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実践!認知症ケア(1)

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現場での実践に使える認知症ケアの基本的な考え方からBPSDへの対応についてまとめています。
認知症ケアで重要な内容が、単元別に見られるのはマガジンならでは!そして価格は驚きの500円です(*… もっと詳しく
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記事一覧

認知症のケアプランについて

認知症のケアプランについて

ケアの流れはAPDCサイクルケアの流れは、APDCサイクルです。
Aはアセスメント、Pはプラン(計画)、Dは実行、Cはチェック(再評価)で、この流れに沿って行われます。

アセスメントは、「評価と分析」で各種の評価・調査を実施し、それをさまざまな視点から相互的、複合的、総合的に分析し、本人のニーズを把握する過程です。

プラン(計画)は、目標とケアの実行内容からなり、目標はさらに長期目標と短期目標

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BPSD発生機序の仮説の立て方について

BPSD発生機序の仮説の立て方について

BPSDの規則性・特徴をチェック

BPSDの詳細を把握し、それらと本人の状態や日ごろのケアの状況を総合的に分析する中で、BPSDの発生機序を推測します。

まず、BPSDの発生状況に規則性や特徴がないかチェックします。
「いつ発生するか」「どこで発生するか」「誰がいると発生するか」「何があると発生するか」「BPSDの発生間隔はどうか」などをチェックします。

例1:脱水による発生<PACEPのP

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BPSDのアセスメントについて

BPSDのアセスメントについて

「尊厳を守る」とは、具体的にはどのようなことなのか

BPSDをケアの対象とする際に、その現象はBPSDすなわち認知症に起因するのか、人としての正常な反応なのかをチェックします。

そしてBPSDという判断がなされたら、次にその現象を本当に解決する必要があるのか、必要性があるとすればどのような方向が望ましいのかを、本人の立場に立って再度チェックします。

これは、過去の介護現場で「BPSDを解決す

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BPSDの原因【活動面・コミュニケーション・環境面・心理面】

BPSDの原因【活動面・コミュニケーション・環境面・心理面】

睡眠障害、運動量不足、外出不足、退屈、活動強制、活動剥奪などがありますActivities(活動)のうち、BPSDの原因になる割合が多い因子に「睡眠障害」があります。
睡眠は、万人が共通して毎日行う重要な活動で、この活動が阻害されたとき、心身にさまざまな変調を来します。

この変調が引き金となって、BPSDを発生させることがあります。

同時に、睡眠障害を改善する目的で行われる薬物の服薬も、昼間の

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BPSDについて身体状況で問題となる因子について

BPSDについて身体状況で問題となる因子について

身体面では便秘・脱水・痛み・かゆみ・低血圧・低血糖薬などが原因身体状況のうち、BPSDの原因となる因子に「便秘」があります。
一般的に高齢者は便秘になりやすく、認知症高齢者の場合も例外ではありません。

認知症高齢者では、便意をもよおしてもそれが「便意」と認識されず、不快な感覚となってBPSDを誘発します。

この他に高い割合でBPSDの原因となる因子に「脱水」があります。
認知症高齢者では飲水量

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BPSD対応にも限界はある

BPSD対応にも限界はある

BPSD対応の限界についてBPSDが発生した場合、特にそのとき職員数が少ないなどのマンパワー不足の状況下では、本人の尊厳が侵される危険性が高まります。

一人ひとりの尊厳を守る視点も大切ですが、事業所・部署総体としての安全性・ケアの質を守る視点も忘れないようにしましょう。

BPSD発生時などの尊厳が侵されやすいときこそ、ケアの基本的考え方を心に思い浮かべながらケアの提供をする必要があります。

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BPSDの対応の考え方 対症ケアと根治ケア

BPSDの対応の考え方 対症ケアと根治ケア

医療には、とりあえず症状を抑える「対症療法」と、症状の原因を治療する「根治治療」があります。

例えば、感染症で熱が出ているときに「とりあえず熱を下げるために解熱剤を服用する」のが「対症療法」で、「発熱の原因となっている感染症そのものを治療する」のが「根治治療」です。

