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わたしの映画観📽「シン・仮面ライダー」#1

情景が琴線に触れたらハマる怪作

公開1ヶ月を過ぎた先日、2回目をリピート鑑賞して来ました。
ぶっちゃけ1回目よりも楽しめました。
後から観る方が楽しめるなんてなかなか稀有な作品ですよ。
公開1週間後に初回鑑賞した感想は「ずっと観たくても観れなかったものがやっと観れた」「簡単に消化できない、すごい物を飲み込んでしまった」「底が見えないこれはヤバイ」でしたね。
人によって「ぶっ刺さった」「駄作」「クセになる」「クソ映画」「50代以上のおっさん向け」「若いし知識ないけどハマった」など賛否分かれてますが、一方でバイク好きの人にサイクロン号の排気音やアングルがぶっ刺さって支持されてるという面白い現象も起きてるようです。

一文字隼がかっこいいと人気集まってて、これには同感です。
演じた柄本佑さんがあまりにもハマリ役で。
浜辺美波さんと西野七瀬さんも大画面の中でとてもお綺麗でしたね。
そんな陽の部分を支えてた池松壮亮さんの陰の演技は、1回目よりも2回目の方が伝わってくるものがありました。
感情を押し殺す演技と、感情溢れ出す演技。
演技については演じるプロである俳優陣に任せたと言わんばかりの客観的な映像。
変な言い方ですが私的にはとてもと言うかすごく日本映画でした。
カット割りが多い今作ですが、昭和スタイルと言おうか、長回しで演技を撮り続けてた頃の時代劇を観てる感覚になぜか近いのです。
線路で歩み寄るシーンやトンネルを歩いてくるシーン、浜辺で独り佇むシーンなど、引きの情景の美しさが印象に残ってるからかもしれません。
庵野監督は情景とバランスをとても大切にする、極めて日本人的感覚の映像作家だと思います。
そういう画作りをしている時点でこれは大衆向けの娯楽映画ではない訳で、そこが往年のライダー作品とは一線を画すのでしょう。
シン・ゴジラとシン・ウルトラマンはどちらかというと大衆娯楽映画です。

「iPhoneで撮った映像を混ぜるな」「CGの粗が酷い」など画質の指摘も散見できますが、MCUなど昨今のハリウッドスタイルで目が肥えてる人が多いのでしょう。
ただVFXメイキング映像がYouTube公開されるや、CGが実は凝りに凝りまくってた事実が判明したことで、画質批判は息を潜めたようです。

「人物描写が薄い」「セリフだけで物語が進む」という脚本批評もありますね。
映像だけで魅せてくるドラマティックで分かりやすい作風を求める人なのだと思われます。
庵野秀明監督の作品、特にシン・仮面ライダーはとにかくテンポが早い作風なので、飲み込んで咀嚼する間がないうちに話が進んでしまい、そう感じるのかなと。
ただ俳優陣の演技をみる限り、キャラクターが薄いと見るよりは演技の裏にある心情や情景を慮りながら観るのが正しい気します。
昭和歌謡や演歌の聴き方に通じる感じです。
そういえば「シャークネード」という米サメ映画の1作目は、街の崩壊する様子が一切映し出されずセリフだけで展開しますね。

「庵野は監督を勉強しなおせ」という意見も目にしました。
これは批判にも酷評にもなっていない、もっともズレた意見だと思います。
シン・仮面ライダーは歴代ライダー映画史上最大の興行成績を記録し、多数のリピーターに支持されました。
まあ、感想は人それぞれです。

ヒーローとしての改造人間によるアンチヒロイズム

いわゆるヒーローは颯爽としていて、どこかキャッチーで、見栄を切ってバッタバッタと敵を倒す強い味方ですよね。
そしてそう振る舞うのがヒロイズムです。
悪役は正義の引き立て役で、主役は常にかっこよく立ち振る舞います。

ニチアサのヒーロータイムはショーマインドなヒーロー番組です。
バンダイその他の商品販促の番組枠なので、注目と人気を集めてナンボです。
アクションは歌舞伎と時代劇の流れを汲んでいて、戦いはVFXもあって派手で激しく、シリアスだったり滑稽だったりします。
ですが目新しさを売りにする余りにナンジャソリャ?と首を傾げたくなる設定やお遊びが年々増えてきました。
そこに私は興味が無くなり、徐々に冷めてしまい、私にとって最近のライダーはやがてヒーローではなくなりました。
そこにきてシン・仮面ライダーは違いました。
殺してしまった敵に黙祷を捧げる優しさを持ち、強すぎるパワーを行使することを恐れ葛藤し、仮面の裏に隠れた弱さと人間味がそこにあったのです。

原点回帰を謳ったライダーは過去に何作もありましたが、それは大抵が怪奇色を打ち出す時でした。
シン・仮面ライダーは明らかに怪奇色をちょっとしか打ち出してはいません。
怪奇どころか昭和めいていても現代風にリニューアルされた画になってます。
でも私にすれば今作こそが長年切望した「原点回帰した仮面ライダー」であり「仮面ヒーローの復活」でした。
違いはどこにあるのでしょう。
考えるに、TV本編の1号2号ライダーが「変身ヒーローとしての仮面ライダーの活躍」を描いたのに対し、石ノ森漫画版は「改造人間としての本郷猛の物語」を描いてたのがその根本にあるのかなと。
おそらくですがTV版仮面ライダーが幾度か繰り返す原点回帰の原点とは「放送された仮面ライダーの1話2話」なのです。
そして庵野秀明監督が思い描いてたのは「石ノ森版としての原点回帰」「昭和のパワーと令和の最先端との融合」だったのです。

改造人間になるとはどういう心情か
ヒーローの仮面をかぶって命を奪うとは、どれほどの激情か
払拭できない過去を背負って前を進むとはどれほどの重みか
同じように絶望を経験したはずの敵方を殺すとは、どれほどの葛藤か
優しすぎる男が非情になるのを抑えるとはどれほどの苦しみか
それらを体現してくれて、本郷猛を再解釈して魅せてくれたのが今作だったのです。
改造人間だからこその生身に戻れない悲哀、それでも前に進むことを選ぶ孤独と不安、それを全身で表現した池松壮亮さんの演技。
そこがヒーローでもダークヒーローでもなく、アンチヒロイズムなんです。

本郷猛はあくまで生身をもつ改造人間であり、戦いのプロではありません。
庵野秀明監督がプロの殺陣アクションを排除することにとことんこだわったのは、その本質に限界まで近づきたかった故なのではないかなと思います。

アンチヒロイズムで検索したら「暁の追跡」という古い邦画が見つかりました。
U-NEXTとか楽天TVで観れるそうですが未加入なんですよね。
ちょっと気になる作品です。

以上、あくまで個人の感想です。
長いばかりの素人文章なので申し訳ないです。
ここまで読んでくださり本当にありがとうございました。

参考動画

忠犬しずchさんの動画(https://www.youtube.com/live/IoV1Acobw8Y?feature=share)はとても素直で好感触ですね。
気持ち良いトークで私のエモを言語化してくれて心スッキリです✨

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