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ジーパンもチノパンも同じ“綿パン”なのに、カジュアルでは…。(#5)

先頃フランスサッカー1部リーグ“リーグ1”第3節、パリ・サンジェルマン対オリンピックマルセイユ戦にてパリ・サンジェルマン所属のネイマール選手の日本の酒井宏樹選手に対する、試合中の差別的発言が物議を醸している。
どうやら「Chino de mierda(くそ、中国人)」のような発言だったらしい。
その言動に対し、SNS上などで怒っているのは欧州であったり、あるいは中国だったりする。
日本での扱いは大きくない。また言われた酒井選手も非難するコメントは出していない。
以前東日本大震災直後のベルギーリーグで川島選手が観客の福島原発事故を揶揄する発言に審判へ猛抗議したときとは対照的である。

何故だろう、それはきっと怒れば誰かに対して失礼になるからだと思う。

今年初旬まだCOVID-19が限定的な感染だったころ、東アジア以外へ渡航した際、よく日本人は”Chinese"あるいは”Cnino"と呼ばれたそうだ。

もしこの“Chino”に“Niger”や“Indian”のような地名由来の差別的意味が含まれているのなら、“チノパン”も名称を余儀なくされるのかもしれない。何故なら上記“Niger”や“Indian”も侵略戦争時代由来の言葉だからだ。

チノパンの"チノ”は“Chino”である。チノクロースと呼ばれる綿生地を使い、19世紀英仏軍陸軍の制服として採用されたパンツに由来する。
諸説あるがこのチノクロースは中国人農夫の履いたパンツをヒントに生地を土色に染めたともいわれている。
(当時陸軍制服は白だったが汚れ、逆に目立ってしまい難儀していた)

いまやファッションアイテムの定番であるこの「チノパン」も、
立場からしたら蔑称ともいえるかもしれない。

ところで日本社会もカジュアル化になって久しい。そして何故かチノパンはこのカジュアル化と相性がいい。
対してジーンズ(デニム生地)は未だに「だらしない」という感覚が根深く、軽装OKでもジーンズNGと謳う企業もまだ見受けられる。
ジーンズは元々アメリカでゴールドラッシュの際、リーバイス社が提供した鉱夫のための作業着だったのである。

つまり、ともに由来は”汚れていい格好”なのだ。なのに何故か日本のカジュアル感覚となるとずれるらしい。
綿パンOK,ただしジーンズNG...もうこうなれば意味不明。これも”日本の謎ルール”といえば正鵠を得ているが、根底には戦後の劣等感・嫌悪感の象徴として留まっているのかもしれない。
ジーンズが大量流入したのはGHQの影響だからだ。
ファッションアイテムとして成長した部分が一人歩きし、未だにこうした形で姿を潜めている。だから差別意識がなくとも文化に溶け込んだりして、根深くなるのだろう。

もし由来が制服かそうでないか、だとしたらそれも相手が傷つかないレベルで誰かを差別なような気がする。
コードの決まっているもの(たとえばタキシードやモーニンングなど)以外、すべてカジュアル。そうでないと大変ややこしい。
問題を潜めているのは単に言動だけでなく、こうした気にも留めないような規則の中にこそあるのかもしれない。

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ファッションアイテムと由来
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