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慶大生が教える 小論文の書き方 No.2 自分の意見をうまく伝えるには


はじめに

No.1を読んでいただいた皆さん、ありがとうございました。反応も頂けて嬉しく思っています。No.2もよろしくお願いします。
さて、No.1では、大まかに分けて3つのことを強調したつもりです。

  • 「受験科目」の中での小論文の位置付け

  • 「大学受験」の中での小論文の位置付け

  • 受験勉強・対策の中での小論文の位置付け

内容を忘れてしまったという方はもう一度No.1に戻ってみてください。皆さんの少ない時間を有効に使うため、No.2以降でも分かりやすい説明を心がけます。

今回のめあて - 論文とは

見出しのタイトルにもしましたが、No.2では、「論文」とは何であるかを説明しようと思います。というのも、名前からして自明ですが「『小』論文」は、感想文ではなく論文でなければならないからです。
論文には、ある程度決まったフォーマットがありますので、それを守った方が良いということになりますし、そもそも読みやすい型だからこそフォーマット化しているということになります。あまりにも特殊な問題であったり設問上要求があったりする場合など余程のことがない限りは、我流の書き方に固執するのはやめて標準的な書き方に則った方法に従う方がベターです。
次章からは、小論文とは別に、論文とはどのようなものかをごく簡単に説明します。小論文とは、それのミニチュア版だと思ってくだされば簡単にイメージできると思います。

論文の構成

No.1では、大学教員、彼らの多くは研究者ですが、彼らが普段していることのうち最も比率的に高いものは研究であること、その研究の中で最も重要な位置を占めているのが論文や本を読み書きすることだと説明しました。実験や調査は研究というひとつの企画のうちの一部分です。
ここでは、わかりやすく論文をバライティ番組に例えてみましょう。日本テレビ系列の「世界の果てまでイッテQ!」を題材に考えてみます。司会者の内村さんのタイトルコールとともに始まり、出演者や企画がまず紹介されますよね。出演者の紹介や簡単なコメント、あるいは企画の説明などは、その番組の前提となる情報ですから、これは絶対に構成の中に入ってきます。論文では、「はじめに」や「序章」、あるいは「研究手法」の章立てにこれらの内容が入ります。その前後で、「本日のイッテQは、『みやぞん〇〇へ行く』、『ロッチ中岡××を初体験』の2本立て〜」などとプログラムが説明されます。これらは、目次が担っている役割です。どこに何が書いてあるのかを説明しています。その後、『みやぞん〇〇へ行く』が始まるとして、その場所の概要や特徴、あるいは以前の似たような企画が説明されます。これが先行研究の検討にあたります。類似したプロジェクトのレビューですね。そして、実際のロケで企画を実行します。この部分が、研究の内の実験やインタビューなどに該当します。その後、同じような流れが『ロッチ中岡××を初体験』でも繰り返され、番組の終盤ではまとめが放送されます。まとめは、論文では「結論」や「まとめ」などの章立てが担うことが多いです。
このように、論文はテレビ番組のように様々な部分から構成され、各パートには固有の役割があることが分かりましたでしょうか。つまり、論文には守るべきフォーマットがあるということになります。このフォーマットを守ってこそ、相手に自分の意見を伝えることができ、異なる意見を持っている相手であっても説得を試みることが可能になるのです。

小論文の構成① 論文と小論文の違い

上では、一般的なフルサイズの論文の章立てを簡単に紹介しました。あくまで今回のnote用の簡潔な説明ですので、皆さんが実際に大学に進学された後読むことになる論文や、卒業論文として書かれるものの章立てにはもう少し細かなルールや枠組みがあることはご承知おきください。
さて、小論文を書く環境、すなわち試験時間中と普通の論文を書く環境は異なります。試験時間中はカンニングペーパーや参考書を読むことはできず、小論文の時間においてはリード文と自分のアタマだけを頼りに答案を書くことになります。また、一般的な論文とは異なり、一万字単位で書くことができませんので、いくつかの事柄についてはカットする必要があり、答案をスリムかつ筋の通ったものにしなくてはなりません。このシリーズで具体的な入試問題の解説をする場合は、適宜答案に盛り込む必要がある箇所とそうでない箇所について言及するつもりです。


小論文の構成② 結論をどこに書くか

では、前章を踏まえて小論文の答案の理想的な流れを説明します。何よりも意識すべきことは、結論ファーストで書くことです。
一般に自分の考えを伝えるときは、結論を最初に持ってくるか、最後に持ってくるかのパターンが多いと思います。話の途中で急に結論が出てきたら論理が飛躍していて相手を納得させるのは難しいですよね。ですので、「〇〇である。理由は〜〜だからである。また、××という観点も意識する必要がある。」のように最初に結論を書くか、「〇〇という背景があり、△△という理由があることから◻︎◻︎といえる。したがって……である。」のように結論を最後に書くかの2パターンが考えられることは納得いただけると思います。これらのうち、なぜ結論ファーストで書いた方がいいのかは、様々な理由があります。

