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慶大生が教える 小論文の書き方 No.3 リード文を正しく読み取ろう

はじめに

No.2までを読んでくださった皆さん、ありがとうございます。前回の投稿から時間が空いてしまい申し訳ありません。
さて、No.2のテーマは論文の構成と自分の意見を書くときのおおまかな書き方の指針でした。
最も注意すべきことは結論の書き方でしたね。まだ定着が不安だという方はNo.2を見直してみてください。論理的に自分の意見を文章で伝えることができるようにヒントを示したつもりです。
さて、今回はリード文の読み方についてです。読解力がキーワードですので、普段読書をしている量であったり持ち合わせている語彙の豊富さによって皆さんの理解量に差が出ると思います。極力ここでは丁寧な解説を心がけますが、もし自分の読解力に不安があるという方は、共通テストやその前身であるセンター試験の現代文の論説文を説いてみると良いと思います。80%以上(漢字問題を除く)正解できれば、殆どの小論文のリード文を問題なく読むことができると思います。
今回は読み方を扱いますが、次回(No.4)は要約問題の解き方、ヒントを扱います(というより流れ的に必然ですね)。

小論文の出題形式

小論文の出題形式には大きく分けて4パターンあります(もちろん、例外もたくさんありますのでご承知おきください)。

  1. 「〇〇について論ぜよ」とだけ記され、受験生の知識を問いつつ0から答案作成能力を試す問題

  2. 本や論文の一部が掲げられ、「以下の文章を読んで設問に答えよ」という問題とともに、リード文の要約と自分の意見を書かせる問題

  3. 統計資料やデータなど、無数の情報が与えられ、それらを適切に抽出した上で意見や情報同士の関連を書かせる問題

  4. ケース・スタディ的に状況設定がなされ、受験生ならどう行動するか、どう思うかを書かせる問題

これらのうち、2つ目のパターンが近年の小論文では最もオーソドックスな出題方法といえます。このパターンが最もオーソドックスですので、まずはこの手の問題を解いてみるのがやはり良いということになります。これは以前ご紹介した通りです。
1つ目のパターンは、戦前の大学入試などを見てみると殆どこのパターンなのですが、現在は大学院入試によくあるパターンであるといえます。受験生には非常に高度な知識を要求するだけでなく、制限時間内に論文として読み応えのあるものに仕上げることが要求されます。学部の入試(いわゆる大学入試)では、この手の問題は難しすぎる上に、大学受験が制度的に完成し過ぎているためになかなか出題するのが難しくなっています。というのも、宅浪などの例外を除いて殆ど全ての大学受験生は塾や予備校に通い、純粋な学問ではなく受験科目としての「数学」や「社会」を学びます。また、激化する受験戦争の影響で明確な採点基準を設けて1点でも高く得点した生徒が有利となるシステムも必要です。国公立大学二次試験の問題には科目を問わずに論述させる問題が多いのも、元々は全てが小論文形式、それもこの1つ目のパターンの問題であった名残と言っても良いでしょう。大学入学後も、大学は就職予備校と化しており、本来高校卒業後に働かずに研究機関である大学に入り、その後研究者になるという『想定』が大きく裏切られている昨今、高校生が自分が大学に入って学びたいこと、すなわち研究したいと思っていることに高校時代から励んでいるということは稀だということを、大学はよく分かっています。高校時代からすでに自分が大学で学びたいと思っていることにコミットしている生徒は、AO入試など自己推薦で大学に入りにくるケースも考えられます。一般入試とAO入試の性格を分けるためにもこのような設問は消えつつあります。
3つ目のパターンは、学際研究・教育を主眼とする学部の小論文入試によくある出題方法です。結論から申し上げますと、この手の入試問題が一番対策するのが難しいです。分野横断的に幅広い知識がないと理解できない問題もありますし、図表の読み取りなどの「できそうでできないこと」が問われます。また、この手の問題は解説なども各予備校や各参考書でバラバラになっており、受験生にとっては混乱させられてしまう性質もあります。このパターンについては、シリーズの後半で必ず解き方、ポイントを解説するつもりです。簡単にいえば、この種の問題は制限時間中にミニ研究プロジェクトを遂行し、集まった(与えられた)資料や情報から適切な方法で重要なポイントを抽出して論理的に表現する能力が問われています
4つ目のパターンは、医療系や精神心理などの高度なリテラシーを要する領域を扱う学部に出題される傾向があるものです。倫理的に問題のある受験生を落とす役割も担っています。これらの学部では面接が課されることもありますが、その一次チェックのようなものも兼ねています。

