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アツギ “ラブタイツ”炎上騒動におけるエロスの攻防。(#16)

ラブタイツPRのTwitter“炎上”

11月2日はタイツの日だったようです。
この日、国内大手ストッキングメーカーのアツギ株式会社は自社ブランド“ラブタイツ”のPRをTwitter上で展開しました。
その中で“炎上”したことが話題になっております。
炎上理由は少々艶めかしいアニメーションとそれを説明する言葉にあり、一部では「性的消費」と表現し、強い嫌悪感を示す意見も寄せられたそうです。

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なるほど、際どい。
またアニメーションだから余計にファンタジー感が出て、性的色合いが強調されたのかもしれませんね。
違った視点で考えてみましょう。
たとえば女性の口元を引き立てるグロス、やはり色っぽく映ります。
綺麗にみせるとは相手を“魅了する”ことでもあります。
だから個人の性的・肉体的魅力を最大限に表現する手段ともいえます。
勿論、その相手が自分自身なら自己満足となりますが、男性における彫刻のような筋骨隆々な肉体美、女性における曲線美など性的魅力と切り離すことはできないでしょう。
しかし女性を消費するのが男性限定という考え方は些か古風な考え方かもしれません。
人間に目がある限り、女性も女性を消費できます。そう考えると消費という表現は主観的な面も否定できません。
ただ企業のPR戦略としては別問題ですが、前提として気に入らなければ買わないという選択をすればいいだけのような気がします。

ピンヒールの起源

少し、ヨーロッパのタイツのポスターを幾つか調べてみました。


女性自身の嗜好も異なるのかもしれませんが、性的魅力の高い女性=強い女性という感じがする印象を受けました。
加えて、パーツモデルにせよ全身モデルにせよ、大概がピンヒールを履いています。
何故でしょうか。
ピンヒールとは女性を不自由にするための一つのアイテムであり、また女性が性的オーガズムを感じた際の足を想像させるからという説もあります。
つまり“男性の所有物として、男性にそんな性的連想を抱かせる装置”としての起源があります。
少し脱線しますが、この流れで欧州社会でレディーファーストという習慣が生まれました。
全然レディー・ファーストではありませんね。
しかし、そうした時代を乗り越え、女性の性的魅力を高めること=格好いいという価値観が生まれた面は否定できません。
いわゆる男性を”虜にする”であり、男性を”凌駕する”という感じでしょうか。
一時代前の、マドンナやシャロン・ストーンのような感じでしょうか。

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女性が完全に解放されたともいえないかもしれませんが、ある役割があり、そこから解放していく過程で、女性自身の魅力が披露されてきた歴史があります。
そして、ピンヒールは女性が男性と対比するための格好のアイテムとなったのです。
ナイロンストッキングはそんな魅力的な脚(foodからlegまでを含む)を惹き立てさらに艶やかで麗しくするでしょう。
“脚フェチ”という言葉は市民権を得ているのに、その脚が纏うアイテムがアニメーションによって性的に強調されることで嫌悪感を示すはどこか不釣り合いな何かがあるからです。
ですが性的魅力を取り除いたとしたら、それはそれで欺瞞でもあります。
エロスとはジグムンド・フロイトでいうところの「性の情動」であり、平たく言えばその人の気力そのものです。
実際炎上していることからもそんな“性的魅力”に関心があるのは明らかです。

Miss Ko2 was knocked down for $567,500

ところで現代芸術家・村上隆さんの≪Miss Ko2≫という作品をを御存じでしょうか。
等身大フィギュアをベースとした彼の代表作でもあります。

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際どいスカート丈とアニメーションによる強調的な曲線美。
この写真を見てどのように感じるでしょうか?
Fワードのようなスラングにもあるように性的要素が絡むと下品さと結び付きやすいのは万国共通です。
しかしこの作品はサザビーリーグのオークションで$567,500(およそ6,000万円)で落札されました。
芸術という名においても時々、経済や性的要素を切り離した純粋無垢なものを愛好する人を見掛けます。
それが決して悪いわけではないですが、金持ちが何の価値も見い出せずそんなアイテムを購入したと断罪していいでしょうか?
今回の炎上、それに関わった企業サイドが炎上したからといって謝罪するのにはこれまた違和感があります。
仮に企業がPR戦略ミスで売上が減ったとして、誰に向かって謝っているのでしょうか。
それは最終的に株主総会ですればいい気がします。
繰り返しになりますが、成果は市場が判断し、悪ければ他社へ需要が奪われる、ただそれだけの話です。


素肌にスーツ

最後にフィンランドのサンナ・マリン首相が素肌でスーツを着て雑誌に現れたことに反響があったというニュースを取り上げます。
胸の谷間がうっすら見え、「下品だ」とか「安っぽい」だとかの意見があったそうです。

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決して実用的な着こなしではありませんが、特に欧州のファッションフォトとして素肌にスーツは一般化しつつあるようです。
マリン首相への批判は首相という立場からですが、彼女への支持者は「性別ではなく仕事の成果で評価されるべきだ」といいます。
フォトをみてどう思うかは無論、各々違って当然です。

結局、いつでも良くないのは誰かにそれを強いることです。
性的消費が悪いのではなく、それを悪いと強いることではないでしょうか。
逆に純粋な性的衝動とは何でしょうか。
多少なりとも性的消費がなければ、ほとんどの人はきっとこの世に存在していなかったでしょう。
このアツギの“ラブタイツ”についても売行こそが静かに全てを物語るような気がします。
それをゆっくり見届けることにしたいです。


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