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30年を経て『河殤』を振り返る(1)

前回

現代の中華人民共和国における『河殤』の取り扱い、即ち中国共産党の『河殤』に対する評価は、以下状況を見れば明らかであろう。

百度百科:記事なし
百度視頻:映像なし
土豆網 : 同上

完全に存在を消されている。

ところが、YOUTUBEには土豆網のロゴ付きの6回全編分が掲載されている。
ある時点までは掲載されていたが、後に「何らかの指導」があり削除されたのであろう。このような現象を見るだけでも、言論統制の恐ろしさを知ることができる。

一方、後段で改めて触れるが、『河殤』を批判した報道記事は、残されていることから、「何らかの指導」が徹底されていることがわかる。

ちなみに、『河殤』の映像は上述のYOUTUBEで初めて視聴した。

さて、まずは『河殤』の内容を①からの抜粋で、見ていこう。

第1回 夢を追う (原題:尋夢)

ここ百年、いつも受け身で殴られてばかりいた歴史が私達の現在の心理状態をつくりあげたのだろうか。それとも最近数十年の貧困と立ち遅れがもたらしたものだろうか。
・・・
これらの現象の背後に隠されているのは民族の心の痛みなのだい。この苦痛のすべては文明の衰退にあるのだ!
・・・中国の古い文明がもたらした運命を振り返り、検討することを私たちはもはや避けてはならない。
・・・
文明はすでに衰弱、老化した。
・・・
私達が想像しなければならないのは、斬新な文明である。
・・・
旧文明の残滓は黄河の河道に溜まる泥砂のように私達民族の血管に沈積している。大水によってそれを洗い流してしまわねばならない。

第2回 運命 (原題:命運)

文明の衰弱を救うには国の扉を開き、対外開放を進め、科学と民主の新しい朝日を迎え入れねばならない。
・・・
私達は再び運命の定めるところに従うことはない。私達はすでに黄河ははるか東に流れつつも、最後には海に入るのをみた。
私達は、再び海の呼び掛けを拒んではならない!

第3回 きらめき (原題:霊光)

二十世紀の中国知識人は・・・身分も以前よりやや高くなったが、経済的貧困と、精神的抑圧がなお彼らにつきまとっている。青年知識人の訃報が次々と伝えられ、最も優秀な中年の知識人は重い負担にばたばたと倒れつつある。
・・・
もしも彼らの魂に黒い十字架を負わせたり、灰色の長城で圧迫するなら、魂のきらめきは永遠に太陽に変わることはないであろう。
歴史が再び中国の知識人を弄ばぬようひたすら願うのみである。

第4回 新紀元 (原題:新紀元)


私達はようやく「国際大循環」に参加する必要を理解した。だが人の市場には目を付けながらも自分の市場には蓋をし「うま味が出ていってしまう」ことばかり心配し、人が進んで投資するには彼らが私達の市場を気に入らなければならないことを忘れているようだ。
・・・
不公平の源泉は社会的に機会均等の競争機能、共通の物差し、つまり市場が欠けているからである。健全な市場を育成してはじめて機会、平等、競争の三者を結び付けることができる。しかしこれこそ最も長い文明をもつ私達民族が最も知らなかったものなのである。

第5回 憂い (原題:憂患)

旧王朝が崩壊し新王朝が直ちに取って代わるや、社会構造は原状を回復し、次なる崩壊へと向かって進み続けるのである。それは黄河の大堤防が決壊すれば人間が修復し、また次の決壊を待つようなものである。私達はなぜこんな堂々巡りを続ける運命に陥っているのだろうか。
・・・
喜ぶべきことは、経済体制改革が歩み始めたのに続き、政治体制の改革の試みも始められたことである。いまや全国人民代表大会で勇敢にも手を挙げ、反対の一票を投じるものが表れた。それはなんと困難なことであったであろうか。
・・・
この改革がいかなる抵抗や危険に直面しようと、私達はひたすら前進を続けるのみである。

第6回 紺碧 (原題:蔚藍色)

一九一九年の「五四運動」は初めて徹底的非妥協の精神をもって「科学」と「民主」の旗印を掲げた。
・・・しかしこの文化的激流も政治、経済、また人格上の封建主義の残滓を洗い流すことはできなかった。
・・・
中国では多くの事柄をすべて「五四運動」から改めて始めなければならない。

最終回の“紺碧”とは“黄”の対極を意味する。

第1回にある通り、“黄”とは、「黄河の河道に溜まる泥砂のよう」な「旧文明の残滓」であり、それは閉鎖的で内陸の農業生産にのみ依拠し、科学や知識を軽視した文明・文化の象徴である。

これに対して、“紺碧”とは、黄河に対する海であり、開放的で科学と市場経済に基づく文明・文化を意味する。

しかしながら、第2回で言う通り、中国人はこのような「海の呼び掛け」に応えてこなかった、と指摘している。

そして、「海の呼び掛け」に応えるためには、徹底的非妥協の精神をもって「科学」と「民主」の旗印を掲げた「五四運動」に立ち返らなければならないと結論付けているのである。

引き続き、他の資料も含めて内容を確認していきたい。


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