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【今日はナンの日】左から読んでも右から読んでも同じNAAN

7月6日はナンの日です。7・6でナンの語呂合わせとなることから、数字の《6》が仮名文字Nン・ん》に当てた語呂合わせ表記は珍しいものとなっていて、明治時代における自称では《ン・ん》の字はMUム・む》の部に分類されていました。

ナンは中央アジアや南アジアにおけるフラットブレッド《🫓》の一種で、本来はイラン諸言語で“パン”全般の意を示しています。
ナンはブリトー《🌯》やタコス《🌮》のように肉類や野菜などの具を《🥙》のようにして挟んで食べたり、インド料理のチャパティはカレーと一緒に食べるフラットブレッドとなっています。

同じ7月6日にはサラダ記念日という昭和62年5月8日に河出書房新社から発売された俵万智さんによる詩集『サラダ記念日』から生まれた記念日があり、サラダを挟んで食べるナンの日も関連性があるようです。
サラダ記念日からの派生で記念日の日となっていて、7/6が“なん=何”と語呂合わせが可能な要素が含まれています。

ナンは同じ字が右から読んでも左から読んでも同じ言語が多く、奥が深いです。

ナンの漢字当て字は〈印度薄餅〉で、広東語では“ナン”の意の単語として使用されています。
ナンの漢字表記は〈麵餅 / 面饼 / 麺餅〉もあり、台湾華語に見られます。

逆から読んでも共通表記

キリル文字のサンセリフ体は左から見ても右から見ても同一の字形になっています。

NAN / nan】デンマーク、ニーノシュク、アイスランド、クルド、ザザキ、トルクメン、カラカルパク
NAAN / naan】英、フランス、ドイツ、イタリア、ポルトガル、オランダ、アフリカーンス、フィンランド、ハンガリー、エストニア、トルコ、アゼルバイジャン、マレー、インドネシア - 言語によって〈ナーン〉と長音で発音される発音と〈ナアン〉[na.an]と音節が区切られるものがある。
NA-AN / na-an】ベトナム
NĀN / nān】ヒンドスターニー - インドにおけるネット上で使用されるフィジー・ヒンディー語ラテン文字では英語と同じ綴りの〈NAAN / naan〉で、パーリ語ラテン文字では〈NĀNA / nāna〉。
NÁN / nán】チェコ
NON / non】ウズベク
NUN / nun】ジュフリー
ΝΑΑΝ / νααν】ギリシャ - アクセント付き表記は〈νάαν〉で、全文大文字表記にはアクセントが付加されない。
НАН / нан】カザフ、キルギス、セルビア、ボスニア、マケドニア
НААН / наан】ブルガリア、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、モンゴル、タタール、アゼルバイジャン、バシキール
НОН / нон】タジク、ウズベク
НУН / нун】タート、ヤグノーブ
ՆԱԱՆ / նաան】アルメニア
𐭭𐭠𐭭】中世ペルシア
𐭍𐭂𐭍】パルティア
नान】ヒンディー、ネパール、マラーティー、コンカニ
নান】ベンガル
ਨਾਨ】パンジャブ
𑐣𑐵𑐣】ネワール
નાન】グジャラート
𑂢𑂰𑂢】ビハール
𑒢𑒰𑒢】マイティリー
ନାନ】オリヤー - 本来の発音を示す綴りは〈ନାନ୍〉。
နာန】パーリ
นาน】タイ
ꪙꪱꪙ】タイダム
ⵏⴰⵏ】アマジグ