同様に、ケアにもとりあえず目の前の状況を回避したり、解消するために行われる「対症ケア」と、その状況が発生する原因そのものに対して

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BPSDの基本的障害と発生機序

BPSDの基本的障害と発生機序

BPSDは高次脳機能障害を基盤とするところへ何らかの要因がきっかけとなり発生する

BPSDは、記憶障害と注意障害などの高次脳機能障害を基盤とするところに、何らかの因子がきっかけとなって二次的に発生する症状です。

記憶障害や注意障害そのものから直接発生するのではなく、そのときの身体状況やコミュニケーション、環境、活動、心理状況などによって惹起・助長されるものです。

従って、介護職はBPSDに対

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BPSDへの対応の基本的考え方

BPSDへの対応の基本的考え方

BPSDなのか、人としての正常な反応なのかをチェックする。
BPSDを改善することが本人にとって良いことなのかチェックする。

以下のケースについて考えてみましょう!

独居生活をしていたAさんは大腿骨頸部骨折で老健に入所しました。
老健ではほぼ全介助でしたが、グループホームに転居後、スタッフのケアとトレーニングにより、ほぼ以前の機能レベルまで回復しました。
認知症は軽度、本人は改善したことを自覚

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BPSDとは何か

BPSDとは何か

問題行動から行動障害へ、そしてBPSDへ

BPSDとは、「認知症の行動と心理症状」を意味し、妄想・幻覚・徘徊・焦燥などさまざまな症状があり、これらの症状は今まで「問題行動」「行動障害」と呼ばれていました。

しかし、「問題」と考えるのは介護側からの一方的な見方で、「障害」されているのは行動ではなく、認知面であり、認知面の障害に起因する正当な行動(例えば、トイレの場所が分からず、我慢できなくなって

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BPSDの対応

BPSDの対応

今回のnoteから、実践!認知症ケアマガジン(1)第3章ということで、BPSDの対応編に入ります。

本章では、BPSD(認知症の行動と心理症状)について、発生機序や原因推測の方法について学びます。紹介していく具体的な項目について、このnoteで紹介しますので、ご確認頂ければ幸いです。

1.BPSDとは何か1BPSDという言葉を知り、なぜ「問題行動」「行動障害」という言葉が使われなくなったかを考

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遂行機能障害への対応『簡素化・部分化』

遂行機能障害への対応『簡素化・部分化』

プログラミング・遂行力があまり必要とされない工夫

認知症の方は、一つひとつの動作の手続き記憶が残っても、それらの動作を連続して構成・計画する能力が低下することが多いので、一連の行為を簡素化・部分化するなど、構成・計画の能力があまり要求されない形にすることが重要です。

言うまでもないことだとは思いますが、本人の残存機能をきちんと把握して、過剰な簡素化にならないようにすることが大切です。

この機

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手続き記憶を引き出す!

手続き記憶を引き出す!

体で覚えたこと(手続き記憶)は衰えにくい手続き記憶とは長期記憶の一種で、時間をかけて学習したこと(自転車の練習、楽器の練習など)でいわゆる「体で覚えた記憶」のことです。

「手続き記憶」は認知症の方に残りやすい機能の一つです。

この機能を引き出し、活かす介助が大切です。

ヒント!
スタッフ同士で、回想法を視点とした会話を実施してみましょう。
この際、記憶、感情、感覚、人生の振り返りなどの要素を

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認識しやすい環境設定 Part.2

認識しやすい環境設定 Part.2

認識しやすい環境設定のラストパートになります。
今回は下記の環境設定について詳しく解説します!!

・地と図の関係にも気を配る
・「何か」を理解しやすい環境設定
・環境をケアに生かす

認識しやすい「地」と「図」高齢者は、色の識別能力が低下するとともに、「地(背景・バック)」と「図(対象物・主体)」の判別能力も低下してくるので、対象物に似た模様などがあると認識することが困難になります。

このよう

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