リード文とは

出題形式はパターン化されているということを前章では述べました。また、リード文があるパターンが最もスタンダードなものであることは前章だけでなく以前の回でも強調してきた通りです。
リード文とは、小論文の設問の前提となる文章のことで、多くは本や論文の一部です。
では、上の2つ目のパターンに注目して、リード文の読み方についてポイントを挙げてみます。
まず、リード文の前、問題文をしっかりと読むようにしましょう。「以下の文章は、〇〇について書かれたものである」など、ごく簡単な説明や背景の共有が出題者によってなされている場合が多いです。この文章が意外とバカにならないことが結構あります。リード文を正しく理解するためにも、出題者から与えられた注意書きはしっかりと読みましょう。また、当たり前のことですが、設問をしっかりと読んでください。見直しの段階で、設問に対しての正しい回答になっているのかをチェックする作業も欠かせません。実は、この「設問に対して正しく回答する」ということがうまく出来ていない受験生がたくさんいます。書きはじめはそれっぽいことが書けているのですが、問題の本質から外れたところにどんどん脱線していき、最後には何を答えているのかまるで分からなくなっている、というパターンです。これを避けるためには、いきなり回答する前に自分の意見をまとめた図や箇条書きでの要点のまとめなどを作成し、綺麗に整理してから書くことをお勧めします

リード文を読み進める上で大切なこと

問題文や設問が重要だということがお分かりいただけたかと思います。では、リード文を読み進める上で必要なことは何でしょうか。
言うまでもなく、筆者の主張が何であるかを正確に掴み取ることです。ここで履き違えてしまうと、要約では点数が入らないばかりか自分の意見を論述するときに間違った情報を前提に進めてしまい、結果的に得点の低い答案になってしまいます。
では、筆者の主張をうまく汲み取るには何が必要なのでしょうか。まずは、文章にはアクセントがあることを把握してください。このnoteを含め、ある程度字数のある文章は、その中に重要なことを述べているときとそうでない時があります。「例えば」で始まる例は当然例示であり、話の本質ではありません。
上の段落を例にしてみましょう。
「では、筆者の主張をうまく汲み取るには何が必要なのでしょうか。まずは、文章にはアクセントがあることを把握してください。このnoteを含め、ある程度字数のある文章は、その中に重要なことを述べているときとそうでない時があります。「例えば」で始まる例は当然例示であり、話の本質ではありません。」
という文章のうち、アクセントがあるのはもちろん黒字で示した部分です。noteのようなメディアや、PowerPointに代表されるようなプレゼン資料などでは、重要な情報が赤字になっていたり太字になっていたりします。これらにおいては、重要な情報が可視化されていますが、小論文のリード文や現代文の本文では残念ながら多くの場合、そのような編集がされていません。ですので、読み手である受験生の皆さんがそれを見抜く必要があります
これは、読書をたくさんしてきた人なら分ります、などと雑に片付けてしまうことがなんとなくできそうな話ではあります。ただ、誰にでもコツが掴めるようにするのがこのnoteの趣旨ですので、小論文のリード文を読むにあたって必要なことと意識したことが良いことをここでは強調しておきます。以下の3点に特に目を配るようにしてください。

  • 筆者の主張が何か。また、それらの根拠や背景は何か

  • どのような論理で筆者がその主張をするに至ったのか

  • 筆者はなぜそれが優れていると考えて主張しているのか

これらを掴み取るためには、それに呼応するディスコースマーカーに着目しましょう。「なぜなら」、「簡単に言い換えると」、「必要なのは」など、文章を読み進めて登場するディスコースマーカーに適切に反応して必要な情報を集め、マークしておくと良いでしょう。それらをチャートのように簡単に図式化してしまい、本文の議論を整理するも良いですね。

おわりに

今回は、リード文について扱いました。何度も申し上げている通り、リード文を読んで議論を展開する方式は小論文では頻出になりますので、ぜひこのスキルを身につけて、自分の主張をうまく答案に落とし込めるようにしましょう。

今回もありがとうございました。また、このNo.3の後にお知らせのアナウンス記事を投稿します。そちらも併せてご参照いただけたら幸いです!

それでは、No.4でお会いしましょう!

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