文字構成要素が変化しているもの

字母を分ければ逆でも読める表記になるものです。

נאן : נאנ】ヘブライ、ラディノ
נאַן : נאַנ】イディッシュ - 1930年代では一部地域で語末系字形が通常字形に一時期置き換えられていた。
نان : ن‌ا‌ن】アラビア、ペルシア、ダリー、パシュトー、ソラニー、ウルドゥー、西パンジャブ、シンド、ジャウィ、ウイグル - ペルシア語ではエザーフェという“~の”を示す綴り上で表記されないエ[e]音を示す形容詞があり、ウズベキスタンのナンは〈نان ازبکی〉[ナーネ・オズベキー]と読まれ、ダリー語などにもエザーフェが見られる。
ناان : ن‌ا‌ا‌ن】キルギス - パン全般ではなくナンの意を示す場合、ア段長音は原則的にアリフの連字اا》[aː アー]を使用した〈ناان〉[ナーン]で示す。
نأن : ن‌أ‌ن】ジャウィ - マレー語ラテン文字の〈AA〉がハムザ付きアリフ《أ》で示されている。
نگن : ن‌گ‌ن】バローチー - パン《🍞》全般の意。
نون : ن‌و‌ن】ペルシア - 口語表記。
ܢܐܢ : ܢ‌ܐ‌ܢ】アッシリア現代アラム
𐮌𐮂𐮌 : 𐮌‌𐮂‌𐮌】パルティア - 詩編パルティア文字表記。
난 : ㄴㅏㄴ】韓国

一部字母が変化したもの及び接尾語が付いたもの

インド系文字では母音記号や末子音記号が

I-NAAN / i-naan】ズールー - 名詞を示す接頭語〈i-〉が置かれる。
NAA / naa】ケチュア - 語末に《N》が無い借用語。
NAANO / naano】エスペラント - 名詞を示す接尾語〈-o〉が置かれる。但し、エスペラント語版ウィキペディアの見出しでは〈Naan〉と名詞を示す《O・o》が付加されていない例外表記となっている。
НЯНЬ / нянь】コミ、ウドムルト、ネネツ - ペルム祖語における語源がイラン諸語からの借用語( 参考: https://en.wiktionary.org/wiki/нянь )で、各言語の単語では軟音符《Ь・ь》[ʲ ィ]が付加されている。カタカナ表記では〈ニャニ〉と左から読んでも右から読んでも同一表記。
ნაანი / ᲜᲐᲐᲜᲘ / ႬႠႠႬႨ / ⴌⴀⴀⴌⴈ】ジョージア、メグレル、ラズ - 名詞を示す接尾語〈-ი / -Ი / -Ⴈ / -ⴈ〉が語根〈ნაან / ᲜᲐᲐᲜ / ႬႠႠႬ / ⴌⴀⴀⴌ〉の後に置かれるのがルール。
【ނާން】ディベヒ
नान् / 𑀦𑀸𑀦𑁆 / 𑌨𑌾𑌨𑍍】サンスクリット
𑖡𑖯𑖡𑖿】仏教梵
ନାନ୍】オリヤー
నాన్】テルグ
ನಾನ್】カンナダ
നാൻ】マラヤラム
නාන්】シンハラ
ၼၢၼ်း】シャン
ᨶᩣ᩠ᨶ】ラーンナー/カム・ムアン - NA》は末子音の場合は子音記号に変化。
𑄚𑄚𑄴】チャクマ -他のインド系文字と異なり、基本字NAA《𑄚》[naː ナー]は常に長母音を示す。
ນັນ】ラオ
ꦤꦲꦤ꧀】ジャワ - 語中のAは母音字A《》ではなくHA》で示される。
ᬦᬳᬦ᭄】バリ - 語中のAは母音字A《》ではなくHA》で示される。
ᮔᮃᮔ᮪】スンダ
ᨊᨕ】ブギス - 末子音のN[ン]は表記されない。
ᜈᜀᜈ᜔】タガログ/フィリピノ
ᜨᜠᜨ᜴】ハヌノオ
ᝈᝀ】ブヒッド - 末子音のN[ン]は表記されない。
ᝨᝠ】タグバヌワ - 末子音のN[ン]は表記されない。
ናን】アムハラ、ティグリニャ - ナ行はNA》[nɛ ネァ]を基字として、NU》[nu ヌ], NI》[ni ニ], NAA》[na ナ], NEE》[ne ネ], NE》[n ン], NO》[no ノ]で示す。
ⵏⵏ】トゥアレグ - 語中のア段は原則的に表記されない。YAN《ⵏ》は連字の場合は2番目の字が傾く。
ᓈᓐ】イヌイット - ナ行はイヌイット語現行正書法で使用されないNE》[na.i ナイ]を基字として、NI》[ni ニ], NO》[nu ヌ], NA》[na ナ]で示し、末子音は上付きNA《》[n ン]で示す。