  1. 小論文は試験科目という性質上書く時間・字数が限られているので、なるべくコンパクトに仕上げるために、先に結論を書いて後から理由を書いた方が答案をまとめる上で楽です。

  2. 文としての冗長さを軽減することができます。

  3. 答案として、何が言いたいのかが曖昧にならず採点官に良い印象を与えることができます。

  4. 答案は会話ではないので、はっきりとした口調で問で要求されていることを書くことが重要です。感情的な要素を排した文章を書くことを心がけるべきで、結論を最後に書いた場合、どっちつかずの立場であるかのような印象を与える可能性があります。

これらは代表的な理由であり、他にも理由はあります。ですが、これを読んでくださっている皆さんは先に結論を書くことの重要性に納得いただけたと思います。

小論文の構成③ 結論を支える理由の書き方

結論を最初に書くとして、理由はどのように書けば良いのでしょうか。
もちろん、結論の直後に書くのが望ましいです。ただし、理由がいくつかある場合は、先にそれも書いておくと良いでしょう。つまり、以下のような答え方になります。
「〇〇という筆者の主張には賛成である。大きく分けて理由は2つある。まず、△△という点で××と言えるからである。また、◻︎◻︎については▽▽でああるからである。」
もちろん、上のテンプレートは「筆者の主張に賛成か反対か?理由も記せ」という問題にのみ使えるものです(このような問題は典型的な問題ですので、実際に出題される可能性は極めて高いですし、小論文の問題として最も基礎的なものなので練習しておいて絶対に損はありません)。ただし、結論とそれを支える理由の書き方には通底した型があり、それに則るのが一番良いと何度もお伝えしていますし、実際に過去問演習や模試、あるいは実際の入試においてはそのように書かれるのが良いと思います。

小論文の構成④ 論文中の役割と小論文中の役割

論文の中にはさまざまな章立てがあって役割があるということは先にお伝えしたとおりです。では、小論文の場合の役割はどうなのでしょうか。結論と理由の書き方についてはすでに説明しました。
小論文は字数の制約があることがほとんどですから、論文中の「はじめに」や「おわりに」などに現れる、儀礼的になされる前提知識の説明や関連問題の紹介などは不要です。また、設問やリード文で示されている前提情報は答案の中で何度も書く必要はありません。ただし、リード文中の具体例に言及するものは、どの例であるのかがわかる程度に「〇〇の例」などと書けば良いです。例えば、日本と外国を比較している場合は「日本の例」「アメリカの例」などで良いです。つまり、どの例か特定できる程度に簡潔に示すことが重要です。
一般論文は、世の中に無数に出回っている学術論文のいくつかを先行研究として参考にして、多くの場合それを自分の議論を進める前に紹介し、時には賞賛し、時には批判します。小論文では、与えられた情報が先行研究としての役割も担うことになりますので、自分の意見を書く設問ではそれらを再び自分の言葉で書き直す必要はありません。「筆者の主張によると」や「筆者は〇〇としているが」などの句を使いつつ自分の意見に絡めていきましょう。逆に言えば、小論文の入試問題においてリード文が示された後に「(1)筆者の主張を要約せよ」「(2)筆者の意見に賛成か反対かを示した上で理由を述べよ」という設問パターンが多い理由も納得できると思います。研究を遂行するにあたり、欠かせない必要な能力である「先行研究を正しく読み取る力」が小論文の要約問題では問われていると言えるのです。

長々と書いてしまいましたが、自分の意見を述べる回答では、以下のような書き方をするのが理想的だということを強調しました。

  1. 結論

  2. 理由の数(1つの場合は飛ばして良い)

  3. 根拠(一般的に言われていることや常識※、リード文中の筆者の主張をうまく使いつつ論理的に説明する)(理由が複数ある場合はこれを繰り返す)

もしも自分の書き方が身についてしまっている場合、特に結論を最後に書く場合は、なるべく結論ファースト型に直す練習をすることをお勧めします。まだ小論文そのものをあまり書いたことがないという場合は、なるべくこのフォーマットに則った書き方で練習をしてみましょう。
※常識というのは人によって違うと思います。基本的に学校教育で扱う内容、すなわち教科書に書いてある内容は書いても良いですが、書いてはNGなものもあります。それらについては次回以降書いていこうと思います。

おわりに

No.1では小論文とは何かというお話をし、今回はそれを引き継ぎながらどのような書き方をすれば良いのかというモデルを紹介しました。このnoteは結論ファーストではないだろう!というツッコミもあると思います。まさにその通りなのですが、分かりやすく小論文の書き方を紹介することがコンセプトですので、そこはご容赦ください!
このフォーマットは小論文だけでなく、自由英作文や入試以外のビジネスの場面でも使うことができると思います。もちろん、大学に入った後にも細かな課題などで使う機会がたくさんあると思います。数百字〜千字程度の作文をすることが多いですからね。
もし内容が良ければ、何らかのリアクションをしていただけると励み・続きを書くモチベーションになりますのでよろしくお願いいたします!
次回は、リード文の読み方を扱おうと思います!

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