へ連れて行ってもらい、ご馳走になった。店に入った時にまず目に入ったのが壁に彫られた謎な日本語の羅列だった。

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『マングラム』?『ばか』??『辛いや』???

「見ていてツラいのはこっちだよ...」

当然、LP達にあの日本語はどういう意味か興味津々に尋ねられてしまった。「ばか」の意味を正直に答えるのに少し抵抗があったが、結局、「マングラム」は置いて、他の二つの「日本語」の意味を教えた。
そして「ばか」「辛いや」という寿司とは全く無縁な言葉の意味を教えた時には二人に驚かれた。「なんでそんな言葉を選んだの?」とも聞かれたが、そんなこと僕が知る由もない。ただ、店のオーナーが意図的にそれらの言葉を選んでいるのには間違いはないはずだ

店には普通の寿司やカリフォルニアロールがあり、味に大きな問題はなかったが、ネタの刺身が薄く、米に水が含みすぎていてすぐにお腹にたまる。味噌汁もあったお椀がラーメン用のものしか無く、飲みづらかった。また、ラーメンのための鶏がらスープと麺もあった。具材は自分で選べる形式だったが、その具材コーナーにはなぜがブロッコリーやチーズキューブや高菜漬けみたいなのが置かれていた。

なぜに?

その後はPuijoタワーと言うクオピオのシンボルタワーに連れて行ってもらった。75メートルの高さで最上階にはカフェがあった。(滞在時間約20分)

金曜日の昼すぎに、噂通り約束の時間より少し遅れてイタリア人の留学生が来て皆合流した。その日は町を案内してもらい、おすすめのカフェでお互いの近況報告やイタリア人によるフィンランドの食事の愚痴に付き合ったりした。僕の通う高校の給食で一度か二度、四等分にしたパスタに味のないトマトソースをかけて、さらに味を補うためにケチャップをかけるメニューが出たことを伝えたら案の定絶句していた。いや、イタリア人じゃなくともこれには驚くと思う。

夕方になったら直ぐに解散した。特に特別なことはしなかったが、いい時間を過ごせたと思う。

土曜日はJoensuuヨエンスーというクオピオより少し小さめの都市へ訪れた。ここには同じ留学団体で来た日本人の留学生、ハルキがいる。 ハルキとはSNSでよくお互いに話をしたりしていて仲がいい。ただ、この日はハルキの元へ訪れるためだけにここへ来たのではなかった。数日前、この日にヨエンスーへ訪れることを伝えたら、ちょうどその日にヨエンスーにいる留学生達4人とカーリングを体験するイベントがあることを教えてもらったのだった。ということでサボンリンナから飛び入り参加させてもらうことにした。

カーリングといえば、2018年の平昌オリンピックで女子カーリングが「そだねー」を流行らせたことが自分の中で有名だが、それ自体には関心が向くことはなかった。
失礼な言い方だが、印象としては原始的なボーリングの氷上版としか見ていなかった。ルール自体は簡単だが、実戦となるとやはり難しい、というよりできなかった。なぜなら、利き手である右手でストーンを投げる場合は左膝の支えが重要になるため、その左膝を怪我していることはとても致命的であった。が、案外楽しめた。というのも、ストーンが進みやすくするために氷を磨く作業が僕のために残っていた。いや、それしか残っていなかった。

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カーリングの後はハルキに連れられてボーリングをした。他にも何かやることがあっただろうとは思ったが、サボンリンナより大きいこの町でもこれくらいしか無いらしい。
その後はカフェへ寄ってコーヒーを飲みながらお互いの近況などを報告しあったり、悩みなどについて相談したりした。僕の場合は、前のファミリーとのいざこざの後からファミリーを変えることになるまでの経緯や、今はファミリーに恵まれて楽しい日々を過ごせていることなどについて話した。前のファミリーについてはすでにいくつかSNSで伝えており、食事の事情に関してはよく相談させてもらっていた。よほど気の毒に思われていたのか、ファミリーチェンジが決まったことを伝えた時は即座に「おめでとう🎉」と送ってくれた。

そして、ハルキのホストファミリーの所へ戻り、一晩泊めさせてもらって、日曜日の朝にサボンリンナへ戻った。
こうしてラップランド旅行の代わりとなる楽しい楽しい一週間の秋休みは幕を閉じた。

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