ナ行が書き分けられるもの

ꯟꯥꯅ】マニプーリ - ナ行は通常NA》[na ナ]で示されるが、ヘブライ文字と同様、末子音の場合は専用字形であるナ・ロンサム》[n ン]で示される。
நான்】タミル - 母音を含むナ行は歯音のNA》[n̪], 語末は歯茎音NNNA》[ṉ]で書き分けられる。
ណាន】クメール - ブラーフミー文字NNA𑀡》に由来するAグループのNA》とブラーフミー文字NA𑀦》に由来するOグループのNO》とでナ行音の書き分けがなされ、末子音は《》で統一されている。
ナン】日本、アイヌ、沖縄 - カタカナのナ行音は《ナ, ニ, ヌ, ネ, ノ》/na, ni, nu, ne, no/ の5種類で、語末の撥音N》[ɴ]は配置によって発音が異なる。例えば〈ナンの〉[nan.no]/〈ナンが〉[naŋ.ŋa~naŋ.ɡa]/〈ナンも〉[nam.mo]/〈ナンに〉[naɲ.ɲi]など。
なん】日本 - ひらがなのナ行音は《な, に, ぬ, ね, の》/na, ni, nu, ne, no/ の5種類で、語末の撥音N》[ɴ]は配置によって発音が異なる。ひらがなによる外来語表記は児童書などで稀に見られる。
ꕯꕌꘋ】ヴァイ - ナ行音はNEE》[ne ネ], NI》[ni ニ], NA》[na ナ], NOO》[no ノ], NU》[nu ヌ], NO》[nɔ ノァ], NE》[nɛ ネァ]の7種類で、語末のンはNG》[ŋ ン]で示す。長音ナーは本来、長音記号《》[ː ー]を付加して〈ꕯꘌ〉[naː ナー]で示されるが、現行表記はNAとHAの連字〈ꕯꕌ〉で示される。
ᎾᏂ / ꮎꮒ】チェロキー - ナ行音はNAᎾ・ꮎ》[na ナ], NEᏁ・ꮑ》[ne ネ], NIᏂ・ꮒ》[ni ニ], NOᏃ・ꮓ》[no ノ], NUᏄ・ꮔ》[nu ヌ], NVᏅ・ꮕ》[nʌ̃ ナン], NAHᏀ・ꮐ》[naʔ ナッ]とHNAᎿ・ꮏ》[n̥a フナ]があり、借用語における語末NはNIᏂ・ꮒ》で示す。長音は表記されない。

語根ナンと分類を示す単語の合成語

日本語で直訳すれば〈ナンパン〉になる系統の単語です。

Naanbröd】スウェーデン
Nanbrød】ノルウェー - ブークモール表記。
Naan-leipä】フィンランド
Nāanmaize】ラトビア
နံပြား】ビルマ - ナンの語根は《နံ》で類別詞《ပြား》はピャーが濁音化した〈ビャー〉と読まれる。

その他の借用語

𐭫𐭧𐭬𐭠 / 𐡋𐡇𐡌𐡀‎】中世ペルシア - アラム語を中世ペルシア語で訓読する方式で、アラメオグラム表記では〈LHMA〉。
饢 / 馕 / Náng】中国 -ウイグル語由来。声符の《》/náng/[ナン]は“袋”の意で、食材を絵文字の《🥙》のようにフラットブレッドで包んで食べる会意形声文字のようになっている。声符《》は日本語漢字の略字では《》, 二簡字では《𰀉》となり、饢の二簡字《⿰饣𰀉》が一時期使用されていた。
饢 / ㄋㄤˊ】台湾華
饢 / Nong⁵】広東