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#44 スポンサーの話

例年より1か月ほど遅れて、4月1日にXリーグ春季公式戦の日程が発表された。2年連続でパールボウルは中止で東日本は各チーム2試合の対抗戦方式、西日本は例年通りのグリーンボウルトーナメントとグリーンボウルチャレンジが開催される。
感染症対策を見極めていたとの理由でかなり待たされたが、とりあえず昨年は春季公式戦自体がなかったことからは一歩前進したといえる。パールボウルは例年ゴールデンウィークあたりに開幕するが、今年の東日本の開幕は半月以上遅くなる。

さて、同じ日にリーグからあと2つプレス発表があった。いずれもチーム名の変更で、富士ゼロックスミネルヴァAFCが「富士フイルムミネルヴァAFC」に、LIXILディアーズが「ディアーズフットボールクラブ」にそれぞれ変更するというものだ。
前者はメインスポンサーの社名変更によるもので、この類のチーム名変更は社会人野球でもよく見られる(新日鐵→日鉄住金→日本製鐵とか、鉄道管理局→JRとか)。
一方で後者はかなり国内フットボール界に大きなインパクトを与えそうだ。ディアーズは鹿島建設の実業団チームとして発足して、その後リクシルの援助を受けてスムーズにクラブチームへ移行したが、契約期間の満了をもってリクシルの看板を下ろすことになった。鹿島時代に2回の日本一を経験している名門がクラブ化ということも大きな衝撃だが、そこにビッグスポンサーがつかないということもなかなかの衝撃だ。

現在X1リーグの20チーム中実業団登録しているのは富士通、パナソニック、警視庁の3チームだけだ。あとは全てクラブチーム登録なので、Xリーグに所属する選手の大半は、フットボールと関係のない職業を別に持ち、いわば余暇の時間をフットボールに費やしていることになる(余暇でやるスポーツとしてフットボールはあまりにハードだが)。チームの運営費用も様々だが、カテゴリーが上がれば自然と選手の数も増えるので、どうしても予算の規模は大きくなる。
景気が良ければ多少出費が嵩んでも目をつぶってもらえるが、そうでなければ見る目はシビアになる。特に昨年来の不景気に加えてディアーズは2018年のワイルドカードプレーオフで一発勝負に泣きX1 SUPER入りを逃した。2019年は入れ替え戦に出られず2020年は昇格降格が見送られ、いよいよスポンサーもこれまで通りの支援をすることに難色を示したのだろうか。
残念ながらX1 SUPERとX1 AREAの露出の差は大きい。あえて差をつけてカテゴライズしたのだから当然だが。そうなると、ディアーズ以外にも不安を募らせるチームが次々と出てきそうだ。

スポンサーの名前をつけずチームの愛称だけで活動した例は多いが、その中での成功例はシーガルズだろう。リクルートの実業団チームで発足したが、会社がチーム運営から手を引くことになり1シーズンだけ「シーガルズ」で活動したがそのシーズンでリーグ優勝し、翌シーズンに現在まで続くメインスポンサーのオービックの支援を取り付けた。
一方でチームの移行がスムーズにならなかった例として、現在のノジマ相模原ライズがある。いったんオンワードオークス廃部の扱いとなったため有志のクラブチームは新規加入と見なされ、X3からのスタートを余儀なくされた。最短コースでX1に復帰できたからいいものの、途中で資金ショートなどしようものなら昇格もスムーズでなかった可能性がある。
そういう点では、名門ディアーズが再びスポンサーを味方につけるためには、現有戦力が徐々に目減りする前に結果を残すことが絶対的に必要といえる。とはいえ2019年シーズンの主力が昨年他チームに移籍しているケースが目立っており、今シーズンは踏みとどまるための分岐点になりそうな気配だ。

社会人野球も一時クラブチームブームといえる時期があったが、結局スポンサーをうまく見つけられたチームは露出を強めていくし、そうでないチームは活動が限定的になってしまうことで二極化が進んでいった。
今後アメリカンフットボール界もそのようになることはおそらく必定であろう。その意味でも春季、秋季問わず試合の機会を増やして欲しいのだが、春季が縮小モードで開かれるというのは残念と言うしかない。

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